恋の行方も注目。個性豊かな図書隊員の本の自由を守る日々
『図書館戦争』有川浩
Kさん(埼玉県立越谷南高校2年)

「図書館の自由に関する宣言」というものをご存知ですか?
1 図書館は資料収集の自由を有する。
2 図書館は資料提供の自由を有する。
3 図書館は利用者の秘密を守る。
4 図書館はすべての不当な検閲に反対する。
図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。
この宣言は実際に存在し、これを元に作られたのがこの『図書館戦争』。本編4冊、外伝2冊の6冊で構成されているシリーズ本です。
物語の舞台は、不適切な表現が含まれる本はすべて検閲するという内容の法律「メディア良化法」が制定されてから30年後。主人公、笠原郁は、高校時代、欲しかった本を買おうとしたとき、本の検閲をする「メディア良化隊」に本を取り上げられてしまいます。そんな時に守ってくれたのが、本の自由を守る「図書隊」でした。名前も知らないその人に一目ぼれし、笠原は大学卒業後、自ら図書隊員となって本の自由を守る日々に奮闘するという物語です。
その笠原が所属する図書隊の設定が緻密です。例えば、図書隊が業務部、後方支援部、そして笠原の所属する防衛部という三つの部署に分かれていたり、階級が11に分かれていてそれぞれ階級章と呼ばれるマークがあったりします。それらマークは巻末に表でまとめられています。
登場するキャラクターは個性豊か。主人公、笠原郁は正義感が強く、涙もろい一面もあり、恋愛面では純情で不器用です。私が一番好きなのは、笠原の上官にあたる堂上教官。普段は冷静で部下には鬼教官と呼ばれるほど厳しい性格ですが、実はとても熱血なキャラクター。また、笠原に見せる笑顔や、褒めるときに頭をぽんとやるしぐさは、とても胸キュンなポイントになっています。笠原郁と堂上教官は初めはけんかが絶えない関係でした。しかし、何かと支えてくれる堂上教官に対して、次第に笠原は信頼、尊敬をし始め、やがて恋に発展していきます。このような二人の関係は、ぜひ注目してほしいところです。
この本を私が初めて読んだのは中学生のときで、長い説明文が苦手で主にせりふだけを読んでいました。それだけでも、良化隊と図書隊のバトルにハラハラしたり、堂上教官と笠原の恋にドキドキしたりと、とても面白かったのですが、何回もじっくり読んでいくうちに、この本に隠された作者の伝えたかったことがわかってきました。読むたびに物語の深みが増していくことが、この本の最大の特徴ではないかなと思います。
ちなみに、ハードカバーもありますが、おすすめは文庫本。毎巻末にサブストーリーがついています。
<全国高等学校ビブリオバトル関東甲信越大会予選の発表より>
さ・ら・に・おススメの3冊

『青嵐の譜』
天野純希(集英社文庫)
「元寇」という歴史的に有名な事件に巻き込まれていく少年少女の話です。一見難しそうだなと思ったのですが、読み始めてみると、とてもすらすら読める本です。
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『都会のトム&ソーヤ』
はやみねかおる(講談社文庫)
主人公の内人と創也の中学生コンビが織りなす、究極のゲームを作るための冒険。初めて読んだのが中学生の時で、主人公達と年齢が似ていたため、自分と重ねて読んだりしていました。
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『カゲロウデイズ』
じん(自然の敵P)イラスト/しづ
(エンターブレイン〈KCG文庫〉)
「これは、8月14日と15日の物語。やけに煩い蝉の声、立ち揺らめくカゲロウ。真夏日のある日にある街で起こった一つの事件を中心に、様々な視点が絡み合っていく……。」とあらすじに書いてあって、「おもしろそうだな」と思ったのがきっかけです。同じ題名の曲が元になって書かれた本なので、それも一緒に聴いてみてください。
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mini interview
好きなジャンル
好きなジャンルは、ファンタジー、学園ものなど。作家なら、有川浩、西尾維新、はやみねかおる、あさのあつこなどです。
影響本
今回紹介した『図書館戦争』は、中学生の時に司書さんに紹介されて読んだのですが、その司書さんのように、おもしろい本を伝えられる司書になりたいなと思うきっかけになりました。
これから
ライトノベルなどはよく読むのですが、夏目漱石などの本は苦手意識があって、授業や課題以外で読んだことがないので、純文学系も挑戦してみたいです。