音楽情報科学/処理(知覚情報処理)

まずはソフトを使って、現象を音に変換し音を操作する楽しさを体感してみて

前澤陽さんインタビュー

ヤマハ株式会社

◆前澤さんの研究について教えてください。

 

人間と自然に合奏するためのコンピュータを作っています。一緒に息の合った合奏をするためには、コンピュータも人間の動作や発する音を見たり聴くことで適切に応答をする必要があります。これには、(1) 人間の演奏を察知する、音や映像の解析技術、(2)楽譜を見た時に適切な挙動を予測する音楽自体の解析技術、(3) 人間が気持ちよく応答できるよう、人間の心理を突いたモデル化などがとても大事になります。

 

この分野の面白みは、コア技術として品質の高い精度が求められることだけでなく、分野横断的な点です。画像や音の解析だけでなく、音楽自体や、人間自体を知ることでようやく開拓できる問題です。

 

そして、最終的に人間が「気持ちよく」合奏ができることを目標にしています。そのために、自分自身が音楽情報処理の基礎研究を行いつつも、演奏者に触ってもらいながら数式を改良したり、画像解析や心理学の知見を統合したりすることで、よりよい技術を作っています。

 

◆研究テーマをどのように見つけるのか、教えてください。

 

テーマに至るきっかけには二つあります。まず、私自身が楽器を演奏することもあり、自分が必要だと思っているものを作っています。また、プロの研究者として、知り合いに困りごとを聞く中でテーマを見つけることもあります。 後者の場合、自分が専門でない分野の人と積極的に話すことが重要です。

 

研究の発想ですが、私は問題の直感的な理解を大切にしています。研究は大抵の場合いろいろな近似に基づいていますが、その近似が人間に要請していることやデータに要請する仮定に対する「気持ち悪さ」を感覚的に理解できると、次の研究の発想が出てくることがあると思います。

 

◆この分野に関心を持った高校生がより深く知るための具体的なアドバイスをいただけますか。

 

PureDataという無償の信号処理ソフトウェアがあるので、音や鍵盤演奏(MIDI)を加工して遊んでみましょう。難しいプログラミングは不要で、データの流れを表現するものです。高校数学や物理で学ぶ現象を音に変換して楽しんでみて、音を操作する楽しさを体感してみてください。凄まじい雑音を発する処理とかもあるので、スピーカーで小音量で音を出すところからやってみましょう。

 

◆高校時代は、何に熱中していたかを教えてください。

 

バイオリン演奏、作曲、プログラミングなどに熱中していました。私の高校では「卒業研究」のようなものがあったのですが、自作した楽音処理プログラムを使って、自作楽音エフェクトを使った、バイオリンとフルートとピアノのための三重奏を作曲したりしました。改めて考えてみると今の活動の原点が凝縮されていました。

 

◆前澤さんの研究がわかるサイト・記事

Y2プロジェクト

 

AIピアニスト バイオリン奏者と共演の腕前(NIKKEI STYLE)

 

AIピアノと人間が合奏 巨匠の演奏、再現へ第一歩(NIKKEI STYLE)

 

ついに人と人工知能が一緒に演奏する時代に!? 「響け!ユーフォニアム」登場キャラと合奏を体験しよう(藤本健の “DTMステーション”)

 

興味がわいたら

『音のなんでも小事典』

日本音響学会:編(ブルーバックス)

音や音楽に関する様々な雑学が書いてあります。この本では、「音」をいろいろな切り口で知ることができるのが魅力です。大学で何をやりたいかいろいろな可能性を考えられる中で、なんとなく音や音楽や声に興味があると思ったら、この本を読むとこの分野が俯瞰できてよいと思います。

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『How To Solve It いかにして問題を解くか』

G. ポリア 柿内賢信:訳(丸善)

「問題の解決」に対する考え方を体系化した本です。難しい課題に直面したときのほぐし方の指針にもなり、どんな人にもオススメできます。

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『サピエンス全史』

ユヴァル・ノア・ハラリ 柴田裕之:訳(河出書房新社)

「実体の無いものを信じる」という人間の特性を軸に人類史を論じた本です。今の常識の背後にある前提を考えるキッカケとなると思い、人類に寄り添ったものを作りたい人にオススメできます。

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『音楽機械劇場』

渡辺裕(新書館)

音楽とテクノロジーの歴史に関する本です。音楽とテクノロジーが互いに互いを育ててきたことがわかる本です。「芸術表現や文化を変えるようなテクノロジーを作りたい!」と考えている人に、文化と技術の歩み寄りの重要さを知ってもらうため読んでいただきたいです。

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