地球宇宙化学・惑星化学

隕石の中にダイヤモンドが! 隕石から太陽系形成以前の歴史を解明

松田准一先生 元大阪大学大学院 理学研究科 宇宙地球科学専攻(理学部物理学科、大阪大学名誉教授)

第3回 実験から、隕石のダイヤモンドは、原始太陽系星雲の中でガスから生まれたと確信

市販の衝撃合成ダイヤモンドにも希ガスが入っていた

 

2006年モロッコでの学会にて
2006年モロッコでの学会にて

その後、比較のために衝撃合成のダイヤモンド中の希ガスも調べることにしました。当時、日本でも日本油脂株式会社が衝撃合成ダイヤモンドをつくっていたのです。日本油脂株式会社から、材料のグラファイトとそれからつくった衝撃合成ダイヤモンドを提供していただき、その中の希ガスの存在量と同位体比を測定したのです。その結果に驚きました。材料のグラファイトには希ガスが入っていないのですが、衝撃合成のダイヤモンドには希ガスが入っていたのです。これは、ユレイライト中の希ガスの特性と同じです。そして、衝撃説では有り得ないと思われていたことです。

 

しかし、そのパターンは空気中の希ガスのパターンそのものでした。どうもグラファイトの結晶の間隙に入っていた大気が、グラファイトがダイヤモンドに変換された時にそのままダイヤモンドに取り込まれたようなのです。

 

市販の試料では、衝撃合成時の温度や圧力などの条件などがよくわからないので、今度は、衝撃合成のダイヤモンドを実際に自分たちでもつくってみようと思いました。

 

それで、衝撃実験をしている研究所を探したのですが、驚いたことに、こういう研究は自衛隊の研究所が一番進んでいるということがわかりました。というのは、戦車の前に砲弾などを受けた時、どのぐらいのダメージがあるかというのは、軍事上大変重要な研究だからです。なるほどと妙に感心しました。

 

他には、東北大学の金属材料研究所の庄野グループで地球物理学的な研究が行われていました。これは、大砲のようなもので物体を発射させてグラファイトに衝撃を与え、その瞬間に生じる超高温高圧状態を使って、地球内部の高温高圧状態を研究しようとするものです。高温高圧の生じる時間は、静的な高圧装置よりももちろんずっと短いのですが、より高い超高温高圧状態を得ることができます。

 

私たちは、庄野グループと共同研究をしました。そして、実際に衝撃でダイヤモンドができること、また希ガスの入り方には2種類あり、ガスの逃げ場のない状態(閉鎖系)で衝撃を与えた場合にはダイヤモンドに希ガスが入るのですが、ガスの逃げ場のある時(解放系)には、希ガスが入らないことなどを実験的に証明しました。そして、市販の資料で確認したように、ダイヤモンドに希ガスが入るといっても、希ガスのイオン化エネルギーなどとは関係なく、大気の希ガス組成そのままで入るのです。 

 

気相合成ダイヤモンドでも希ガスが入るには条件がある

 

その後、私たちは気相合成ダイヤモンドでも、ダイヤモンドに希ガスが入る場合と入らない場合があることを知りました。実は、気相合成のダイヤモンドは、もっと簡単な方法でもつくることができるのです。プラズマ状態下での合成でないような場合には、気相合成ダイヤモンドには希ガスが入らないことを知りました。つまり気相合成ダイヤモンドに希ガスが入るのは、プラズマ状態でイオン化された希ガスイオンが加速されて成長中のダイヤモンドに打ち込まれる場合だけなのです。

 

ところで、隕石中のグラファイトには希ガスが入っていません。もし、グラファイトも原始太陽系星雲の中でガスからつくられたとすると、どうしてそのグラファイトには希ガスが入っていないのかという疑問が出てきます。

 

私たちは、気相からプラズマ状態でつくったグラファイトには希ガスが入らないことも実験で証明しました。なぜプラズマ状態でも気相からつくられたグラファイトに希ガスが入らないかというと、グラファイトは炭素原子が並んだ平面が積み重なった層的な構造をしているのですが、打ち込まれた希ガスが層の間から抜けながらグラファイトが成長していくからということなどもわかりました。構造的にグラファイトは希ガスを保持しにくいのです。

 

衝撃合成ダイヤモンドの強い根拠となった一定方向に衝撃波が走り結晶軸が並んでいるということも、基板の結晶方向に関係して気相合成ダイヤモンドができるので結晶軸が並んでいるということで説明できます。

 

このような実験データから、私たちは、隕石のダイヤモンドは、原始太陽系星雲の中でガスから生まれたという説を確信しています。鉱物学的な特徴からまだ衝撃説を主張する人もいます。それは、ダイヤモンドの近くに衝撃を受けたようなグラファイトがあるというものです。しかし、別のグループから私たちの説を支持する他の元素からのデータも出てきています。窒素の同位体比はグラファイトとダイヤモンドで異なり、グラファイトから衝撃でダイヤモンドができたのではないという証拠を示しているのです。

 

興味がわいたら

『隕石でわかる宇宙惑星科学』

松田准一(大阪大学出版会)

宇宙の解説から太陽系内探査、そして隕石の最新の研究成果までを著者自身の手による楽しいイラストとともに解説。隕石について興味を持っている人、また隕石について実際どのような研究がなされているのかを本格的に知りたい人におすすめです。

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『天体衝突』

松井孝典(講談社ブルーバックス)

恐竜が滅んだのは隕石の衝突によるものですが、隕石の地球への衝突というのがどのようなものか、どのぐらいの頻度があり、どのようなことが起こるのかなどについて詳しく書かれています。隕石のことに興味のある人におすすめです。

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写真が大変豊富で、日本に落下した隕石について特に詳しいです。隕石とはどういうものかをまずは写真などで見たい人にはおすすめです。

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難しい知識を優しく説明することを心がけ、海外ロケやコンピュータグラフィックなどもふんだんに取り入れて毎回面白い番組に仕上げています。宇宙全般の知識を楽しく学びたい人におすすめです。

 

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私達はテレビや新聞などの影響を大いに受けていますが、自分自身のしっかりした意見を持つことが必要です。そういった意味で、こういうはっきりした意見の本を読むことも良い機会になると思います。

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