科学技術政策、情報学/人工知能

超スマート社会実現に向け、力を入れ始めた国の人工知能研究政策

栗原潔さん 文部科学省 研究振興局 参事官(情報担当)

第5回 超スマート社会の人材育成~データサイエンティスト人材の育成が不可欠

科学分野の将来を担うドクターが少ない

 

超スマート社会実現には、情報技術人材の育成が不可欠です。IT人材の現状はどうでしょう。各国と比較すると日本の情報科学技術分野の博士号取得者の数が少ないことがわかります。

  

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大学院の博士課程を修了したドクター取得者数は、その国の科学分野の将来の成長を決める鍵になります。しかし日本の博士の年間育成人数は、約1万3000人、うち情報系は約600人程度に過ぎません。この数字は国際比較をしても、米、中国、欧米諸国、韓国より劣っています。

 

経済産業省の将来推計では、2020年には約27万人のIT人材が必要とされています。IT人材はドクター取得者数だけでは計れないとは言え、不足しているとされる人材数とは大きな開きがあります。

 

 

5万~50万人のデータサイエンティスト育成

 

文科省の推進する人工知能(AI)研究拠点=AIPセンターの大きな目標の1つにも、人材の育成を掲げています。

 

データサイエンティストのピラミッドの育成イメージ図(下図)をご覧ください。具体的に1年間に育成をめざすべき人材数を挙げています。頂点の業界代表レベルは5~50人、その下の棟梁レベル(熟練データサイエンティストレベル)500人、独り立ちレベル5000人、見習いレベル5万人としています。さらにその下の裾野に50万人のデータサイエンティスト育成を挙げています。

 

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文科省には、enPiT(エンピット)という情報技術系を含む人材育成事業もあります。人工知能の中核拠点AIPセンターの目標の1つも人材育成です。研究開発を担うのは既に実績のある研究者だけではなく、若手研究者、博士課程・修士課程あるいは一部学部学生までも視野に入れた支援を進めています。

 

おわり

興味がわいたら

『パーソナルコンピュータを創ってきた人々』

脇 英世(SBクリエイティブ)

私が中学生・高校生の頃に非常に好きだった雑誌連載をまとめたもので、IT業界の生ける伝説の人々の素顔とエピソードが魅力的に語られている書籍。マイクロソフトのビル・ゲイツ、ポール・アレンにはじまり、アップルのスティーブ・ジョブス、スティーブ・ウォーズニアック、ペプシから移籍したジョン・スカリー、オラクルのラリー・エリソン、LINUXのリーナス・トーバルド、ダイナブックのアラン・ケイ等。しかし、この本の素晴らしい点はこういったIT成功譚で一般的に語られる機会のあまりないドナルド・クヌース、ビアルネ・ストラウストラップ、ビル・ジョイ等の本当に世に貢献した天才たちに触れているところで、この分野のイノベーションの土壌を理解しやすく、また一つの人生の指針にもなる内容です。

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『深層学習』

谷貴之(講談社サイエンティフィク)

私が本書を購入した2015年は「人工知能」なる単語を冠して様々な書籍が出版され「深層学習」がバズワードとしてもてはやされている中で、自身で実際に深層学習のコーディングもしてGPU環境で実装してみることで技術の一端を理解することができたと感じたもの。理論的に明快に簡潔に、しかし、SGD・オートエンコーダ・cNN・RNN・RBMと基本的な技術を俯瞰して親しむための(本書を含む「機械学習プロフェッショナルシリーズ」全体がそうであるが)素晴らしい書籍です。

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こちらも中高生におススメ

『昭和史』

半藤一利(平凡社)

学生時代に読んで以来、何度も読み返してしまう書籍。体系的に日本史の授業で学べない昭和史に触れられるとともに学ぶべき歴史的教訓も示唆が深いですが、それ以上に、詳細な筆致から多様な人物が歴史を紡いでいく様子が感じられて、自らも貢献できるような存在になりたいと感じさせる迫力があります。

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