いじめ問題を考える

尾木ママが高校生と語った なぜ、いじめはなくならないの?

TVで人気の教育評論家 尾木ママこと尾木直樹さんは、長年の経験に基づき、多くの場面や書籍で、どうしたらいじめをなくすことができるか、いじめ問題の解決法を提案しています。

 

左は、『尾木ママの「脱いじめ」論』(PHP文庫)。尾木ママによれば、いじめ問題の解決のポイントは3つ。
(1)加害者にやめさせること。加害者のゆがみをいやすこと。
(2)生徒が主役で克服すること。君たちが主役。
(3)LINEのルールを決めよう。

 

「現代では誰でもいじめの加害者にも被害者にもなりえますし、簡単に入れ替わります。中高生のキミたちには、いじめについて、特に現代のいじめの特徴と、な ぜ思春期ほどいじめはエスカレートしやすくなるのかを、発達段階の特性から知ってほしいと思います。それが、『脱いじめ』を考える第一歩になることでしょう」

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「愛知サマーセミナー」では、教育評論家の尾木ママこと尾木直樹さんが、高校生といじめについて議論しました。(2013年7月14日実施) 

 

(※愛知サマーセミナー:3日間で1000講座を超える、市民参加型の学びの祭典。毎年夏休みに名古屋市内の高校で実施。高校生が企画・運営する講座も多数)

vol.1 今のいじめの特徴とは(1) ~いじめる側、いじめられる側、どっちにも簡単になってしまう

女子高校生A

小学校のとき、いつも生徒の揚げ足を取って大声でからかう先生がいて、生徒も特定のだれかをからかうようになりました。いじめのターゲットは毎回変わったり、エスカレートしていきました。それ自体が遊びみたいで、私もいじめを受けました。

 

女子高校生B

中学に入ったとき、仲良くなった子からある日突然いじめが始まったんです。日が経つごとにいじめグループができるようになり、エスカレートしました。「なんで学校に来るの?」と言われたり、美術の時間に作った私の本棚が床に投げ捨てられていたり…。

 

女子高校生C

小学生のころ、仲のよかった友だちのノートが落ちていました。拾って見ると、赤字で私の名前と「キモイ」「死ね」と書かれてあった。それが受け止められなくて、号泣しました。いじめた側の経験もあります。仲良しグループがあってその中の一人がいじめを受けたんですが、その子は私が最も親しくしていた子でした。でもグループからはずされてしまう恐怖感があるから、いじめを傍観していたというか、見た目はいじめをして、裏で仲良くしていました…。

 

尾木ママ

今ね、3人の高校生が語ってくれた話で共通するのは、いじめの被害にあったり、あるいは積極的とまではいえないまでも加害者側に入っていたりするんですね。今のいじめの大きな特徴はなにかというと、いじめ―いじめられが、常に流動的に、どっちにでもなれる状況にあるってことなのよね。

 

2010年に「国立教育政策研究所」がまとめた「いじめ追跡調査」という報告書があるの。小学4年から中学3年までの6年間、約590名の同じ生徒に「あなたは今、いじめを受けていますか?」というアンケート調査をずっと続けたというデータがあるんです。

 

6年間のどこかでいじめを受けた経験のある子は何%いたと思いますか? 90.3%なんです。そして、加害経験のある子は88.9%いました。さらに、日本のいじめの場合、約8割がクラス内で起きているんです。同じクラスで同じ空気を吸って、仲間であればあるほど、密接な関係性の中でいじめは起きるんです。

 

尾木直樹さんが中高生に贈るBooks

『古代への情熱―シュリーマン自伝―』

シュリーマン 訳/関楠生(新潮文庫刊)

言葉を探求する情熱と語学の学び方がヒントになります

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『人生論ノート』

三木清

(新潮文庫

人生を悩み考える羅針盤

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『論語』

孔子(岩波文庫)

声に出して読むと、人生が見えてきます

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