がん治療

高校生が知っておきたいがんの基礎知識~がん細胞を狙い撃ちする「がん分子標的治療」とは?

越川直彦先生 神奈川県立がんセンター臨床研究所/東京大学医科学研究所

 【BOOK】『がん遺伝子の発見 ~がん解明の同時代史』

黒木登志夫(中公新書)

がん遺伝子の研究を始める学生は読んでおくべきであろう一冊。がん遺伝子と抑制遺伝子の発見をめぐって熾烈な競争を繰り広げる研究者たちのドラマと、徐々に明らかになるがんの本態を、東京大学でがん研究を行っていた黒木先生自らのがん体験をふまえて描いています。iPS細胞研究の山中伸弥先生を、不遇の時代に力づけた本とも言われています。

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第1回 どうしてがんにかかるの?~がん細胞増殖の遺伝子にはアクセル役とブレーキ役がある

越川直彦先生
越川直彦先生

みなさんのご家族、親族にも、がんにかかったという人はおられるのではないでしょうか。「日本人はどのような原因で死んでいるのか」という厚生労働省のデータがあります。それによると、約28%の人ががんで死亡しています。もう少し詳しく見ると、男性が一生の間にがんになる確率は55%、つまり男性の2人に1人はがんになる。女性の場合、3人に1人ががんになります。男性に多いのは、肺がん、胃がん、大腸がん。女性では乳がん、大腸がん、胃がんです。

 

国民の健康を脅かすがんが増え、危機感を持った国が絶対がんを治しましょうと平成19年に「がん対策推進基本計画」を策定しました。しかし、なかなかがんは治りません。平成26年度からがん研究10ヵ年戦略も始まり、厚生労働省、文部科学省、経済産業省の3省庁がスクラムを組んだ大きな研究が始まりました。これまでに行われているがんを治す方法の研究だけでなく、がんの早期発見・早期診断するための研究が加わりました。また、今まで見過ごされていた小児がんや患者数の少ない希少がんの研究へも取り組み、がんで死亡する人の数を減らすことを目的としています。がんは今、日本人の国民病と捉えられているのです。

 

喫煙と肥満が一番の要因

がんになる要因は、環境中の発がん物質への暴露、生活様式の違い、肝炎ウイルスのようなウイルス性のがん、家系による遺伝性のがん、放射線によるがんなどがあります。その中でも一番大きな要因は、生活様式の喫煙と肥満です。全体を100%としたときそれぞれが30%を占めます。喫煙は遺伝子を傷つけるため、喫煙者は多くのがんのリスクファクターとなっています。一方、肥満によるがんは成人期の食事などが原因になっています。いわゆるメタボです。がんになった人の実に60%が、喫煙か食事(メタボ)が原因でがんになっていると言うことです。

では、どうしてがんになるのでしょうか。これまでの研究から、多くのことが明らかとなっています。喫煙や肥満により、正常細胞の遺伝子が壊れることによって、がん化が始まります。遺伝子が壊れることを遺伝子が変異すると呼びます。今は人の体の全遺伝子は解読されていますので、壊れた遺伝子を見つけることができます。80、90年代、がん化を促進する遺伝子と抑制する遺伝子が発見されました。それぞれ、がん細胞を増殖させるためのアクセル役とブレーキ役です。

健康な体の人でも1日に数千個、がん細胞はできています。でも免疫細胞というものが、がんを抑制することができます。ところが例えばタバコを吸うことによって、アクセル役とブレーキ役のがん遺伝子のバランスが崩れ、がん細胞の増殖が優性となり、がん細胞が次々と増えてしまうわけです。

 

<つづく>

第2回 アンジェリーナ・ジョリーさんの勇気ある決断 ~乳がんを抑制する遺伝子の発見

(2014年6月6日 神奈川県立柏陽高校「サイエンスワークショップ」での講演より)

 

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『がん遺伝子の発見 ~がん解明の同時代史』

黒木登志夫(中公新書)

がん遺伝子の研究を始める学生は読んでおくべきであろう一冊。がん遺伝子と抑制遺伝子の発見をめぐって熾烈な競争を繰り広げる研究者たちのドラマと、徐々に明らかになるがんの本態を、自らのがん体験をふまえて描く。iPS細胞研究の山中伸弥先生を、不遇の時代に力づけた本とも言われる。黒木登志夫先生は、東京大学でがん研究を行い、岐阜大学の学長も務めた。黒木先生による『健康・老化・寿命』(中公新書)もおすすめ。

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『知的文章とプレゼンテーション ~日本語の場合、英語の場合』

黒木登志夫(中公新書)

上記と同じく黒木先生が、卒業論文から学会発表まで、説得力あるドキュメントと惹きつけるプレゼンテーションの極意を指南する。文系、理系を問わず必読。グローバル化の現在、英語の学び方についても実践的に説く。

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『がん基盤生物学 -革新的シーズ育成に向けて』

清木元治、秋山徹、石川冬木、内海潤、近藤豊ほか(編集)(南山堂)

日本を代表する、独創的ながんの基礎研究を展開してきた研究者たちによる、研究動向や最新成果の紹介。専門的。

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『大学教授がガンになってわかったこと』

山口仲美(幻冬舎新書)

埼玉大学名誉教授であり、明治大学の先生として、『世界一受けたい授業』などテレビでも活躍していた国語学者の山口先生の、ガン患者体験を包み隠さず書いた本。大腸ガンは、早期発見し、手術もうまくいったのだが四年後にすい臓がんを発症。読者に「賢いがん患者」になる秘訣を説く。

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『転移』

中島梓(朝日文庫)

著名な作家(栗本薫という名でも執筆)であった中島さんは、すい臓がんの手術後、肝臓に転移しているのが判明。抗ガン治療を続けて以来、意識を失う直前、まさしく命尽きるその瞬間まで書き綴った執念の闘病日記である。

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