ワーキングプア問題を考える
生きづらい世の中について、雨宮処凛さんと激トーク

雨宮処凛(かりん)さんという女性を紹介しよう。かつて“ミニスカ右翼”と形容された元右翼活動家だったが、日本の貧困問題にアプローチするようになり、作家・社会運動家に。彼女自身のナイーブさとともに雨宮さんの人生は大きく揺らいだが、生きづらい世の中を肌身で鋭く感じる感覚は今も昔も共通している。

左は雨宮さんの著書『14歳からわかる生活保護』。
「世の中に生活保護バッシングがある中で、生活保護を受けている人=『悪い人』というイメージが流布されていることがとても不安でした。これでは、貧しい家庭の子どもや実際に生活保護を受けている子どもがいじめに遭ってしまうのではないかと思ったからです。そのような動機で書きました。
この本には、生活保護を受けられずに餓死してしまった人などが登場します。『自己責任』と切り捨て、思考停止してしまうと、誰かを死に至らしめてしまうことがある。そんな社会では、誰も安心して暮らせないはずです。
特に、第一章の、姉妹餓死・凍死事件を読んでください。『命の最後の砦』の生活保護の現場で起きた悲しすぎる事件を、ぜひ知ってほしいです。」
[出版社のサイトへ]
「愛知サマーセミナー」では、雨宮処凛さん、女子高校生(2人)、娘を持つ母、非常勤高校教師が出席し、激トークをかわしました。(2013年7月14日実施)
(※愛知サマーセミナー:3日間で1000講座を超える、市民参加型の学びの祭典。毎年夏休みに名古屋市内の高校で実施。高校生が企画・運営する講座も多数)
vol.1 自殺したあるブラック企業就職者の話~ブラック企業で働くか、ワーキングプアになるしかないのか?

女子高校生A
高校生である私たちは働いたことがまだないので、雇用格差の現状とか知りたいです。今、日本中の3人に1人が非正規雇用というのは本当ですか。
女子高校生B
私は、雨宮さんの本を読んで、非正規雇用でブラック企業に就職した後、自殺した若い人の話にすごい衝撃を受けました。高校時代から夢があって、その夢のために留学も考えていた男性なんですけど、大学卒業前に、「会社に入ってからでも留学はできる」と言われて入社した会社が、ブラック企業でした。健康を気にする人だったんですが、入社すると1日18時間労働を強いられ、寮で大好きな料理をするひまもなくて、最終的に自分で料理するための大好きなホットプレートのコードで首を……今でも思い出すだけで涙が出そうです……寮の壁に「ぼくは無駄な時間を過ごしてしまった」と書いて……。23歳だったそうです。
雨宮さん
彼は今生きていれば38歳くらいになっています。90年代、派遣労働者としてすごい長時間労働をして、結局、首を吊って亡くなるという事件なんです。この懸案に関して私はずっと裁判に通いました。裁判は高裁で全面勝訴しています。けれど、過労死の裁判に出てつらいのは、勝訴したって本人は絶対、戻ってこないということです。今、過労死を出した企業にはなんの罰則規定もないし、過労死を防止する法律もまだ施行されていません(2014年11月に過労死防止法が施行)。働くという当たり前の社会生活をして、それで死ぬって、おかしいでしょ。
私は数年来、格差とか貧困問題とか労働問題の取材をしています。パート、契約社員、派遣社員と呼ばれる正規雇用でない、いわゆる非正規雇用の労働者は、最新のデータでは、全体の38.2%と過去最高になっています。3人に1人が非正規雇用というのがこの10年ほどの現状です。
日本の全労働者のうち、年収が200万円以下というのは1000万人という数字もあります。日本の貧困率は16%なんですけど、これは日本人6、7人に1人は貧困という状態です。具体的にざっくり言うと、1人暮らしの場合、月9万7000円以下で暮らしている人が、6~7人に1人いる、ということになります。
だから今は就職活動をしてもなかなか正社員になれないし、特に若い人に非正規雇用の率は高い。非正規雇用でブラック企業に入るか、ワーキングプアになるしかないということかもしれません。
雨宮処凛さんから高校生へおすすめ本
