怖がらなくていい。日本と似ているところもあるイスラム
『イスラムの人はなぜ日本を尊敬するのか』富田律
小井土蓮くん(群馬県立富岡高校)

イスラムと聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。豚肉を食べてはいけない、メッカの方向に向かって1日5回礼拝をするなど厳しい宗教、もしくは現在活動を活発にしているイスラム国や2001年の9.11テロといった悪者・怖いというイメージでしょうか。一般日本人のイスラムに対するイメージというのは、マイナス的なイメージの方が強いと思います。しかし、本当は違うということがこの本を読むとわかります。
日本とイスラムは似ているところがあります。まずは宗教的な面から見て、どちらの国、地域にも「喜捨=困っている人がいたら自分の身を削ってでも助けてあげる」という精神があります。この精神は、東日本大震災の時に顕著に見られました。赤ん坊をおぶっているお母さんにご飯をわけてあげるニュースなどはイスラムの人の耳にもたくさん届きました。イスラムの人はどうして日本は仏教国なのにイスラムの教えが守れているのかと不思議に思い、それが「尊敬」につながったと言います。また、「おもてなしの心」もイスラムの遊牧商人の心にはいつもあったそうです。そういった面から見て、日本とイスラムというのはとても近しいと言えるのではないでしょうか。
テロや戦争を行っている人は2%にも満たないそうです。イスラムの地域では、「ジハード」という宗教対立から起こる戦争を認めています。そのため、戦争やテロがたびたび起きてしまいますが、年がら年中戦争をしているわけではありません。ただその情報しか日本に入ってこないということです。残りの98%はとてもいい人で、気さくな人だと著者は述べています。
イスラムの人からしてみれば日本というのは昔から憧れの的であり、みんな大好きな国です。日露戦争での日本の勝利はイスラムの人に独立の勇気を与え、現在日本が行っている資金援助や技術提供は感謝されていると言います。日本のアニメ、ドラマはとても人気を博しています。

著者は「これからグローバルな時代になるにつれて、イスラムの地域というのはとても重要な場所になる。燃料も豊富で、経済的にも日本はこれから強く結び付いていくべきだ」などと述べています。こういう時代に、マイナスイメージだけで避けていてはいけません。正しい認識や知識を持ってイスラムの人たちと接してもらいたいと思います。
私も認識が変わりました。今までは、イスラムは怖い、怖いのではないかと思っていましたが、この本を読んでからは、自分の足で歩いて、目で見て、触れて、本当のイスラムの姿を見たいと思いました。
<全国高等学校ビブリオバトル関東甲信越大会予選の発表より>
さ・ら・に・小井土蓮くん おススメの3冊

『日本が戦ってくれて感謝しています』
井上和彦(産経新聞出版)
戦争というのは悪いことである。戦争と聞いて日本人がまず浮かぶのは、第二次世界大戦だと思うが、日本では「完全に悪」と語られます。しかし、本当に「悪」の側面しかないのか、この本は教えてくれます。
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『南総里見八犬伝』
曲亭馬琴(著)、白井喬二(訳) (河出文庫)
江戸期の有名な長編小説ですが、古くから残っている理由がよくわかります。とても少年心をくすぐられる一冊。本は分厚いが、読んでみると走るようにページが進み、あっという間に読破してしまいます。
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小井土蓮くんmini interview
好きなのは
ジャンルは、社会・歴史。著者としては、竹田恒泰、上念司、池内了。
小学生のとき
8歳のとき『エルマーとリュウ』を読んでから本が好きに。よく読んだのは、宇宙関係の本です。『かいけつゾロリ』シリーズや、国旗の本、『はだしのゲン』なども。
2014年印象に残った本
上記の『神道の本』に加え、『死ぬ理由、生きる理由-英霊の渇く島に問う』(著:青山繁晴)では、硫黄島の真実を知りました。また、『台湾―四百年の歴史と展望』(著:伊藤潔)は、台湾の歴史から現状を知るには最適。とても詳しく書かれています。
読みたい本
『神道と日本人』(著:山村明義)、『この命、義に捧ぐ』(著:門田隆将)、『論語』(孔子)。