学問本オーサービジット(大阪大学協力)
社会には不正義や不平等がたくさんある ゆえに「公共性と正義」について考えたい
友枝先生インタビュー
友枝敏雄先生 大阪大学 未来戦略機構

◆先生は、研究テーマをどのように見つけたのでしょうか。
大学入学時点では、歴史学が好きで、東洋史を専攻しようと思っていました。その後、学部1、2年次に社会学に出会い、社会学を専攻しました。社会学専攻のきっかけとなったのが、学部1年次に読んだウエーバー著『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神、上・下』(岩波文庫)でした。この本の翻訳者である大塚久雄先生(専門は西洋経済史)の著作も多く読みました。
好きな学問分野をやろうと思って、やり始めたのが社会学だったということです。社会学との運命的な出会いがあったわけではありませんが、いやにならなかったので、ずっと研究を続けることができたように思います。
◆先生は今度どのように研究を発展させようとお考えでしょうか。
社会学理論の研究として、「公共性と正義」の問題について、自分の考えをまとめたいと思っています。ご存知の通り、社会には不正義や不平等がたくさんあります。人間が不道徳な側面をもっていることも事実です。そうであるがゆえに、人間と社会を成立させるために、正義は必要なのだと考えています。
◆先生のゼミや研究室の卒業生は、どんな就職先でどのような仕事をされていますか。
(1)大学の研究者
(2)新聞社・テレビ局・広告代理店・出版社
(3)国家公務員・地方公務員
(4)一般企業
私が、専任教員として関与した、中央大学文学部社会学研究室、九州大学文学部社会学・地域福祉社会学研究室、大阪大学人間科学部社会学研究室で指導した卒業生の就職先です。社会学専攻卒業生の就職先として多いのが、(2)新聞社・テレビ局・広告代理店・出版社です。
◆この分野に関心を持った高校生に、アドバイスをお願いします。
(1)新聞やニュースを見て、世界の動き、社会の変化に関心を持つ。
(2)読書を通して、自分の考えをまとめる、さらに文章で的確に表現する訓練をする。
◆高校時代は、どのように学んでいたか、何に熱中していたかを教えてください。
私の2、3年先輩が、学園紛争世代でした(1969年の東大入試は中止になりました)。東大紛争の影響で、3月に東京大学を卒業できず、数ヶ月遅れた学年もありました。21世紀に入ってからの大学の様子をみていると、60年代後半になぜ青年反乱が起こったのかを想像するのはかなり難しいですね。高校時代は、社会のこと、政治のこと(ベトナム戦争の影響もあって)について、友人と議論していました。ただ高度経済成長の時代でしたので、将来に夢を描けた(少しくだけた表現をすると、大学を卒業すれば正社員として就職できると誰もが考えていた)のは、よかったと思っています。
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