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襲いかかる悲劇を予知した絵? 怖い22作品を徹底解説

『怖い絵』中野京子

中島恵理さん(東京都・共立女子第二高校1年)

『怖い絵』(KADOKAWA)
『怖い絵』(KADOKAWA)

ゴヤが描いた『我が子を食らうサトゥルヌス』。背景は真っ黒に塗りつぶされていて、男性が子どもを食べています。血がしたたり、男性の口は大きく開かれ、目もとても怖いです。また、ジェリコー作『メデューズ号の筏』は難破した筏の絵で、上の方では男性が助けを呼ぶ姿が描かれていますが、下に行くにつれて死にかけている人などがいて、いちばん下には死体がごろごろ。こんな文字通り怖い絵についてどこがどう怖いのか解説された本です。

一方で、「えっ、この絵のどこが怖いの?」というような絵もあります。有名なところではドガ作『エトワール、または舞台の踊り子』という作品。バレリーナが踊っている絵です。それから、ホガース作『グラハム家の子どもたち』では、居間のようなところでゆったりとしている4人の子どもたちが描かれています。さてどこが怖いと思いますか。

私が一番気に入っているのがボッティチェリ作『ナスタジオ・デリ・オネスティの物語』。宴の席に裸の女の人が犬にかまれながら乱入してきて、その後ろには、その女の人を追う剣を持った騎士がいるという、よくわからない絵です。


変な人たちが乱入してきたので、宴会をしている人たちはびっくりしているのですが、一人だけ「まあまあ皆さん落ち着いてください」とでも言っているふうの男の人がいて、彼がこの絵の主人公です。この絵には元となる物語があります。絵そのものはそれほど怖くありませんが、その物語の内容が、よく考えてみるとすごく怖いんです。私の解釈では「ストーカーの意地」といった感じのお話です。

中島恵理さん
中島恵理さん

怖い絵22作品について、絵そのもののことだけでなく、作者や、その絵が描かれた頃の時代背景、また、中野京子さん独特の考えも書かれていて、なるほどと思う内容です。さきほどの、ホガース作『グラハム家の子どもたち』では、4人の子どもたちのうちの1人が乳母車に乗っていて、その乳母車には小鳥が羽ばたいている飾りがついています。実は西洋では、小鳥が羽ばたくというのは魂が抜けるなどの意味があり、この絵が完成した後、この子どもに大きな悲劇が襲いかかるのです。そういうことが気になる方は、ぜひ読んでみてください。

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<全国高等学校ビブリオバトル関東甲信越大会予選の発表より>

さ・ら・に・中島恵理さん おススメの3冊

『儚い羊たちの祝宴』
米澤穂信(新潮文庫)
とにかく黒い!話は五話。すべて日本の上流階級の話です。どれもネタバレになるので詳しく書けませんが黒いです。私は四話目の話が気に入っています。

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『B.A.D.』
綾里けいし イラスト:kona(エンターブレイン)
現代の日本が舞台のファンタジーですが、昔の日本のように思えてくる独特な世界観です。心の闇や描写などが、鮮明に書かれています。

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中島恵理さんmini interview

好きなのは

好きな作家は、米澤穂信先生です。好きなジャンルはファンタジーと学園モノ、ドロドロした話ですね。


小学生のころ

小学3、4年の頃、読書が好きになりました。『マジック・ツリーハウス』シリーズにはまって、それから一気に読書量が増えました。


2014年イチオシ

『世界堂書店』(米澤穂信編/文春文庫)

その中の『連鎖』(蒲松齢)と、『石の葬式』(パノス・ネルネシス)が面白かったです。

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これから

米澤穂信先生の新刊が一番読みたいです。ジャンルでいえば、今まであまり読んでいなかったミステリーや評論などを読みたいです。