人工知能/機械学習

国内最大人工知能の拠点、AIPセンターは何をめざすのか~日本の機械学習研究

杉山将先生

理化学研究所 革新知能統合研究センター(AIPセンター)センター長

第3回 世界中で加熱するAI研究

新聞は連日のように、自動運転、臨機応変に喋る人工知能ロボット等のニュースで賑っています。AIは間違いなく、最先端IT研究として浸透し始めていると言っていいと思います。

 

ここで世界の機械学習の研究事情を話しましょう。世界的に重要な機械学習の国際会議には、ICMLとNIPSがあります。ともに世界の名だたる大学や巨大IT企業の研究者が参加しています。これらの会議にはディープラーニングの父と呼ばれるジェフリー・ヒントン先生も常連参加者です。ヒントン先生は、2006年、世界で最初にディープラーニングの論文を書いた英国生まれの機械学習研究者です。

 

ディープラーニングが世界に衝撃を与えたのは2012年でした。画像認識の性能を競う世界コンペが開催され、ヒントン先生が属するトロント大学のディープラーニングチームが初参加し、ぶっちぎりのエラー率の低さで優勝したことに始まります。その後年々、ディープラーニングの画像認識エラー率は低下し、2015年、ついに人間より低いエラー率を達成しました。それによって、今日のディープラーニングブームに火がついたのです。

 

革新知能統合研究センター(AIPセンター)にて
革新知能統合研究センター(AIPセンター)にて

2016年、私がアジア人初の実行委員長を務めたNIPSは、参加者が6000人でした。もう一方の機械学習の国際会議ICMLの昨年の参加者は3000人ですが、どちらも参加者数が過去数年は毎年倍々で急増してきました。

 

会議についた企業スポンサーを見るとそうそうたる企業が並んでいます。2000年初頭はグーグル、IBM、マイクロソフトなど、後半にはアマゾン等の第2世代巨大IT企業が参画しました。フェイスブックのザッカーバーグ社長はNIPSに乗り込み、ここでAIラボ設立宣言したことで話題を呼びました。

 

さて日本にとって衝撃的なのは国別論文採択数比較です。ICML2016の採択論文322件中、アメリカの大学やインターネット上でビジネスを行うアメリカのIT企業が70%を占めているのです。2位以下はわすか数%の占有率で仏、英国、スイスなどが続き、日本の論文採択数もたった10件(3%)に過ぎません。NIPSでも、採択数568件中、日本の占める割合はわずか1.9%です。残念ながら、機械学習の国際会議での日本の存在感は非常に薄いと言わざるを得ません。