環境・バイオの最前線
植物病理学の研究者

吉岡博文
名古屋大学 農学部 資源生物科学科/生命農学研究科 植物生産科学専攻
【感染生理学】めざましい成果を上げる名古屋大学の植物病理学研究の中で、植物と病原菌の激しい攻防を研究するバイオダイナミクス講座を押し進める。「病害耐性作物の創出につながる基礎研究をめざす」一方で、「趣味バンド演奏」。公私ともに活発だ。

土佐幸雄
神戸大学 農学部 生命機能科学科/農学研究科 生命機能科学専攻
【感染生理学】冷害で大発生し度重なる食糧危機を起こすイネいもち病菌は、日本の植物病理学が克服すべき原点といえる。神戸大農学部は、イネいもちの大家といわれた眞山滋志教授以来の伝統を持ち、土佐先生も「いもち病菌のゲノム・遺伝子解析」をテーマとする。好きな言葉は「色即是空」。「研究はジグソーパズルでない。誰も答えを知らず完成の姿を知らず、答えはないのかも…」とおっしゃり、かくして科学は限りなく仏教に近づく。

曳地康史
高知大学 農林海洋科学部 農芸化学科/総合人間自然科学研究科 農学専攻
【病原学】植物ウイルス、細菌学の専門家。高知大で植物ウイルス学と細菌学を確立した。毎晩、「研究室で将来のビジョンを肴に酒宴を開いた」という伝説がある。優れた研究の影に、変り種の人脈あり?


高橋英樹
東北大学 農学部 生物生産科学科/農学研究科 応用生命科学専攻
【感染生理学】病原微生物の中でもウイルス、特に繁殖力が強いキュウリモザイクウイルスを用い、宿主側の植物―ウイルス間の相互作用を分子レベルでバリバリ研究していると定評がある。

秋光和也
香川大学 農学部 応用生物科学科/農学研究科 応用生物・希少糖科学専攻
【感染生理学】植物と病原微生物相互反応の分子レベル解析から防除に向けた応用研究と幅広く、香川の地場産業であるカンキツ病害の研究も進めている。

久保康之
摂南大学 農学部 農業生産学科
【感染生理学】炭そ病菌やイネいもち病菌など代表的な植物病原糸状菌は植物の表面を覆うクチクラ層を貫通するとともに植物の免疫防御反応をも回避してしまうことを明らかにした。防除薬剤の開発や病害に強い植物作りにも取り組む。

増田税
北海道大学 農学部 生物資源科学科/農学院 農学専攻
【病原学】日本の植物病理学研究のメッカ・北海道大農学部の伝統は、細菌と糸状菌、ウイルス・ウイロイドまで各方面から作物の病気に取り組む。中でも増田先生は、植物とウイルスの相互作用を分子レベルで情熱を傾けて解析する。「研究生活は人生の縮図。将来の知恵を拾い集めてください」と言う先生のひとことは含蓄がある。


景山幸二
岐阜大学 応用生物科学部 生産環境科学課程/応自然科学技術研究科 生物生産環境科学専攻/流域圏科学研究センター
【病原学、発生生態】土壌糸状菌を用いた生態研究、環境評価、植物病原菌の分子診断学を行う。

一瀬勇規
岡山大学 農学部 総合農業科学科 応用植物科学コース/環境生命科学研究科 生物生産科学専攻
【感染生理学】植物体内で合成される抵抗性物質ファイトアレキシンの感染メカニズム研究の大家、白石友紀教授を後継し、植物病害の制御、植物免疫と呼ばれる植物抵抗性の解明に成果を上げている。

瀧川雄一
静岡大学 農学部 応用生命科学科/総合科学技術研究科 農学専攻
【病原学】植物に病気を起こす細菌病についての大家。培養設備や独特のテクニックも必要な細菌の勉強を本気でしたければ、ここ静岡大農学部の先生の研究室しかないといわれる。

近藤則夫
北海道大学 農学部 生物資源科学科/農学院 農学専攻/北方生物圏フィールド科学センター
【防除】日本の植物病理学研究のメッカ・北海道大農学部の伝統を継承し、畑作物を侵す土壌伝染性病害のバイオコントロールを進める。対象はアズキ、ダイズ、ジャガイモ、インゲン、イチゴと幅広く、土壌伝染病の総合的な理解をめざす。

古谷綾子
茨城大学 農学部 地域総合農学科/農学研究科 農学専攻/遺伝子実験施設
【感染生理学】若手研究者に贈られる日本植物学会学術奨励賞を2009年にイネ白葉枯病菌の病原性研究で受賞。京都府立大の鉄人・久保康之先生の下で、植物―微生物間の相互作用の研究の薫陶を受けたことが出発点になっている。


志村華子
北海道大学 農学部 生物資源科学科/農学院 農学専攻
【感染生理学】植物病理学のメッカ・北海道大農学部で、植物と病原菌の共生システムの解明を試みるとともに、ウイルスを利用した抗ウイルス剤の開発を行っている。学生に読んでほしい本はという質問に「正しい日本語を学べる本」と答えるしなやかな強さを持つ女性研究者だ。

中馬いづみ
帯広畜産大学 畜産学部
【感染生理学】依然として大きな課題である世界の稲作の最重要病害、イネいもち病研究に挑む。2013年度「いもち病における抵抗性遺伝子の適応機構に関する研究」で学術奨励賞受賞と論文賞も受賞した。

吉川信幸
岩手大学 農学部 農学生命課程(/農学研究科 バイオフロンティア専攻)
【病原学】もともと植物ウイルスを手掛けていた先生だが、有用物質を生産させる遺伝子をウイルスに乗せて運ぶウイルスベクターの手法でリンゴから分離したウイルスを用いたり、遺伝子の組み換えによる有用食物の作出を行なったりと、積極的に行っている。

大島一里
佐賀大学 農学部 生物資源科学科/農学研究科 生物資源科学専攻
【病原学】非常に精力的に、カブモザイクウイルスを中心とした植物ウイルスの分子進化を研究している。大島先生は世界中を飛び回り植物ウイルスを収集、遺伝子銀行(ジーンバンク)に登録している植物ウイルスの分離株のゲノム数は世界一! 将来的には、世界中の植物の病気予測に役立てる植物ウイルス診断キットの開発をめざしている。

柘植尚志
中部大学 応用生物学部 応用生物化学科/応用生物学研究科 応用生物学専攻
【感染生理学】毎年5億人分の食糧が、植物の病気によって失われているという。世界の食糧の安定供給を脅かす最大の元凶が糸状菌(カビ)。柘植先生は、ナシ黒班病の病原菌を使って、どこにでもいる病原性のない腐性菌が、進化によって二十世紀ナシに感染する力を獲得していくプロセスを明らかにした。まさに、生物の進化の謎に迫る貴重な研究だ。