この仕事をするならこんな学問が必要だ<医薬品業界編>

遺伝子治療薬、抗体医薬品など、最先端創薬の開発研究が目白押し!薬学に加え情報処理の知識も求められる

アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社

薬事部 小池敏さん

 

第2回 がん診断をスピードアップするコンパニオン診断薬など、創薬が飛躍的に進歩!

21世紀の創薬の大きな変化は、遺伝子治療をはじめ、患者の病巣に遺伝子あるいは分子レベルで作用して治す創薬技術が飛躍的に進歩したことです。アムジェンも例外ではなく、強みの1つに抗体医薬品があります。抗体医薬品とは、生体が持つ免疫システムの主役である抗体を主成分とした医薬品です。1つの抗体が1つの標的(抗原)だけを認識する特異性を利用するのです。

 

もう1つの強みは、個々人の遺伝子変異から分子レベルでターゲットを決め治療する、遺伝子治療です。当社では、特定の遺伝子疾患を捜し出し、がん、高脂血症等を治す治療薬を開発しました。遺伝病から、民族レベルである特定の遺伝子が欠損しているグループがある、といったことがわかるのです。そういった遺伝情報のデータベースも非常に大事になってきます。

 

さらに有望なものとして、ターゲットとするがん細胞までピンポイントで薬を運ぶドラッグデリバリーシステムがあります。薬の宅配便と言われている、最近注目されている新しい治療法です。

 

4つ目の強みに、ウイルスにヒトの遺伝子の一部を取り込ませ、がん細胞を叩くウイルス療法があります。ヘルペスウイルスの中に、抗がん作用を持つ遺伝子を入れて、そのウイルスをがん細胞に取り込ませ、がん細胞を叩くというわけです。ウイルス療法は、ターゲット療法とも呼ばれており、今後大変有望な方法です。

 

最近のもう1つの画期的なことは、がん患者のがん種類別に診断する技術がスピードアップしたことです。がん遺伝子を個別に迅速診断し、各々の遺伝子異常に適合した薬を決定し適切な投薬量を決定するために、実際に投薬する前に行う検査で使用する薬のことで、これをコンパニオン診断薬といいます。1人1人の患者に合った薬をいかに作るかということが大事になってくるわけです。

 

注目されるiPS細胞は、まだもう少し先に医療現場に登場することになるでしょう。iPS細胞はアルツハイマー病、眼の病気、難病の治療などの再生医療に期待されていますが、実用化まであと5~10年はかかるでしょう。

 

21世紀の創薬の進歩の中で、高校生に知っておいてほしいことがあります。副作用を軽減し、ターゲットを絞ったこの15年の進歩は、いくら強調してもしすぎることはない!ということです。薬学部の6年制移行を含め、仕事に携わる魅力も、それに合わせてとてつもなく大きく変化してきています。

 

興味がわいたら

『黄金のDNAらせん』

新井賢一、黒川清、野口照久、吉田文紀(日本経済新聞社)

入門書レベル。遺伝子工学とバイオテクノロジーの現状と今後の展望について解説している。

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『Nature 科学 系譜の知』

竹内薫:監修(実業之日本社)

過去10年間に科学雑誌『Nature』に掲載された最先端の生命科学や医学情報を分野毎に紹介。専門的な領域をわかりやすく解説している。

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『実験医学バイオサイエンス シリーズ』

(羊土社)

発刊は古いが、細胞生物学や分子生物学を基礎から臨床応用まで解説。入門書として。

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『動的平衡』

福岡伸一(木楽舎)

生物学の進歩を生物学者と第三者の両方の視点から解説している。読み物としておススメ。

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