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アンパンマンの作者が、身近な幸せを教えてくれる

『わたしが正義について語るなら』やなせたかし

榎一真くん(島根県立浜田商業高校3年)

『わたしが正義について語るなら』(ポプラ社)
『わたしが正義について語るなら』(ポプラ社)

皆さんは「正義の味方」と聞いたら、何を思い浮かべますか? 仮面ライダーやウルトラマン、戦隊ヒーローなどでしょうか。この本の著者である、やなせさんのキャラクター、アンパンマンも正義の味方です。「アンパンマンなんて子どもっぽい」と言われそうですが、そんなことはありません。実はアンパンマンってすごく奥が深いんです。

妹がテレビでアンパンマンを見ていたときのことですが、彼女は「アンパンマン、かっこいい!」と言いました。なぜアンパンマンのことをかっこいいと言ったのかは、この時の僕にはわかりませんでした。

そんな時に出会ったのがこの本です。タイトルを最初に見た時に、「正義って一体なんだろう?」と思いました。正義って、雰囲気としてはわかるけど、具体的に何?と聞かれたら難しい、曖昧なものです。やなせさんも初めは「正義というものはあやふやなもの」だと感じていたそうです。

著者のやなせさんには弟さんがいて、兄弟で戦争を体験しています。その時の体験から「正義」というものについて考えるようになったそうです。僕はこの本を読んで、自分の信じる正義というものがはっきりしました。そうすると何がいいかというと、自分や友人、まわりの人がやっていることが正義なのか悪なのか、アンパンマンの立場なのか、それとも、ばいきんまんの立場なのか、判断できる。これを読めば、誰もが正義の味方になれるんです。

例えば皆さんは、昨日の晩ご飯には何を食べましたか? おとといの晩ご飯は何でしたか? 食べるものがあることって、今の僕らにとっては当たり前ですが、昔の人からすれば当たり前ではありません。特に戦争中は食べることができず、戦争中に亡くなった方の約60%は、飢えが死因だったそうです。家に帰ると温かいごはんがあって、温かいお風呂に入って疲れを取って、ふかふかの布団で寝る。今の僕らにとって、それは当たり前です。でも昔の人からすれば当たり前ではないんです。

 

幸せは薄れて、それはいつか当たり前になります。けれど、みんながもう一度、身近な幸せに気付くことができれば、世界はちょっとだけ優しくなると思います。身近な幸せを再確認させてくれたのが、この本です。


榎一真くん
榎一真くん

僕は、本がこの世の中にあって、本当に良かったと感じています。

 

最後に、この本の150ページに書いてある「アンパンマンマーチ」から読みます。


「なにが君の しあわせ 

なにをして よろこぶ 

わからないまま おわる 

そんなのはいやだ!」


やなせさんの語る、正義がわからないまま終わるのがいやだという人は、ぜひこの本を読んでみてください。そして、自分にとっての正義、身近な幸せをもう一度確認してもらえたらいいなと思います。

[本の出版社のサイトへ]


<全国高等学校ビブリオバトル決勝大会の発表より>