科学技術政策、情報学/人工知能

超スマート社会実現に向け、力を入れ始めた国の人工知能研究政策

栗原潔さん 文部科学省 研究振興局 参事官(情報担当)

第4回 超スマート社会へ向けて、今後の有望IT分野は?~国や自治体の連携の試み

英国原子力関係施設が集中するセラフィールド地域にあるダルトン原子力研究所を訪問(2014年英国マンチェスター大学ビジネススクールに留学中)
英国原子力関係施設が集中するセラフィールド地域にあるダルトン原子力研究所を訪問(2014年英国マンチェスター大学ビジネススクールに留学中)

総務省・経産省・文科省の三省連携

 

超スマート社会実現へ向けて、次世代人工知能技術の研究開発に関する総務省・経産省・文科省の三省連携も急速に進んでいます。

 

経産省は産業総合研究所AIRC(人工知能研究センター)を2015年、発足させました。AIRCは実社会のサービスから得られるビッグデータを活用し、様々な実証実験施設も用いながら社会への応用に重点を置いた人工知能研究を推進します。総務省では、NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)があり、情報通信技術分野を専門とする研究機関としての長い歴史を有し、特に自然言語処理や脳情報通信での卓越した研究を実施しています。

 

これらに文科省の2016年、基礎研究の厚みを確保しつつイノベーションを志向した革新的な人工知能の研究・開発をめざす拠点=AIPセンターが加わり、これらを政府全体の司令塔の下での一体的な運営を進めています。つまり科学技術・学術・教育、経済・産業、情報通信を所管する複数の行政府が一体的な研究を推進する体制が整いました。

 

 

企業や大学とも連携

 

国と企業との連携も活発になっています。産総研AIRCは国内外の企業・大学との連携を進めていますし、理研AIPセンターでも、2017年3月、富士通、NEC、東芝との連携センターがスタートしました。

 

大学と自治体の連携も積極的に進められています。一例を挙げると、北海道大学と札幌市の「スマート除排雪実証実験」があります。札幌の年間積雪量は人口100万都市では世界1です。同実験は、札幌市内を走るタクシー等につけたセンサーデータを収集し、積雪、気象データをプラスし分析しています。積雪が渋滞等に与える影響を解析する等の成果を挙げました。

 

 

AI、IoT、ビッグデータ多島海

 

今後成長が期待されるIT分野はどの辺にあるのでしょう。文部科学省の科学技術・学術政策研究所が多数の科学技術分野をグループごとにマップ化し、どの分野が勃興してきているか等の分析をしています。この図はその一部ですが、この真中に、画像認識、音声認識、ニューラルネットワークなどあり、その周辺にSNSやリモートセンシング、ワイヤレスネットワークなどがあることがわかります。これを私は「AI、IoT、ビッグデータ多島海」と、文明のゆりかご・エーゲ海になぞらえて呼んでみましたが、このあたりからすごい大陸が生まれそうな期待が持てます。

 

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興味がわいたら

『パーソナルコンピュータを創ってきた人々』

脇 英世(SBクリエイティブ)

私が中学生・高校生の頃に非常に好きだった雑誌連載をまとめたもので、IT業界の生ける伝説の人々の素顔とエピソードが魅力的に語られている書籍。マイクロソフトのビル・ゲイツ、ポール・アレンにはじまり、アップルのスティーブ・ジョブス、スティーブ・ウォーズニアック、ペプシから移籍したジョン・スカリー、オラクルのラリー・エリソン、LINUXのリーナス・トーバルド、ダイナブックのアラン・ケイ等。しかし、この本の素晴らしい点はこういったIT成功譚で一般的に語られる機会のあまりないドナルド・クヌース、ビアルネ・ストラウストラップ、ビル・ジョイ等の本当に世に貢献した天才たちに触れているところで、この分野のイノベーションの土壌を理解しやすく、また一つの人生の指針にもなる内容です。

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『深層学習』

谷貴之(講談社サイエンティフィク)

私が本書を購入した2015年は「人工知能」なる単語を冠して様々な書籍が出版され「深層学習」がバズワードとしてもてはやされている中で、自身で実際に深層学習のコーディングもしてGPU環境で実装してみることで技術の一端を理解することができたと感じたもの。理論的に明快に簡潔に、しかし、SGD・オートエンコーダ・cNN・RNN・RBMと基本的な技術を俯瞰して親しむための(本書を含む「機械学習プロフェッショナルシリーズ」全体がそうであるが)素晴らしい書籍です。

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こちらも中高生におススメ

『昭和史』

半藤一利(平凡社)

学生時代に読んで以来、何度も読み返してしまう書籍。体系的に日本史の授業で学べない昭和史に触れられるとともに学ぶべき歴史的教訓も示唆が深いですが、それ以上に、詳細な筆致から多様な人物が歴史を紡いでいく様子が感じられて、自らも貢献できるような存在になりたいと感じさせる迫力があります。

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