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ゴキブリは社会性があり、家族思い!? 生き物の意外な一面

『嫌われものほど美しいーゴキブリから寄生虫まで』ナタリー・アンジェ

岩下咲來彩さん(東京都・東京成徳大学高校1年)

『嫌われものほど美しいーゴキブリから寄生虫まで』(草思社)※出版元に在庫無し
『嫌われものほど美しいーゴキブリから寄生虫まで』(草思社)※出版元に在庫無し

皆さんには嫌いな人や苦手な人はいますか? 誰でも一人や二人、「あいつ、いやだな」と思う人がいるのではないでしょうか。では、人ではなく、人以外の生き物だったらどうでしょうか。生き物にも様々な種類がいますが、誰もが嫌いな生き物といえばゴキブリ。私もゴキブリが大嫌いで、もちろん見るのもいやなくらいでした。けれども、本書を読んで、ゴキブリ嫌いが少しだけ改善されました。この本は、様々な生き物にまつわる知られざるエピソードや、面白い生態をわかりやすく解説しているエッセイ集。とてもおもしろいのです。

ゴキブリには、意外にも優しくて家族思い、かわいらしい一面があるということを知っている方は少ないかもしれません。ゴキブリにはほかの昆虫と大きく違う点があるそうです。普通、昆虫というのは、卵から子どもがかえったら、あとは親子別々に過ごしますが、ゴキブリの場合は、卵から子どもが生まれて大人になるまで家族が一緒に過ごし、しっかりと子どもの面倒を見てあげるそうです。また、仲間同士のコミュニケーションも発達していて、とても社会性が高く、ある意味人間に近い生き物だと、作者は言っています。

この本には、逆に人気者の生き物についても載っています。例えばイルカ。頭が良くてかわいらしい水族館の人気者ですが、ちょっぴり怖くて凶暴な一面があるというのです。水族館でおなじみのバンドウイルカは野生において群れを作りますが、その群れの中からメスが逃げようとすると、オスたちがあらゆる方法でメスを引き留めます。その方法が暴力的で、他のグループのオスまでもが協力して、集団で一匹のメスにかみついたり、体当たりしたり、先回りなんかして、まるで集団DVみたいで最低です。このように、普通、人があまり知らないような、生き物の様々な世界に触れることができるのです。

作者も昔はゴキブリが大嫌いだったそうです。けれども、生き物について学んでいくうちに、自分が知らなかっただけで、ゴキブリにはこんなかわいらしく面白い面があるということに気づき本を書くまでになりました。生き物のことを、人間側からの勝手なイメージで判断してしまうのではなく、生き物には様々な面があって、いいところもあるし、人間にとって悪いところもある。そして、それぞれに魅力があるということを、作者は伝えたいのだと思います。

岩下咲來彩さん
岩下咲來彩さん

こういうことは、生き物の好き嫌いだけに言えることではなく、私たちの普段の生活のなかでも言えるのではないかと思います。最初にお聞きしましたが、みなさんにもいやな人、嫌いな人がいると思います。でも、そんな人のいやなところだけを見て嫌うのではなくて、「もしかしたらこの人にもいいところがあるのかもしれない」「私が知らないだけで、案外優しいところもあるのかも」という目で見ていると、ゴキブリにですらいいところがあるのですから、そのいやな人にも、もしかしたらちょっとくらいはいいところがあるのかもしれません。そういうふうに考えていくと、世の中が違って見えるかもしれません。

でも、そんなゴチャゴチャしたことを考えなくても、他にも何十種類の動物、例えばヘビだったりミツバチだったりハイエナだったり、そんな生き物たちの意外な生態を知ることができます。本当に面白い本なので、ぜひ読んでみてください。

 

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<2014年度全国高等学校ビブリオバトル決勝大会の発表より>※学年は取材時