憲法って懐深い。日本国憲法を片手に学校での出来事も解決
『憲法が教えてくれたこと―その女子高生の日々が輝きだした理由』伊藤真
鶴澤尚子さん(東京都立両国高校2年)

主人公は私たちと同じ、花の女子高生。私たちと同じように日々様々な些細な問題を抱えています。例えば、彼女が学校の教室に入る。すると男子が教室の隅っこのほうでエッチな雑誌を囲んで読んでいます。本は即先生に没収されますが、彼女はこう思います。「確かに男子があんな本を読んでいるのを見て、自分もいい気はしなかった。それにここの県には、青少年にいやらしい本を見せてはいけないという条例がある」。一方、彼女はこうも思います。この条例って実は私たちが本を選ぶ権利を奪っていることにもつながっているのではないかと。
彼女は考え始めます、日本国憲法を片手に。ちなみに今の内容は、日本国憲法第13条「個人の生命、自由及び幸福追求に対する権利の尊重」と、第21条「表現の自由」に関係した内容です。
そして彼女は気付きます。憲法は私たちを縛るルールではないのだと。より良い未来のために自分の頭で考えて、そして周囲の人と話し合って、そして自分の力で行動していく。そのためにみんなに平等に与えられた基本ルールなのだと。本の中の彼女の言葉を借りると「憲法は大地で、私たちは空に向かって枝を伸ばしているんだ。そういう大きな存在、日本国憲法というものに支えられているから、私たちは平和な毎日を過ごしているんだ」。そういうことに気付き、彼女の日々は輝きだします。
彼女はほかにもいろいろな問題を抱えます。例えばある日は、友達が「個性を大事にしたい」と髪の毛を金髪に染めたり。またある日は、転入生が実は原発事故の被災地から避難してきたのだということが広まり、ついにはTwitterが炎上したり。そのたびに彼女は、日本国憲法を片手に自分の力で解決をしていきます。彼女にはちょっとおちゃめなところもあって、はたから見ると笑ってしまうような方法で解決することもありますが、それもこの本の魅力の一つです。

実は私にもちょっと気になることがあります。携帯のメールの履歴を母親に見られているような気がするんです。夕飯での会話の端々などからそんな気がしました。私はそのたびに、日本国憲法第21条「検閲はこれをしてはならない」を思うんです(笑)が、携帯の料金を払ってくれているのは親なので、ここは我慢するしかないのか…。いいえ、私は彼女と同じように行動するという道を選びたいと思います。日本国憲法を基本ルールとして、お互いが納得するような道を、話し合うことによって見つけていく。そういう解決方法を採りたいと思います。今夜あたり突撃しようと思います。
一見、私たちの生活とはほど遠いように見えるかもしれない日本国憲法ですが、実は私たちの生活を後ろから大きく支えてくれている、そんな存在です。この本を読む前は、憲法は法律の親玉で、あれしちゃダメ、これしちゃダメみたいなものだと思っていたので、柔らかくて懐の深い憲法に感動しました。
<全国高等学校ビブリオバトル関東甲信越大会予選の発表より>
さ・ら・に・鶴澤尚子さん おススメの3冊

『図書館戦争』
有川浩(角川文庫)
本が狩られてゆくという架空の設定。本を守る図書隊員のヒロインが、仲間と共に精一杯働いて、試練を乗り越えて、そして恋もする、というお話。そのリアルな世界観に入り込み、一緒にドキドキできることが好き。
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『Presents』
角田光代(双葉文庫)
短編集で、中でも「鍋セット」という話が好き。普段はあまり気にしないが、一番大切な家族の温かさを感じて、ほっこりできるところが好き。この本を誰か大切な人にプレゼントとしたいなあと前々から思っている。
[出版社のサイトへ]
『枕草子』清少納言
「春はあけぼの…」は有名だが、その続きを読むヒトは少ないかも。「○○がかわい-♡」「××ってダサっ」みたいな、現代の女子高生と変わらない、一面をうかがえる。宮中の生活も見えてきて、とてもおもしろい。
鶴澤尚子さんmini interview
好きなジャンル
恋愛もの、ほっこり系、ミステリー、ファンタジー、歴史物など、結構何でも読みます。ただ怖いのとグロい系はちょっといい。
好きな作家さんは、有川浩さん、三浦しをんさん、万城目学さん、角田光代さん、柚木麻子さん、畠中恵さん、越谷オサムさん、重松清さんなど多数。
小学生のとき
「ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズ 斉藤洋(著)
大好きなネコたちが、私の家の近所で暮らしているという設定。「これはあの商店街かなぁ」「これは私の学校か!?」と本を片手に近所を歩き回った。今でも、近所でそれらしき黒ネコを見ると「ルドルフだ!」と思ってしまいます。
これから
海堂尊さんや、化学・生物系の新書を読んでみたい。(まずは読んでから理解するだけの知識を身につけて…)