化学嫌いの人も魅かれるはず。いかに美しく撮り、面白く説明するかに賭けた図鑑
『世界で一番美しい元素図鑑』セオドア・グレイ
高橋美佳さん(千葉県立検見川高校)

「スイヘイリーベボクノフネナマガールシップスクラークカ」
これは元素の順番を覚えるための語呂合わせです。でも、順番は覚えているけれど、元素一つひとつが何かあまりわからないな…そんな人におすすめなのが『世界で一番美しい元素図鑑』です。
元素図鑑と聞くと、専門的な言葉を使って長ったらしく説明していると思われそうですが、そんなことまったくありません。著者のセオドア・グレイさんは、太った磯野波平さんみたいな方ですが、この人が書く説明がとても面白いのです。元素のことが大好きと豪語しているのにも関わらず、元素のことをけなしたりもします。例えば、ホウ酸を誰にも尊敬されない名前だと言ったりしているのですが、そんなことを考えるのがおかしいですよね。小学生が読んでも面白いと思います。
図鑑というのは、それがどんな色をしているか、どんな形をしているかなどが大体わかれば良しとしているものが多いなか、この元素図鑑はすごい。題名にある通り、美しく元素を撮るということに命を賭けています。「世界で一番美しい」というのはしゃくに障りますが、読み終えれば納得です。
例えば、酸素が見えるという人はいないと思いますが、この図鑑では、気体たちの融点、沸点を駆使して、私たちに見せてくれています。酸素の場合、マイナス183℃になると液体になります。そこで酸素の色がわかるのですが、空の青、海の青、どれとも違う、酸素にしか出せない青です。だから、私は酸素の色はこうですよと説明することはできません。ぜひこの本を手に取ってください。
写真一つひとつは、ダイヤモンドのようにきれいに輝いています。普通に見ただけでは絶対にきれいとは思えない鉱物、気体、液体が、セオドア・グレイさんの手にかかったら、まるで宝石みたいです。そして、セオドア・グレイさんの話がとても面白く、元素図鑑なのにクスッと笑えるのです。1元素につき「3くす」はあります。
私はいくつか好きな元素を見つけました。例えば、元素番号83番のビスマス。ビスマスって、冷却すると虹色に輝いて本当にきれいです。ビスマスの1つ前の元素が鉛で、一つ後の元素がポロニウムで、2つとも死に至るほど有毒なのに、それに挟まれたビスマスは胃腸薬に使われているという点もいいですね。

この図鑑を読むと、私がこうやって生きているのは、ここに載っている元素たちのおかげなんだなと思います。何だかよくわからない酸素やホウ素や、知らない名前のものもあるけれど、それらのおかげで自分は今、生きているんだなって思えるのです。
みなさんも、この元素図鑑から自分の好きな元素を見つけてください。化学嫌いの人でも絶対に見つかります。そして、元素のことに興味を持ち、化学のテストでいい点数をとってくださいね。
<全国高等学校ビブリオバトル関東甲信越大会予選の発表より>
さ・ら・に・高橋美佳さん おススメの3冊

『植物図鑑』
有川浩(幻冬舎文庫)
恋愛小説です。ずっとキュンキュンします。恋愛小説が好きな女の子たちにおススメです。
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『ここに死体を捨てないでください』
東川篤哉(光文社文庫)
『謎解きはディナーのあとで』が知られる、ユーモア本格ミステリーを書く東川さんのイイ所がつまっている本。感動もあり、笑いはもちろんあり、のミステリーです。
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『陰日向に咲く』
劇団ひとり(幻冬舎文庫)
6人の落ちこぼれたちが、社会復帰するまでの道のりを描いた小説です。私の好きな話は「拝啓、僕のアイドル様」。売れないアイドルが好きな青年の話で、ネットに何百もコメントを別人になって書き込んだりして、バカバカしいけれど、本人は本気でアイドルの女の子のためになっていると思っている。そんな青年がどうやって社会復帰をするのか…。見ものです!
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高橋美佳さんmini interview
小学生のとき
『ミルキー杉山のあなたも名探偵』シリーズがお気に入りでした。ミルキー杉山さんが住んでいる町でおこる摩訶不思議な事件を、ミルキー杉山さんが解決していく話です。
影響本
『ありがとう3組』。乙武洋匡さんが自分の経験をもとにして書いた小説。障害を持った教師とその生徒たちの物語。障害のことについて考え方が変わりました。
2014、印象に残った本

奥田英朗さんの『空中ブランコ』(文春文庫)です。今まで自分が読んできた小説とはまったく違い、ギャグあり涙もありですごく面白かったです。主人公の伊良部さんの人柄が最高です!!
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これから
『引き出しのラブレター』(新堂冬樹)と『図書室のキリギリス』(竹内真)を読みます。