犯罪社会学

18歳成人問題として「『少年法』適用の低年齢化」について考えてみた ~高い貧困率なのになぜ?

『若者の気分~少年犯罪の〈減少〉のパラドクス』を読んで見えたことを踏まえ、犯罪社会学者・土井隆義先生と開成中学・高校生が語り合う

土井隆義先生

筑波大学 社会・国際学群 社会学類/人文社会科学研究科 国際公共政策専攻

 

第3回 低成長時代を生きた親子には、対立は少ない

なぜ今の10代の若者は、親への不満がなくなったのでしょうか。

 

世代を分けると、皆さんは、「新人類ジュニア」の世代の次くらいにあたります。皆さんの親世代は、「新人類」の世代か、その次くらい。おじいちゃん・おばあちゃんの世代は、「戦後」世代になります。おじいちゃん、おばあちゃんたちは、まだ伝統志向が強かったのですが、皆さんの親の世代である「新人類」と、皆さんの「新人類ジュニア」は、どちらも伝統離脱的な価値観が強くなっています。しかし、不満が減った理由はそれだけではありません。そもそも親子間の価値観のギャップ自体が小さくなっているのです。

 

この違いは、それぞれの世代が「社会のどんな段階を生きてきたのか」という観点から読み解けます。

 

 

3つの世代がそれぞれ思春期だった時期は、高度成長期、安定成長期、低成長期に対応しています。皆さんの世代は低成長期、親たちの世代は安定成長期、祖父母の世代は高度成長期です。社会の成長率が著しく、変化の激しかった成長期の親子は、安定期と低成長期の親子に比べて、世代間ギャップが大きいのです。

 

それに対して現在は、世代間のギャップがどんどん小さくなってきました。同じことは、親子間だけでなく、学校の教師と生徒の間にも言えますし、地域のおじさん、おばさんと、皆さんの関係についても言えます。

 

こうして子どもたちの世界から共通の敵が消え去ったことが、友達関係のあり方を大きく変化させます。もはやそこには、対抗文化が形成されなくなり、それが少年犯罪の減少につながっているのです。友達関係の同調圧力は強くても、それが非行にはつながっていかないのです。

 

少年犯罪の少なさは、校内暴力事件の少なさにも反映しています。校内暴力の事件数も、また検挙補導人員数も、校内暴力が盛んだった昭和の頃と比べると、現在は激減していますが、とりわけ人員数の減少率が大きいのです。かつての校内暴力は、社会や社会に対する反抗だったので、徒党を組んで事件を起こしていました。しかし現在では、大規模なグループを組むことが減っているのです。