環境・バイオの最前線

植物病理学の研究者

世界をリードするファイトプラズマ研究

難波成任

東京大学 農学部 応用生命科学課程/農学生命科学研究科 生産・環境生物学専攻 基礎生物学領域大講座

【病原学】ファイトプラズマとは、不思議な細菌だ。世界中で600種以上の病気を引き起こすかと思えば、ユニークな新植物を作り出す。この謎の細菌が究極まで遺伝子を捨て去った「最小の遺伝子の生物」であると突き止め、その全ゲノム遺伝子の解読に成功したのが難波先生。科学雑誌『ネイチャー』で「究極の〝怠け者〟細菌」の発見者として世界の耳目を集めた。以来、ファイトプラズマ研究では世界のトップを走る。「優秀な研究者は会社員になっても優秀」という人生哲学を持ち、研究外部との接触も活発で農水省や文科省にも顔がきく親分肌の人。2006年にできた日本初の試みの「東大植物病院」の院長も務めた。

植物病理学研究室 HP

 

奥野哲郎

京都大学 農学部 資源生物科学科/農学研究科 応用生物科学専攻 植物保護科学講座

【感染生理学】植物RNAウイルスの感染・増殖機構を分子レベルで明らかにする研究を行っている。京都大は植物病理学研究でいち早く分子生物学を導入した伝統があるが、植物ウイルスを題材にしたのはこの先生から。三瀬和之准教授とともに奥野―三瀬体制で非常にがんばっているという定評がある。

植物病理学研究室 HP

 

大木理

大阪府立大学 生命環境科学域 応用生命科学類/生命環境科学研究科 応用生命科学専攻 

【病原学】国際ウイルス分類委員会の日本代表として、生命の謎を解く鍵を秘めたウイルスの分類の世界基準作りに貢献。また、植物の組織内でウイルスの感染が拡大するメカニズムを探る研究では、遺伝子の一塩基が変わるだけで病気が劇的に変わることを突き止めるなど、電子顕微鏡などを駆使して他の追随を許さない成果を上げる。料理や木工などものを作ることが大好きで、研究室でふるまわれるコーヒーにはひそかなファンが多い。

植物生体防御学グループ HP

 

尾谷浩

元鳥取大学 農学部 生物資源環境学科

【感染生理学】二十世紀ナシだけが特異的にかかるナシ黒斑病の病原菌の生態、毒素の研究から防除まで、組織的な研究を指揮して「黒斑病の鳥取大」の名前を世界に高らしめている。もの静かな学究肌で、現場の信望が厚い。2013年3月退官したが、同生物資源環境学科の児玉基一朗教授に後継される。

 

佐野輝男

弘前大学 農学生命科学部 生物資源学科(/農学生命科学研究科 農学生命科学専攻) 

【病原学】日本のウイロイド研究の第一人者。ウイロイドとは「ウイルスのような」の意味の、一本鎖の環状RNAのことで、タンパク質をコードしないというウイルスにない特徴を持つ最小の病原体。果樹の被害が大きく、時には大きな樹木も枯らしてしまう。地味な研究だが、ウイロイドに関して、圧倒的に日本を、いや世界をリードする。

植物病理学教室 HP

 

大島一里

佐賀大学 農学部 応用生物科学科(/農学研究科 生物資源科学専攻) 

【病原学】非常に精力的に、カブモザイクウイルスを中心とした植物ウイルスの分子進化を研究している。大島先生は世界中を飛び回り植物ウイルスを収集、遺伝子銀行(ジーンバンク)に登録している植物ウイルスの分離株のゲノム数は世界一! 将来的には、世界中の植物の病気予測に役立てる植物ウイルス診断キットの開発をめざしている。

植物ウイルス病制御学研究室 HP

 

百町満朗

岐阜大学 応用生物科学部 生産環境科学課程(/応用生物科学研究科 生産環境科学専攻) 

【発生生態、防除】農薬を使った土壌病害の防除が現在ほど問題になっていなかった時代から、微生物などを使った生物防除に真剣に取り組んできた研究者の一人。特に、農業現場に近い防除技術の研究に優れた成果を上げている。

■植物病理学研究室 HP

 

荒瀬榮

島根大学 生物資源料学部 農林生産学科(/生物資源科学研究科 農林生産科学専攻) 

【防除】イネやソラマメで、生育に必要な光の性質を変えてやると、強い病害抵抗性を誘導することを見出した。温室ハウスに特殊なフィルムをかけ光の性質を変えると栽培作物に病気が出なくなる実用実験をするなど、ユニークな研究を続けている。

植物病理学研究室 HP

 

西口正通

愛媛大学 農学部 生物資源学科 生物生産システム学コース(/農学研究科 生物資源学専攻) 

【感染生理学、防除】弱毒ウイルスの専門家。対象となった弱毒トバモウイルスは、トマト、メロンを標的作物として実際に農家で利用されている。先生の農薬に頼らない次世代型防除ワクチンに期待しよう。

分子生物資源学研究室 HP

 

高松進

三重大学 生物資源学部 生物圏生命科学科/生物資源学研究科 生物圏生命科学専攻 

【病原学】日本のうどんこ病菌の第一人者。「うどんこ病」と学会でもひらがな表記するこの植物の病気はうどんこ病原菌(カビ)だが、培養がほとんど不可能で、まだ生活環もよくわかっておらず、分類にも難航している。地道にうどんこ病の研究を続けている。

■植物感染学研究室 HP

 

寺岡徹

東京農工大学 農学部 応用生物科学科/農学府 生物制御科学専攻 

【感染生理学、防除】一部がすぐ枯れる植物は弱いのでなく、むしろ被害を最小限に抑えており、病原菌も意外と節操があって特定の植物あるいは品種しか侵さないものも多いと話す先生は、生物制御の仕組みをやさしく説く。同時に、バイオコントロールによる生物農薬の開発を推進する。

植物病理学研究室 HP

 

名古屋大にこの人あり!

柘植尚志

名古屋大学 農学部 資源生物科学科/生命農学研究科 生命技術科学専攻 生物生産技術科学講座 

【感染生理学】毎年5億人分の食糧が、植物の病気によって失われているという。世界の食糧の安定供給を脅かす最大の元凶が糸状菌(カビ)。柘植先生は、ナシ黒班病の病原菌を使って、どこにでもいる病原性のない腐性菌が、進化によって二十世紀ナシに感染する力を獲得していくプロセスを明らかにした。まさに、生物の進化の謎に迫る貴重な研究だ。緻密で時間のかかる作業を驚異的な集中力とパワーでやりこなし、異例ともいえる若さで学会賞を受賞した。感染生理学のメッカ・名古屋大にこの人ありといわれ、世界をリードする期待の研究者だ。

植物生産科学第1研究分野 HP

 

吉岡博文

名古屋大学 農学部 資源生物科学科/生命農学研究科 生物機構・機能科学専攻 バイオダイナミクス講座

【感染生理学】ここ10数年、めざましい成果を上げる名古屋大学の植物病理学研究の中で、植物と病原菌の激しい攻防を研究するバイオダイナミクス講座を押し進める。「病害耐性作物の創出につながる基礎研究をめざす」一方で、「趣味バンド演奏」。公私ともに活発だ。

生物相関防御学研究分野 HP

 

土佐幸雄

神戸大学 農学部 生命機能科学科/農学研究科 生命機能科学専攻 

【感染生理学】冷害で大発生し度重なる食糧危機を起こすイネいもち病菌は、日本の植物病理学が克服すべき原点といえる。神戸大農学部は、イネいもちの大家といわれた眞山滋志教授以来の伝統を持ち、土佐先生も「いもち病菌のゲノム・遺伝子解析」をテーマとする。好きな言葉は「色即是空」。「研究はジグソーパズルでない。誰も答えを知らず完成の姿を知らず、答えはないのかも…」とおっしゃり、かくして科学は限りなく仏教に近づく。

生命機能科学専攻 サイト

 

曳地康史

高知大学 農学部 農学科 生命化学コース/総合人間自然科学研究科 農学専攻 

【病原学】植物ウイルス、細菌学の専門家。京都大出身で、奥野哲郎先生(現京都大教授)の後輩。高知大で奥野―曳地ラインで植物ウイルス学と細菌学体制を確立した。毎晩、「研究室で将来のビジョンを肴に酒宴を開いた」という伝説がある。優れた研究の影に、変り種の人脈あり?

植物工学研究室 HP

 

有江力

東京農工大学 農学部 応用生物科学科/農学府 生物制御科学専攻 

【感染生理学】寺岡徹教授―有江力准教授の東京農工大コンビ体制でがんばってきたが、2011年から教授に。病害の防除が難しい代表格である土壌伝染病の不完全子のう菌を用い、分子生物学的に解析している。

植物病理学研究室 HP

 

高橋英樹

東北大学 農学部 生物生産科学科/農学研究科 応用生命科学専攻 植物機能科学講座 

【感染生理学】病原微生物の中でもウイルス、特に繁殖力が強いキュウリモザイクウイルスを用い、宿主側の植物―ウイルス間の相互作用を分子レベルでバリバリ研究していると定評がある。

植物病理学分野 HP

 

秋光和也

香川大学 農学部 応用生物科学科(/農学研究科 生物資源利用学専攻) 

【感染生理学】1992年ミシガン州立大学博士課程を修了した有望研究者。植物と病原微生物相互反応の分子レベル解析から防除に向けた応用研究と幅広く、香川の地場産業であるカンキツ病害の研究も進めている。

植物病理学研究室 HP

 

久保康之

京都府立大学 生命環境学部 農学生命科学科/生命環境科学研究科 応用生命科学専攻

【感染生理学】炭そ病菌やイネいもち病菌など代表的な植物病原糸状菌は植物の表面を覆うクチクラ層を貫通するとともに植物の免疫防御反応をも回避してしまうことを明らかにした。防除薬剤の開発や病害に強い植物作りにも取り組む。

植物病理学研究室 HP

 

増田税  

北海道大学 農学部 生物資源科学科/農学院 生物資源科学専攻 植物育種科学講座

【病原学】日本の植物病理学研究のメッカ・北海道大農学部の伝統は、細菌と糸状菌、ウイルス・ウイロイドまで各方面から作物の病気に取り組む。中でも増田先生は、植物とウイルスの相互作用を分子レベルで情熱を傾けて解析する。「研究生活は人生の縮図。将来の知恵を拾い集めてください」と言う先生のひとことは含蓄がある。

細胞工学研究室 HP

 

吉川信幸 

岩手大学 農学部 農学生命課程(/農学研究科 バイオフロンティア専攻)

【病原学】もともと植物ウイルスを手掛けていた先生だが、有用物質を生産させる遺伝子をウイルスに乗せて運ぶウイルスベクターの手法でリンゴから分離したウイルスを用いたり、遺伝子の組み換えによる有用食物の作出を行なったりと、積極的に行っている。

植物病理学研究室 HP

 

津田新哉

独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 病害虫研究領域

【病原学】中央農業総合研究センターは農水省のいちばん大きな研究拠点。その中で、植物病理の伝染病関係、特にウイルス研究を行う中心的人物という。

中央農業総合研究センター サイト

 

景山幸二 

岐阜大学 応用生物科学部 生産環境科学課程(/応用生物科学研究科 生産環境科学専攻)/流域圏科学研究センター 植生資源研究部門

【病原学、発生生態】先にあげた百町満朗先生が研究室の教授だった時代、准教授だったのが景山先生。その伝統を継承し、土壌糸状菌を用いた生態研究、環境評価、植物病原菌の分子診断学を行う。

菌類生態学研究室(景山研究室) HP

 

一瀬勇規 

岡山大学 農学部 総合農業科学科 応用植物科学コース/環境生命科学研究科 生物生産科学専攻

【感染生理学】植物体内で合成される抵抗性物質ファイトアレキシンの感染メカニズム研究の大家、白石友紀教授を後継し、植物病害の制御、植物免疫と呼ばれる植物抵抗性の解明に成果を上げている。

遺伝子細胞工学研究室 HP

 

瀧川雄一 

静岡大学 農学部 共生バイオサイエンス学科/農学研究科 共生バイオサイエンス専攻

【病原学】植物に病気を起こす細菌病についての大家。培養設備や独特のテクニックも必要な細菌の勉強を本気でしたければ、ここ静岡大農学部の先生の研究室しかないといわれる。

植物病理学研究室 HP

 

近藤則夫 

北海道大学 農学部 生物資源科学科/農学院 生物資源科学専攻 作物生産生物学講座 

【防除】日本の植物病理学研究のメッカ・北海道大農学部の伝統を継承し、畑作物を侵す土壌伝染性病害のバイオコントロールを進める。対象はアズキ、ダイズ、ジャガイモ、インゲン、イチゴと幅広く、土壌伝染病の総合的な理解をめざす。

植物病理学研究室 HP

 

夏秋知英

宇都宮大学 農学部 生物資源科学科(/農学研究科 生物生産科学専攻) 

【病原学、防除】植物のウイルス病を防除するために、病原ウイルスを高温処理して弱毒化したものを接種するという「弱毒ウイルスワクチン」開発・研究を行っている。おしどり夫婦ぶりは有名で、夏秋啓子夫人は東京農業大の植物病理学教授。東南アジアをフィールドに様々な植物病を調べ、熱帯産野菜と果樹のウイルス病の研究をしている。

植物病理学研究室 HP

 

土屋健一 

九州大学 農学部 生物資源環境学科 生物資源生産科学コース/生物資源環境科学府 資源生物科学専攻 農業生物資源学教育コース 

【防除】農薬に頼った植物病の防除に比べ、環境に配慮した「生物農薬」の開発を推進する。化学農薬の使いすぎは薬剤耐性菌の出現など様々な問題を生じている。生物農薬とは、自然界に存在する微生物の拮抗作用を利用し、病原微生物の活性を抑え病害をなくす期待の次世代防除法だ。

植物病理学分野 HP

 

古谷綾子

茨城大学 農学部 資源生物科学科(/農学研究科 資源生物科学専攻)/遺伝子実験施設 

【感染生理学】若手研究者に贈られる日本植物学会学術奨励賞を2009年にイネ白葉枯病菌の病原性研究で受賞した女性ホープ。京都府立大の鉄人・久保康之先生の下で、植物―微生物間の相互作用の研究の薫陶を受けたことが出発点になっている。

遺伝子実験施設 職員紹介サイト

 

竹内香純 

独立行政法人 農業生物資源研究所 植物科学研究領域 植物・微生物間相互作用研究ユニット 

【感染生理学】岡山大の鉄人・一瀬勇規教授の薫陶を受け、農業生物資源研究所のプロジェクトリーダーとして、植物の抗菌性制御メカニズムの解明に取り組む。2008年に学術奨励賞を受賞した期待の若手。

植物科学研究領域 植物・微生物間相互作用研究ユニット HP

 

志村華子

北海道大学 農学部 生物資源科学科/農学院 生物資源科学専攻 作物生産生物学講座 

【感染生理学】植物病理学のメッカ・北海道大農学部のホープ。植物と病原菌の共生システムの解明を試みるとともに、ウイルスを利用した抗ウイルス剤の開発を行っている。学生に読んでほしい本はという質問に「正しい日本語を学べる本」と答えるしなやかな強さを持つ女性研究者だ。

園芸学研究室 HP

 

中馬いづみ

神戸大学 自然科学系先端融合研究環 重点研究部

【感染生理学】依然として大きな課題である世界の稲作の最重要病害、イネいもち病研究に挑む。2013年度「いもち病における抵抗性遺伝子の適応機構に関する研究」で学術奨励賞受賞と論文賞も受賞した。(農学部生命機能科学科、農学研究科生命機能科学専攻 担当)

 

植物病理学を知るなら

植物病理学が学べる大学