みんなのおススメ

猟奇的殺人鬼の物語はラストのどんでん返しにしてやられる

『ハサミ男』殊能将之

茂木良輔くん(栃木・佐野日本大学中等教育学校)

『ハサミ男』(講談社文庫)
『ハサミ男』(講談社文庫)

首を絞めて殺害した後、ハサミを首に突き刺すという、猟奇的殺人を繰り返す通称「ハサミ男」。犯行に使うハサミはごく普通の市販品で、先端が丸まっているためによく刺さりません。そこでハサミ男は、それを棒やすりで研ぎアイスピックのように鋭く尖らせます。ちなみに刺す場所は、喉仏のすぐ脇にある柔らかくて深々と刺せるところ。ハサミ男は用意周到で、異常なこだわりを持っている人物です。

ハサミ男はすでに二人を殺していて、三人目のターゲットとして女子高生を見つけ着々と準備を進めていました。そして、そのターゲットを殺そうとしたその日、すでに彼女は何者かによって殺されていました。しかも、ハサミ男の犯行を模した方法で…。ハサミ男は、自分が捕まらないためにも犯人を探し始めるのです。

私は推理小説の面白さは二つあると思います。一つは、読者が「犯人は誰なのだろう?」と推理しながら読み進めていくところ。一人ひとりの登場人物の人柄や行動を細かくチェックし、「こいつが犯人だ」「いや、あいつが犯人か?」と思いを巡らせ読み進めていくうちに、また新たな手掛かりが現れて…。読者が探偵となって小説の中で事件を解決していく、これが推理小説の魅力の一つであると思います。

茂木良輔くん
茂木良輔くん

二つめは、ラストのどんでん返しです。推理小説では、予想していた結末とは全く違う、思いもしなかった展開になることがありますが、読者にとってそれは、作者にだまされて悔しいというよりは、むしろ「作者にうまくやられたなあ」といった快感にも近い感覚になります。『ハサミ男』のラストでは視点が180度変わるようなできごとが起こり、読み終えた後、この「作者にうまくやられたなあ」といった感想を皆さんが持つと思います。


[出版社のサイトへ]

<全国高等学校ビブリオバトル関東甲信越大会予選の発表より>