みんなのおススメ

日本通のアメリカ人がTwitterで発表した忍者小説

『ニンジャスレイヤー シリーズ』ブラッドレー・ボンド/フィリップ・N・モーゼズ

長澤凌くん(北海道・札幌創成高校2年)

『ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上2』(KADOKAWA エンターブレイン)
『ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上2』(KADOKAWA エンターブレイン)

忍者の話といえば何を思い浮かべるでしょうか。最近なら、おそらく『NARUTO』。もう少し前の世代だったら『NINKU-忍空-』、もっと前なら『忍者ハットリ君』や『仮面の忍者赤影』という人もいるかもしれません。

しかし、今、ネット上で話題沸騰中の忍者といえばこれ、サイバーパンク忍者小説『ニンジャスレイヤー』。最近、アニメ化も決定しましました。この本の内容を一言で表すと、「忍者が出て殺す」…これだけです。妻子を忍者に殺された主人公が、自分も忍者になって復讐を…というストーリー。作者は日本人ではなく、2人のアメリカ人。アメリカ版Twitter上で連載したものを、日本の講談社の翻訳チームが、日本版Twitter上で翻訳連載。それを書籍化したものです。なお、この本ではエピソードが時系列で並んでいません。そのため、どの巻から読んでも大丈夫。前編と後編が別の巻に散らばっていたりするので、どこから読んでも楽しめます。

大きな特徴の1つとして、翻訳チームと作者の強烈な言語センスによる忍殺語と呼ばれるスラングが大量に使われていることがあげられます。例えばアメコミなどでもよく悲鳴が「IIAEEE」と書いてあり、日本語では、たいてい「きゃー」とか「わー」などと訳されています。しかし、この本では「あいえー」とほとんどそのままになっていたりします。

この世界の人たちは平安時代からずっと忍者に支配されてきた設定です。もちろん本当は平安時代には忍者はいませんが、とにかくそんな設定で、この世界に人たちの遺伝子に、平安時代からの忍者の恐怖が刻み込まれているんです。そのため、忍者を見てしまうと、「ニンジャリアリティ・ショック」というショック症状を起こし、「あいえー、ニンジャ、ニンジャ、なんでー」と言って、失神、最悪はショック死です。

この忍者たちは術を使いますが、「術」という表記ではなく「ジツ」。例えば、「カナシバリジツ」といって相手を金縛りにしたり、「カトンジツ」というと、火を噴いたり、触れた相手を発火させたり、バトル要素が強いです。基本的には暗い雰囲気の話が多いのですが、その雰囲気と翻訳の感じが合っていないのです。翻訳を読むと、「ニンジャスレイヤーはケリキックを繰り出して、相手忍者を吹き飛ばした」というような文章で、「ケリキック」なんて言われるので、シリアスなシーンのはずなのに吹き出してしまう…。

長澤凌くん
長澤凌くん

でも、作者はかなり日本を知っているのではないでしょうか。「この世界は末法の世である」などという文章が入ってきます。「末法」というのは仏教用語で、仏の教えがもう完全に尽きてしまった状態のことをいいますが、こんなことは、かなりの日本かぶれの人でも知らないと思います。また、日本の汚職政治や接待営業の様子も書かれていたりして、これはかなり日本を知っている人だなというのがわかります。ちなみに、日本は解体され「キョウト」と「ネオサイタマ」に分かれているという設定。この話の舞台は「ネオサイタマ」で、ニンジャスレイヤーたちが根城にして、たむろしているビルの名前が「マルノウチスゴイタカイビル」です。


 [本の出版社のサイトへ]

 

<2014年度全国高等学校ビブリオバトル決勝大会の発表より>※学年は取材時

さ・ら・に・長澤凌くん おススメの1冊

『都会のトム&ソーヤ』
はやみねかおる(講談社文庫)

きれいごとで片付けられがちな夢を追うことを純粋に書いているところがいいと思います。

 [出版社のサイトへ]

長澤凌くんmini interview

小学生のころ

本を好きになったきっかけは、シャーロック・ホームズシリーズを読んで。


これから

純文学もしくはミステリーを読みたいと思っています。