地球温暖化研究

地球温暖化問題研究者、ポスト3.11のCO2ゼロ社会を語る!

西岡秀三先生 地球環境戦略研究機関
元慶應義塾大学政策・メディア研究科、国立環境研究所


希望の持ちづらい時代に、希望を持てる未来の話をしよう。3.11以後、原子力エネルギー問題で、影が薄くなった感のある地球温暖化問題研究を考えてみたい。この研究の著しい進展で、経済成長をしながら原発ゼロ、CO2ゼロ社会をめざすリアルなシナリオがひそかに進行中だ。30年来の地球温暖化問題研究者、『低炭素社会のデザイン――ゼロ排出は可能か』(岩波新書)の著者、西岡秀三先生(地球環境戦略研究機関)は熱く語った。

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第1回 南極が溶けると30メートルの大津波が起こる!

西岡秀三先生
西岡秀三先生

地球温暖化問題は、世界の人口問題や食糧問題と比べてもグローバルな広がりを持ちますが、なぜ重要なのかから話しましょう。

 

毎日のお天気はくるくると変わり季節はめぐりますが、それなりに安定した気候に合わせた生活をしています。ところが、気候が安定に保たれる保証はまったくないことが明らかになってきました。産業革命以来、石油・石炭を燃やし、CO2が大気中に大量に捨てられ蓄積するという人間活動が原因となって、「気候変動」が起こってしまったのです。この人為的なCO2ガスの地球温室化効果によって気温が上昇しつつあることを明らかにしたのは「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」という国際組織です。

 

世界の気温が今より平均2度上昇するだけで、どんな将来の気候変動被害をもたらすかを推定した報告によれば、世界のGDPの5%の損出をもたらすといわれます。勘定できる経済的被害、環境や健康など経済取引に上りにくい被害や弱者への影響を含めると、20%という莫大な損失になるといわれます。ある国だけがぬくぬくとCO2を出しっぱなしにすると気候が乱れ、ほかの国が迷惑する。気候はまさに世界の公共財ということができるのです。

 

では、地球温暖化で懸念される影響にはどんなものがあるのか? 脆弱で貴重な生態系や対応力の弱い途上国社会から被害は発生し、水資源、農業被害など人間の生存基盤へと及んでいきます。日本でも夏の猛暑で熱中症患者の増加、感染症を媒介する蚊の分布域の拡大など、じわじわと温暖化の被害が起こってきています。

 

急激に起こる極端な被害としては、例えば最近増えた極端なゲリラ豪雨などがそうです。台風による高潮被害が各地で増え、1時間100ミリ以上の豪雨は2000年代には、1990年代の約30%増の頻度で観測されている。それは気候変動の影響である可能性が高いといわれています。

 

もっと極端な現象として、北極・南極の氷が溶けるということがある。最近では、グリーンランドの氷が溶けていますが、氷が全部溶けると世界中の海水面が6m高くなると予測されます。すでに北極海の氷が溶けて海氷面が減っていることは確実です。

 

それでも南極だけは溶けないだろうと長い間信じられてきました。なぜって、南極大陸そのものが天然の冷凍庫みたいなものだから。ところが最近、重力衛星という衛星からの観測で、南極の氷の重さがわかるようになりました。

 

それで調べてみると、表面からは溶けなくても温暖化の影響で底のほうに穴ができて溶けた水が染み出しているんです。南極の氷山の高さは平均2000メートル。理論的に計算すると、南極の氷が全部溶けると、世界全体の海水面が30メートル上昇することが予測できます。つまり30メートルの高さの津波が全世界を襲うということです。そんなことはまず100年は起きないと思いますが、海水面が10メートル上昇するのは意外に早いかもしれない。

 

<つづく>

地球温暖化研究の研究者

地球温暖化研究が学べる大学

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低炭素社会のデザイン――ゼロ排出は可能か

西岡秀三(岩波新書)

エネルギー消費を半減しても豊かな生活は可能だ。二酸化炭素排出抑制によって得られる安定な気候こそ、豊かな生活の基本である。省エネルギー技術、社会インフラの組替え、エネルギー供給システムの革新によって、低炭素社会は実現できる。気鋭の環境システム学者が、ゼロ排出に向けて、今世紀半ばまでに80%削減する現実のシナリオを描く。

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低炭素経済への道

諸富徹・浅岡美恵(岩波新書)

今必要なのは、CO2の排出を大幅に削減し、なおかつ経済を向上させる、新たな成長戦略。環境産業政策への転換が必要だと訴える。諸富先生は京都大学経済学部教授。気鋭の環境経済学者と温暖化問題に取り組む気候ネットワーク代表の共著で、低炭素化による経済の大いなる可能性と将来ビジョンを示す。

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低炭素社会

小宮山宏(幻冬舎新書)

経済界からは「これ以上大幅なCO2削減は不可能だ」という声があるが、日本の技術力をもってすれば難しくない。「第3章エネルギー消費量の正しい減らし方」では、家庭でのエネルギー、住宅、自動車、新エネルギー、リサイクルなど具体的に提言。元東京大総長。私生活でもCO2削減を実践する環境技術の第一人者が、これから10年の戦略を明快に解き明かす。

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原発のコスト――エネルギー転換への視点

大島堅一(岩波新書)

「原子力発電は他と比べて安い」と言われてきたが本当か。実はその計算には、立地対策のために自治体にばらまかれたお金や、放射性廃棄物の処分費用が入っておらず、さらに事故時の莫大な賠償も考えると、原子力は経済的に成り立たない。著者は、福島原発事故が起こる以前からデータを積み上げ実証し、その予見性も話題を呼んだ。立命館大学国際関係学部教授。

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水危機 ほんとうの話

沖大幹(新潮選書)

地球の水はいつかなくなるのか? 水資源をめぐって日本も戦争に巻き込まれるのか? 節水はすべて善いことなのか? 著者は、水問題の第一人者であり、温暖化問題・影響リスクの花形研究者。「水はローカルな資源なので、完全市場における競争原理が成り立たない。その結果、水道料金は国内の自治体間で最大16倍もの差がある」といった目からウロコの話も多い。

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気候変動+2℃

山本良一責任編集/Think the Earth Project編(ダイヤモンド社)

「2℃」は「人類が超えてはならない一線」。平均気温が2℃上昇すると、社会や生態系が壊滅的な影響を受ける。温暖化の様子をコンピューターグラフィックスで示し、パラパラめくると、1950~2100年まで地球全体の気温が上昇していく様子がわかる。左ページには、温暖化によって想定される被害、新しい温暖化対策の取り組みなどをまとめる。ユニークな切り口の著者は、東京都市大学環境学部教授、元東京大生産技術研究所教授。

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脱「ひとり勝ち」文明論

清水浩(ミシマ社)

超低燃費、CO2を排出せずに時速370キロを出したEVカー「エリーカ」。開発者の元慶応大学教授の著者は、世界全体が豊かになる+地球環境が良くなると、脱「ひとり勝ち」文明論を展開する。EVカーはいまや持続可能社会を切り拓く次世代型自動車に。パイオニアが語る「太陽電池と電気自動車」が作る新文明論だ。

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