リサイクル工学/システム工学

「都市鉱山」からの発掘こそ、次世代の資源・リサイクル工学

 

松野泰也先生 

千葉大学 工学部 都市環境システム工学科/工学研究科 建築・都市科学専攻 都市環境システムコース

第2回 引き出しの携帯電話からも、500億円相当の資源


携帯電話を例に、都市鉱山の話をしましょう。携帯電話にも多数の素材が使われているので、使用済みの携帯電話は「都市鉱山」と言えるのです。

 

携帯電話は何でできていると思いますか。まず外装のプラスチックですね。携帯の中はどんな素材が使われていますか。リチウム? 正解です。リチウムイオン電池に使われています。ガラス? うーん、ガラスは今、樹脂に代わりつつあるんですね。シリコンは半導体に使われます。銀はボタン電池などに使われます。

 

金は携帯電話にも使われています。金は見た目がきれいだからだって? いやいや、見えない部分に使われています。金は、同じくさびにくいという特徴を生かして、携帯電話の電子基板に用いられています。携帯電話は手などに密着して使用されるので、汗が揮発して水蒸気が内部に入り込む可能性があるためです。また携帯に内蔵されたカメラは、銅とニッケルと金が使われています。

 

レアメタルと呼ばれる希少金属もたくさん使われています。振動モータにはネオジムが、チップセラミックコンデンサーにはパラジウム、チタン、バリウムなどが、液晶にはインジウムが使われています。これらも都市鉱山には欠かせない有用物質です。

 

金を例に、携帯電話を回収した場合のことを考えてみましょう。携帯電話の中には、金はだいたい20ミリグラムくらい入っています。今、金は5000円/gだから、携帯1台当たり、金は100円くらいの価値があることになります。

 

では、今日本に、携帯電話は何台くらいあると思いますか。日本人全員が平均して1~2台持っているとして、ざっと2億台あることになります。でも使い終わった携帯の数はそれぐらいじゃあ済みません。君は今のスマホで何台目ですか。4台目!どこに置いてありますか。捨てちゃった? いえ机の引き出しにしまっているって? 1人当たり4台が引き出しにあるとしたら、日本全国で5億台くらいの携帯が眠っていることになります。


そうすると、机の引き出しにしまった金は全部でいくらになりますか。1台当たり100円分の金だから、100円×5億台=500億円! これが俗に、“タンスの中の都市鉱山”と呼ばれるものです。これをいかに回収するか。それが都市鉱山の課題なのです。

 

興味がわいたら  Book Guide

『日本は世界1位の金属資源大国』

平沼光(講談社+α新書)

「都市鉱山」とは何か、身の回りの製品を例にあげ、レアメタル等についてわかりやすく解説している。さらには都市鉱山のみならず、島国である日本の周りに無尽蔵に存在する海水に含有されている資源についても解説している。「資源は地中に埋まっているもの」という常識を覆し、日本は資源大国であることを理解するとともに、それらの資源を有効活用するためには日本の英知、つまり工学が重要な役割を果たすことを解説した入門書である。高校生以上、一般の人にも都市鉱山を理解するための本としてお勧めできる。

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『地上資源が地球を救う』

馬場研二(技報堂出版)

地上資源(都市鉱山)と地下(天然)資源を対比させ、将来、人類が持続可能な(つまり次の世代に負荷を残すことなく生きていける)社会を構築するためには、都市鉱山の有効活用が必須となることを提唱している本。「エントロピー」なる熱力学で勉強する概念を、資源に関して適用し、わかりやすく解説している。高校生以上の読者であれば十分理解可能である。日本および世界各国のリサイクルの実情についても解説していてわかりやすい内容となっている。高校生以上、一般の人にも都市鉱山を理解するための本としてお勧めできる。

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『レアメタル・レアアースがわかる』

西脇文男(日経文庫)

レアメタルとは何か。レアメタルを巡る世界の動向と、都市鉱山からのレアメタルリサイクルについて解説した本。上記『日本は世界1位の金属資源大国』と併せて読むことを勧める。

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