中卒のカリスマの「ネガポジ就活術」
~貧困、50回の転職を乗り越え、若者の就職支援NPOを設立
黒沢一樹さん NPO法人若者就職支援協会 理事長
第2回 就職できない若者たちに対する怒りが出発点
~若者支援のNPOを設立

2007年、「NPO法人若者就職支援協会」を起業して、今年で7期目になります。事業の柱には「就職相談」「企業支援」「(定時制高校の)キャリア教育」の3つがあります。それ以外の新しい柱としては、アジアの就活支援ということで、留学や就活の支援を始めています。
すべてに共通する我々のミッションとして、若者が精神的・経済的な「自律」することをめざしています。自立でなくあえて自律という言葉を使っています。自分で考え、行動する若者を増やしたいという思いを持って活動しています。例えば、就職の相談はしますが、就職の斡旋は一切、していません。後で事例をあげて述べますが、就職に悩む若者たちの話を聞き、メンタル面から具体的な就活方法までをアドバイスするカウンセリング的な手法で、就職の相談を行っています。
NPO起業のきっかけは、8年前の就職難でした。あるテレビの報道番組で、そこに出ていた就活中の大学生が、タバコをふかしながら言うのです。「ぜんぜん勤め先がないんですよ」と。だんだん腹が立って来ました。中卒の私でさえ就職できているのに、一般の大学生の就職先が見つからないとはどういうことだ。そういうふうに適当な就活をする学生がいる反面、一生懸命頑張っても内定がもらえない人間も大勢しました。そこで考えました。彼らに対して、自分の転職体験を伝えることができれば、就職に導けるのでは、と。
こんなことを言うと、正義感に燃えた、いい人のように思われるかもしれません。でも残念ながら私はそうした人間ではありません。ただひとつ言えることは、就職できない若者たちに対する怒りのようなものがありました。起業の出発点は私の場合、常に「怒り」です。出発点の動機は不純であっていい。初めての就職で板前になったのも「料理の鉄人になってテレビに出演してモテたい」だった(笑い)。動機は不純、そして成長は不快(怒り)からと思っています。
社会起業を起こすからといって、自分が食えるということをまず考えることは、とても重要と思います。大事にしてほしいのは自分が幸せになること。でも1人では生きていけませんから、自分が幸せになるためにも人と接しますよね。その時、人によいことをするでしょう。そこが大事なところで、究極の利己は、利他になると思うんです。
興味がわいたら

『最悪から学ぶ 世渡りの強化書』
黒沢一樹(日本経済新聞社)
父親が4人、最悪の貧困、継父からの虐待に苦しんだ幼少期…。中卒でブラック企業、ホスト、調理師などの職を転々とした(転職50回! )少年から青年期…。さらには原因不明の病気や自殺未遂…。私の「最悪な」体験をもとに、「ネガティブ要素をポジティブに転化させる思考法」=「ネガポジ・メソッド」を考え出しました。私の生い立ちを紹介し、「ネガポジ」メソッドとは何か、前向きに生きるためにはどうすればいいかなどを、わかりやすく解説した一冊です。
・過去の自分とどうやって対峙すればいいのか?
・コンプレックスを活かすにはどうすればいいのか?
・失敗体験をプラスの経験へ変えるにはどんな方法があるのか?
といったことを考え、人生の選択肢を大きく広げるための観点が書かれています。
以下は、高校生に特に読んでほしい箇所です。
・最悪でなければ、それで幸せ P34
・「かんちがいスイッチ」を押せ P35
・ビジョンに酔うな P72
・依存の話 P144
・普通は怖い言葉 P154
・「無関心ゾーン」にチャンスがある P163
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『ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所』
青砥恭(ちくま新書)
「高校中退」を語らずして貧困問題を語ることはできません。中退者を追跡調査した書で、日本の貧困の闇が事例を交えて書かれています。
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