謎が解けたときの快感!ホームズ魅力が凝縮された代表作
『恐怖の谷』コナン・ドイル
瀧孝輔くん(東京・足立学園高校1年)

サスペンス小説の中で一番重要な役割を担うのは探偵です。世の中にはいろいろな探偵がいますが、私が一番好きな探偵はシャーロック・ホームズ。ホームズはどんな探偵よりも推理力を持っていますが、人と接するのが得意ではありません。そしてホームズとは対象的に、相棒のワトスン君は真面目で紳士、しっかり者です。サスペンスに登場するコンビで、この二人に勝るものはいないでしょう。
この『恐怖の谷』は、二人の元に暗号が届くところから始まります。暗号の解読シーンは、ホームズの優れた推理力が光るシーン。ホームズを知らない人でも、このシーンを読めば、彼の推理力がわかります。さて、時を同じくして、暗号どおりの殺人事件が起こります。それで、ホームズとワトスン君が事件の解決に乗り出す…ここまでが『恐怖の谷』の第一部。そして、なぜ被害者が事件に巻き込まれてしまったのかが語られるのが第二部です。『恐怖の谷』は二部構成ですが、すべて読み終わったとき、なぜ事件は起こってしまったのか、なぜ被害者は殺されてしまったのか、第一部と第二部の話がかっちりとはまって、すごい快感なんです。単なるサスペンスではなく、「ああ、そういうことだったのか!」という快感が、この『恐怖の谷』の醍醐味です。
物語にはホームズの宿敵、モリアティ教授が登場します。モリアティ教授はすごく頭がよく、その頭のよさを犯罪に活かす、犯罪界のカリスマとも言える存在です。その犯罪界のカリスマのモリアティ教授と探偵界のカリスマ、シャーロック・ホームズの知恵の比べ合い、これもたいへん読み応えのあるところです。

『シャーロック・ホームズ』シリーズにはほかにもたくさんの物語がありますが、『恐怖の谷』には、大切な要素…ほかの探偵にはない優れた推理力、宿敵モリアティ教授の存在、または優れたストーリーの組み立て方、そして読んだ時の「ああ、そういうことだったのか!」という快感…が凝縮されています。「サスペンスは全然読まないよ」とか「シャーロック・ホームズは全然知らない」とか、そんな人は、シリーズ中、まず『恐怖の谷』から読んでください。ホームズが好きになることは間違いなしです。
<全国高等学校ビブリオバトル関東甲信越大会予選の発表より>※学校・学年は取材時
さ・ら・に・瀧孝輔くん おススメの3冊

『ニューヨークのとけない魔法』
岡田光世(文春文庫)
ニューヨークで生活している作者の日々を描いたエッセイです。1話2~3ページで読みやすく、一話一話どれも本当に面白い!これを読んだら、ニューヨークに住みたくなります。これはシリーズものなので、他の作品も是非!!
[出版社のサイトへ]

『わたしはマララ』
マララ・ユスフザイ、クリスティーナ・ラム
(訳)金原瑞人・西田佳子 (学研パブリッシング)
ノーベル平和賞を受賞したマララさんのエッセイです。宗教にしばられ不自由な生活。学校に行くだけでも一苦労。日本とはまるで違う環境で生活している同世代の少女の思いをひしひしと感じることができます。内容がすごく濃かく、いろいろなことを考えさせられました。
[出版社のサイトへ]

『指輪物語』
J.R.R.トールキン(評論社)
これはシリーズものです。長いですが、ハラハラドキドキの展開で絶対飽きません。1冊読み終わるとすぐに次が読みたくなります。
瀧孝輔くんmini interview
好きなのは
サスペンスが好きです。映画が大好きで、その原作を読むことが好きで、それをきっかけに本を読むのが好きになりました。作家では岡田光世さんが好きです。
小学生のころ
小学生時代のイチオシは『チョコレート戦争』(大石真)。有名洋菓子店のショーウインドーのガラスが、ある日割られてしまう。冤罪をかけられた少年たちと洋菓子店との戦争が始まる!
影響本
『世界がもし100人の村だったら』(池田香代子)
世界を人口100人の村にたとえて、世界の様々な問題を訴えかけてくる作品です。貧困問題などに興味を持ちました。
2014年印象に残った
本は、上記でも紹介した『私はマララ』です。映画なら、『レ・ミゼラブル』(感動しました)、『グランド・イリュージョン』(話の構成がすごい。最後の最後の結末がびっくりします)。
読みたい本
『窓から逃げた老人』