いじめ問題を考える

尾木ママが高校生と語った なぜ、いじめはなくならないの?

vol.2 今のいじめの特徴とは(2) ~男子は中2の6月が一番危ない?

学校でいじめをする側の心理を考えてみましょう。いじめる側に回った子には、本当はいじめたくないんだけど、みんなの手前、いじめざるを得なかったということがよくあります。こういう心理を「ピアプレッシャー(仲間圧力)」と言います。仲間と同調していないと生きていけないという圧力ですね。

 

つい最近(2013年)も名古屋で、中学2年の男子生徒が、いじめが原因と見られる問題で、自殺をするということがありました。その子の書いた遺書、お読みになりましたか。本当にやさしい子なんですよ。「うそをたくさんつく。提出物も出さない。そんな自分がいやになりました。こんな自分を変えられなくて申し訳ないです」と、自分を責めているんです。自分がいじめられていることに気づかなかった大人に「後悔しないでください」って書いているんです。最後に「ありがとう」って書いている。

 

こういう行き場のない子が自殺をするんです。死ぬほどの勇気があるのなら生きろという大人がいるけれど、とんでもない! 死んだほうが楽だから、その子は自殺するんです。心がやさしいほど、その子はつらいんです。

 

中学1、2年の男の子は本当に壊れ物のガラスのように危険なんです。女子の場合、小学校5、6年でちょっと鍛えられていますが、女子より発達の遅れる男子の場合、中2の6月が最も危険なんです。これはもう方程式と言っていいくらいです。

 

今気になる問題に、中高生の間で爆発的に広がっているLINEがあります。今はLINEで24時間、友人同士繋がっているでしょ。顔がわかりあった中で、返事を返さなきゃいけないというプレッシャーね。思春期の自分に向き合わなきゃいけない時期に、こんなものを持ってしまったら、発達は確実に遅れてしまいます。でも日本の親も教師も、その危険性に気がついていないんですね。

 

思春期って自分が見え始めます。自分の体が変化していくので、あれ?と思ってビックリします。そして今度は心が見えてくる。一番身近な先生や親に、ムカつき始める。そういうふうに人が見えてくると同時に、自分も見えてくる時期です。亡くなった名古屋の中学生も、そういう中で、ぼくってだめなのかなと、ものすごい葛藤していたんです。そういう子には、あんたってそういうふうに自分が見えるようになってきたんだね、たいへんな成長だねと言ってあげればいいんです。


そうすれば自分っていうのは捨てたもんじゃないんだ、これでいいんだと自己肯定する気持ちが育ってくるんです。


尾木直樹さんが中高生に贈るBooks

『古代への情熱―シュリーマン自伝―』

シュリーマン 訳/関楠生(新潮文庫

言葉を探求する情熱と語学の学び方がヒントになります

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『人生論ノート』

三木清

(新潮文庫

人生を悩み考える羅針盤

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『論語』

孔子(岩波文庫)

声に出して読むと、人生が見えてきます

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尾木直樹さんの本

『尾木ママの「脱いじめ」論』

尾木直樹(PHP文庫)

尾木ママによれば、いじめ問題の解決のポイントは3つ。
(1)加害者にやめさせること。加害者のゆがみをいやすこと。
(2)生徒が主役で克服すること。君たちが主役。
(3)LINEのルールを決めよう。

「現代では誰でもいじめの加害者にも被害者にもなりえますし、簡単に入れ替わります。中高生のキミたちには、いじめについて、特に現代のいじめの特徴と、 なぜ思春期ほどいじめはエスカレートしやすくなるのかを、発達段階の特性から知ってほしいと思います。それが、『脱いじめ』を考える第一歩になることでしょう」

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