環境・バイオの最前線

植物病理学

梅を蝕む輪紋ウイルスが日本初上陸!

 

2009年3月、恐れていたことが起こった。植物病理学者たちによってわが国への侵入が警戒されていた梅の植物ウイルス(ウメ輪紋ウイルス)が、東京都青梅市の著名な観光の場となっている梅の公園から、日本で初めて検出されたのである。梅から検出されたウメ輪紋ウイルスは、農林水産省に報告され、緊急調査され、感染症が確認された梅の木は大量に伐採されることになった。梅は日本人にとって親しみの深い樹木であるが、この輪紋ウイルスはアブラムシに媒介され、梅だけでなく実は桜属の他の樹木にも容易に感染する。もしも桜に感染したら、その被害はさらに大きくなろう。

 

この梅を蝕むウイルスは、世界的に見ると被害はすでにかなり甚大だ。桜、桃、スモモ、アンズ、プルーンなどに及ぼした世界の被害総額は、過去30年間で低く見積もってもなんと1.4兆円という。

 

梅のウイルスを最初に検出したのは、東大植物病院である。同病院は一般市民が診察を受けることができる植物病院として、2006年、日本で初めて東京大農学部に開設され、500円玉一枚で診察してくれると話題を呼んだ。ちなみに植物病院は昔、宮沢賢治が作ったことがあったが、すぐにつぶれてしまったという。東大植物病院は、ウイルスの検出キットの開発にも成功し、梅の輪紋ウイルス発見と防疫にも貢献している。

 

梅ウイルス騒動は落ち着いたかに見えるが、日本に上陸してしまっている以上予断は許されない。梅林公園の梅の木だけならまだしも、もし梅の実に感染すれば梅農園は大打撃を受けるだろう。梅の実が肉厚で美味という評判の高い和歌山の南高梅に感染したら…、岡山名産の桃に感染したら…。あるいは、吉野山の桜に感染したら…伐採され、桜花見ができなくなるのでは…。悪い想像ばかりが駆け巡る。その後も全国の植物病理学者は、市民への啓蒙と監視の目をゆるめないでいる。

 

 

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