政治過程論、日本政治論
18歳、選挙に行こう! みんなで社会を作ろう!
18・19歳の新有権者はどんな政治意識を持っているか ~教育的な効果が高い模擬投票
小林良彰先生 慶應義塾大学 法学部
第1回 若年層の投票率はなぜ低いのかを考えてみよう~「どうせ選挙に行ってもムダ」と思うとどうなるか

最初に今回の投票年齢引き下げはなぜ実施されたか、経緯を少し述べておきましょう。私は18・19歳への選挙権引き下げに関する参議院憲法審査会に参考人として出席しました。発言の要点は、選挙権引き下げに伴って民法における成人年齢も引き下げるべきかどうかという議論に対して、その必要はないということです。そもそも民法4条では成年は20歳と規定されていますが、民法753条では20歳とは限らず、婚姻で成人となります。そのようなさまざまな議論を経て、決まったのが今回の18歳への有権者年齢の引き下げです。
さて、若年層の投票率は年配層に比べ著しく低いという統計データがあります。
◇年代別投票率の推移<上:衆議院 下:参議院>
※出典:公益財団法人明るい選挙推進協会ホームページ
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※出典:公益財団法人明るい選挙推進協会ホームページ
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平成以降の衆院・参院選のデータを見ても、年齢が下がるほど投票率も下がる傾向があることがわかります。例えば、平成25年(2013年)の参院選では、60代の投票率が約68%であるのに対して、40代は約52%、30代は約44%と世代が下がるにつれ投票率も下がり、20代は約33%。どうしてこんなことになったのでしょう。
その理由の1つは、年をとるほど投票に行くようになる「加齢効果」が考えられます。2つめはその世代がもともと持っている政治意識の高低による「世代効果」です。もし世代効果が投票率を決めているとすれば、その人の人生における投票開始のスタートラインが大事になります。
ロケット打ち上げにも、最初の飛ばす角度が重要です。言い換えると、模擬投票や事前学習などの教育プログラムを最初に施すことが重要になってくることになります。
20代の投票率が低いと若者の民意が反映されない
20代の投票率が著しく低下すると、何が問題になるのでしょう。重要なことの1つは、若年層の民意が過小評価されることです。つまり、政治家は票田にならない若年層のことを考えてくれなくなる。その結果、年金や財政改革など、若年層の未来にかかわる問題が、彼らの民意とは無関係に決定される恐れがあるのです。
では若年層はなぜ投票に参加しないのか、全国サンプルによるJES調査(Japanese Electoral Studies)を用いて分析してみました。その結果、有効性感覚の欠如が原因と判明しました。有効性感覚は「内的」と「外的」に分けられます。内的有効性感覚の欠如とは、自分が投票行動してもムダと思う感覚。外的有効性感覚の欠如は、政治家が自分たちのために働いてくれないという感覚です。一般の人には、政治家は全然我々とは違う特権階級であって、どうせ何もしてくれないという感覚があるのです。
しかし、諦めてはいけない。私は、若い人にも、少なくとも内的な有効性感覚はあると思っています。また全国の高校に実施した模擬投票は、外的も含めた政治的有効性感覚を取り戻す教育効果があることをこれから示していきたいと思います。