ネイチャーテクノロジー、環境学

物質文明を超え、自然との共生、人間の豊かさをめざす新しい学問へ

〜大学をやめ、沖永良部島に住んでの「90才ヒアリング」から明らかに

 

石田秀輝先生(元東北大学環境科学研究科、合同会社地球村研究室 代表社員)

第2回 物質文明・金融資本主義はもう限界です

物質的な欲求が、産業革命を起こした 

 

人間は「豊かになりたい」という本能を持っています。それは、まず物質的な欲望から始まります。その欲望の充足のため、不安定な自然に身をゆだねるのではなく、自然と決別することを選んだのが18世紀イギリスの産業革命でした。地表での資源搾取から地下資源の搾取へと続き、機械が人間の代わりに24時間働き続け、大量に生まれる商材は蒸気機関の発明で遠方にまで運ばれるようになり、多くの富を生み出していきました。 

ヘンリー・トーマス・アルケン画 『ホワイトチャペル・ロードの風景』(1831年)
ヘンリー・トーマス・アルケン画 『ホワイトチャペル・ロードの風景』(1831年)

しかし、無限だと思われていたエネルギーや資源は有限であり、すでにその限界に近づいていることが明らかとなった現在、「成長と発展」を原理とする産業革命で生まれた、物欲を煽る戦略=「大量生産・大量消費」が地球環境問題につながり、文明崩壊の引き金を引く寸前まで追い詰められていることも事実です。産業革命から250年の時を経て、僕たちが今、真剣に考えなければならないことは、過去の「成長と発展」の概念から抜け出すことです。

 

環境問題の本質は「人間活動の肥大化」

 

近年、気候変動やエネルギーや各種資源の枯渇、生物多様性の劣化に警鐘を鳴らすリポートが数多く出されています。しかしよく考えてみましょう。人間が生きてゆくには、1日あたり2400キロカロリーあれば充分ですが、現実的に僕たちが使っているエネルギーは1日あたり約13万カロリーにも達しています。ちょっとした快適性や利便性を追求した結果が幾何級数的な環境負荷を生み出しているのです。そう、地球環境問題の本質とは「人間活動の肥大化」なのです。人は、種の中で唯一「欲望の遺伝子」を持っていて、一度知ってしまった利便性や快適性を容易に放棄できません。これを僕は「生活価値の不可逆性」と呼んでいます。その結果、文明崩壊に向かって全力で突っ走っている。なんともおかしな構図ですが、これはまさしく豊かさを測る物差しが、「お金」であるから、「金融資本主義」が肥大化しているからに他なりません。

 

しかし2008年のリーマン・ショック後の急激な景気後退で、図らずも従来型の経済活動が限界に達していたことが露呈しました。リーマン・ショックの一つの側面はシステムの崩壊ですが、もっと大局的な見方をすれば、「文化と文明の隔絶の結果」ではないだろうか、と僕は思います。

 

文化は叡智に帰属するものであり、文明はテクノロジーの集積です。したがって、文化と文明は共存して初めて共栄できるものです。リーマン・ショックのシステム崩壊は、この関係が崩れ、文明だけが暴走し招いた結果と言えるでしょう。産業革命以来、僕たちは自然観との決別によって現代の文明を築いてきました。そしてまさに、その限界を知ったのです。今こそ、右肩上がりの時には考えることさえ許されなかった「生きるということは何か、幸せとは何か」をみんなでワイワイガヤガヤと、あるいは一人でじっくりと、考える時ではないでしょうか。

 

石田先生の本・サイト

『光り輝く未来が、沖永良部島にあった! ~物質文明や金融資本主義社会はもう限界です~』

石田秀輝 (ワニブックスPLUS新書)

地球環境のことを考えると節水、節電、省エネに関するような我慢を基本とした暮らし方やテクノロジーが見えてきます。一方、制約の中で豊かであるライフスタイルを考える思考(バックキャスト思考)を導入すれば、さらにその答えを自然に求めることにより従来と全く違ったテクノロジーやシステムが見えてきます。例えば水の要らない風呂など。

 

地球環境問題は不可避ではあるものの、それに対する解は部分最適なものがほとんどです(例えば地球温暖化など)。今考えなければならないことは、我々自身の暮らし方を変えることにより、全く新しいテクノロジーやシステムが見えてくることを現実解として理解して欲しいということであり、それは従来の延長にある学問ではなく、全く新しいそして今世界から求められている学問でもあります。

 

プロローグとコラムを読んでいただくだけでも、企業で働いていた筆者が何を思い大学教授になり、さらに沖永良部島に移住して次の研究を進めようとしているのかイメージをつかんでいただけると思います。

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『科学のお話 『超』能力をもつ生き物たちシリーズ』

石田秀輝 (学研)

生物は最先端科学でも理解できない謎に満ち溢れている。生き物の能力に着目した道具や技術を紹介。『カがつくった いたくない注射針』『ホタルがつくった エコライト』『ヤモリがつくった 超強力テープ』『ハスの葉がつくった よごれない服』の全4巻。

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『自然に学ぶ粋なテクノロジー なぜカタツムリの殻は汚れないのか 』

石田秀輝 (化学同人)

ネイチャーテクノロジーの本質論、ライフスタイルからテクノロジー創生までの一連のシステムを解説しています。

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『すごい自然のショールーム』ネイチャーテック研究会(WEBサイト) 

自然の摂理にかなった「新しい物作り」や「暮らし方作り」のための、約300の自然の科学的な不思議が整理・紹介されています。

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