宇宙の誕生から現在までの、文系+理系の歴史をひもとく
『137億年の物語』クリストファー・ロイド
石原渓介くん(長野県松本工業高校3年)

137億年というのは、宇宙がビッグバンを起こして誕生してから現在に至るまでの期間です。帯に書かれている本のキャッチコピーは「理系と文系が出会った初めての歴史書」。表紙に描かれたイラストの一つひとつが、そのことを表しています。例えば、天球儀が表す天文学だったり、ティラノサウルスやアノマロカリスなどが表す生物の進化の過程だったり、土偶が表す文化だったり、ネフェルティティというエジプトの王女の壁画が表す歴史だったり、レーニンが表す哲学だったり…。文系、理系、様々な学問から見た歴史が紹介されています。
私が、理系と文系の融合だと感じたところを紹介します。例えば、北米先住民の農業の方法にスリーシスターズというものがあります。これは、トウモロコシ、マメ、ウリ科の植物を並べて栽培する方法ですが、普通の歴史書には「そのような方法がある」くらいにしか書かれていません。しかしこの本には、「一緒に並べて栽培すると、トウモロコシはツル植物であるマメの支柱になって、マメ科の植物はトウモロコシに窒素を提供する。ウリ科の植物はその大きな葉っぱや果実で、トウモロコシやマメを食べようとする動物の侵入を阻害する」というふうに、詳しく書いてあります。
そのほか、オーストラリアの先住民アボリジニが描いた色彩豊かな絵も紹介されています。アボリジニは文字を持たずに、このアボリジニ・アートという絵を使ってコミュニケーションの手段としていました。一見、ピカソのような抽象画ですが、渦巻模様や三角模様の一つずつに具体的な意味が込められています。これを使い、身分証明書や権利書を作ったり、物事を記録したりしたそうです。

この本には、1ページに1つずつ時計が付いています。これは、137億年という期間を24時間に置き換えたもので、生命が誕生したのは夜明け頃の5時19分48秒。人がサルから分化した時間は23時59分21秒と、あと少しで一日が終わってしまうというところです。これを見るだけで、人間がどれだけ歴史の後ろの方に現れた新参者で、どれだけ人類史が短いかということが感覚的にわかります。
この本は、歴史が好きな人はもちろん、物語として読むこともできますし、「歴史が嫌い。自分は理系」という人が、イラストなどを楽しみながら図鑑として読むのも面白いと思います。
<全国高等学校ビブリオバトル関東甲信越大会予選の発表より>
さ・ら・に・石原渓介くん おススメの3冊

『風の中のマリア』
百田尚樹(講談社文庫)
主人公がオオスズメバチという珍しい設定で、強大なオオスズメバチの「帝国」での世代交代や、他の虫との出会いの中で揺れ動く主人公の心情がとても興味深い、学術書のような物語です。
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『扇』
吉野裕子(人文書院)
主婦だった著者が習っていた日本舞踊、そこで使う扇の起源に興味を持って大胆な仮説を立て、それを裏付けていく本です。(※『吉野裕子全集1』に『扇』は収録)
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『数学ガール』シリーズ
結城浩(SBクリエイティブ)
自分はあまり数学が得意ではないので、中学生のときに読んでもさっぱり意味がわかりませんでした。が、高校で数学を学ぶと少しずつ理解できていくのがとても楽しかったです。
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石原渓介くんmini interview
好きなのは・・
ジャンルにこだわらず、何でも読みます。好きな作家は米澤穂信
小学生のころ
『ダレン・シャン』シリーズは、あまり難しくなく、スラスラと読めたので、一年に何度も読み返しました。小3くらいのときに読んだ『光の戦士ミド』という本が本を読み始めたきっかけです。
2014年印象本

『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』
柳内たくみ/Daisuke Izuka:装丁(アルファポリス)
自衛隊が主人公のライトノベルのような本ですが、著者が元自衛官なので武器などがリアルで面白かったです。
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