“あやかし”を倒して強くなれ。安倍晴明の末孫・昌浩の成長記
『少年陰陽師 真紅の空を翔けあがれ』結城光流 イラスト/あさぎ桜
土方彩華さん(東京学芸大学附属高校1年)

陰陽師をご存じでしょうか。陰陽師の本では夢枕獏さんが書いているものがありますが、それは安倍晴明という平安時代にいたかもしれないといわれている希代の大陰陽師が主人公の話です。私が紹介する『少年陰陽師』は、その安倍晴明の末孫の安倍昌浩(あべのまさひろ)が主人公で、彼が14歳の時から始まって今は40巻以上出ていて、20歳を過ぎています。その安倍昌浩の成長を描いている物語です。
安倍昌浩には年の離れた兄弟が2人いますが、昌浩はこの時点ではまだ元服したばかり。安倍晴明もまだ生きていますが、安倍晴明のようになりたいと、陰陽師として精進しているところです。
40巻以上もある中で、私は9巻の『真紅の空を翔けあがれ』を選びました。昌浩が元服してすぐのこと、藤原家に“あやかし”が出たということを察知して駆けつけた時に、藤原の姫の彰子(あきこ)、多分、日本史でいうところの彰子(しょうし)と出会います。彰子は霊感があって、すごく“あやかし”に狙われやすい。昌浩は、彼女を助けていくうちにいろんな“あやかし”を倒したりして強くなっていきます。
あやかしを倒すには、呪文や呪符を使います。また、安倍晴明に使役している十二神将という神の末席に連なる12の神々がいますが、昌浩は安倍晴明の後継者と言われてはいますが、その十二神将は安倍晴明に仕えているので、昌浩になかなかなびこうとしません。けれども、その昌浩のことを唯一気に入っている凶将の騰蛇(とうだ)をはじめ、だんだんと絆を深めていき、十二神将たちと共に倒していきます。また、陰陽師というのは体術も得意とする人たちで、昌浩自身、この時点ではあまり強くありませんが、普通に体術のようなもので攻撃することもあります。
昌浩は、この前の巻で、一度命を落としかけています。大切な人を守るため、自分の命を差し出すことで神様にその人を助けてもらおうとしたのです。命を落としかけて戻ってきますが、昌浩が助けた人は、昌浩のことを忘れてしまいます。昌浩が自分で術をかけたことによって記憶を失わせたのですが、それでも忘れてしまったことで昌浩も大きく傷付きました。そして、その人との絆を取り戻していくのがこの巻です。
ところで、これは俗に言うライトノベルなので、挿絵があります。イラストを描いた人は、安倍昌浩だけではなく、安倍晴明が主人公のシリーズも書いています。昔の安倍晴明もわかるので、とても面白いです。キャラクターがとても個性的で、掛け合いなども面白くお勧めです。

土方彩華さん
ファンタジー系のストーリーや幽霊、妖怪が出てくる話が大好き。お気に入りの作家は、はやみねかおる、結城光流、香月日輪、神永学、有川浩など。