地球温暖化研究

地球温暖化問題研究者、ポスト3.11のCO2ゼロ社会を語る!

第2回 「低炭素社会」は日本が世界に発した概念~80%削減も可能!

西岡秀三先生 地球環境戦略研究機関
元慶應義塾大学政策・メディア研究科、国立環境研究所

西岡秀三先生
西岡秀三先生

私たち地球温暖化問題の研究者は、きわめて具体的なビジョンで、2050年にCO2ゼロ社会をめざしています。そのためには、CO2の排出を少なくなるように知恵を出し合い、汗をかき、これまでただと思っていた安定に気候を維持するためにお金をかけねばならない。

CO2を限りなくゼロ近くまで削減した社会を「低炭素社会」といいます。実は、低炭素社会は日本が世界に発信した概念です。しかしここにいたるまでの道のりは平坦なものではありませんでした。

キミたちの親が中高生だった70年代、CO2を削減できた“奇跡の10年”がありました。1970年原油価格の高騰で始まったオイルショックです。これまで安い石油を前提にして作り上げられた日本の技術・経済システムは大きく揺さぶられましたが、これに対応して日本人が知恵を働かせ開発した省エネ技術や製品は世界に誇るべきもので、少ないエネルギーで経済成長する奇跡を成し遂げたのでした。

ところが80年代以降の世代の人はぜんぜんだめ。ふがいない日本の時代が続きます。省エネ技術開発を怠り、エネルギーなしに成長はないとCO2を排出し、バブル経済を生み出しました。

1997年、CO2削減のための京都議定書で定められた日本の削減目標は、1990年の水準から2008年までに6%削減というものでしたが、こんな低い削減目標すら達成は容易ではなかった。かろうじて達成できたのは、排出量の多い日本の企業がCO2削減目標より排出量の少ないよその国の企業から買った排出権取引の分と、日本の森林のCO2吸収量を6%削減の算定に盛り込んでもらえたおかげです。

この間、日本の企業は、CO2削減のための長期的な見通しを持った技術投資をほとんどしてこなかった。例えば、どの日本の会社も投資の際、原価計算をしますが、2、3年で元が取れるような計算をする。太陽エネルギーのような長期的な展望の要る投資は絶対だめ。目先の利益しか判断しないという風潮がずっとあったわけです。

省エネ指標の国際比較データがありますが、それを見ると、日本の省エネ技術が優れていたのは1981年までで、以後は、ヨーロッパ諸国にもどんどん抜かれています。データ的を見る限り日本はもはや省エネ国家でさえないのです。

日本が世界に向けて「低炭素社会」を発信したのは、2008年、北海道洞爺湖サミットのときが最初です。時の福田首相は同サミットで、2050年に世界のCO2を80%削減という長期目標を打ち出しました。裏話をすると、サミット前、私たち温暖化問題研究者は、議長国として日本の達成すべき目標について相談を受け、80%削減という具体的数字が挙がったという経緯があります。当時、80%削減なんてできっこないと耳を疑った人も多いかと思いますが、私たちにすれば長年IPCCでも検討して算出された数字で、ごく当たり前の科学的成果だったのです。

<つづく>

第3回 大転換期が始まった ~震災後の地球温暖化問題 メリット・デメリット


西岡先生の著書

低炭素社会のデザイン――ゼロ排出は可能か(岩波新書)

エネルギー消費を半減しても豊かな生活は可能だ。二酸化炭素排出抑制によって得られる安定な気候こそ、豊かな生活の基本である。省エネルギー技術、社会インフラの組替え、エネルギー供給システムの革新によって、低炭素社会は実現できる。気鋭の環境システム学者が、ゼロ排出に向けて、今世紀半ばまでに80%削減する現実のシナリオを描く。

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地球温暖化研究の研究者

地球温暖化研究が学べる大学

興味がわいたら ~ブックガイド

低炭素経済への道

諸富徹・浅岡美恵(岩波新書)

今必要なのは、CO2の排出を大幅に削減し、なおかつ経済を向上させる、新たな成長戦略。環境産業政策への転換が必要だと訴える。諸富先生は京都大学経済学部教授。気鋭の環境経済学者と温暖化問題に取り組む気候ネットワーク代表の共著で、低炭素化による経済の大いなる可能性と将来ビジョンを示す。

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低炭素社会

小宮山宏(幻冬舎新書)

経済界からは「これ以上大幅なCO2削減は不可能だ」という声があるが、日本の技術力をもってすれば難しくない。「第3章エネルギー消費量の正しい減らし方」では、家庭でのエネルギー、住宅、自動車、新エネルギー、リサイクルなど具体的に提言。元東京大総長。私生活でもCO2削減を実践する環境技術の第一人者が、これから10年の戦略を明快に解き明かす。

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原発のコスト――エネルギー転換への視点

大島堅一(岩波新書)

「原子力発電は他と比べて安い」と言われてきたが本当か。実はその計算には、立地対策のために自治体にばらまかれたお金や、放射性廃棄物の処分費用が入っておらず、さらに事故時の莫大な賠償も考えると、原子力は経済的に成り立たない。著者は、福島原発事故が起こる以前からデータを積み上げ実証し、その予見性も話題を呼んだ。立命館大学国際関係学部教授。

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水危機 ほんとうの話

沖大幹(新潮選書)

地球の水はいつかなくなるのか? 水資源をめぐって日本も戦争に巻き込まれるのか? 節水はすべて善いことなのか? 著者は、水問題の第一人者であり、温暖化問題・影響リスクの花形研究者。「水はローカルな資源なので、完全市場における競争原理が成り立たない。その結果、水道料金は国内の自治体間で最大16倍もの差がある」といった目からウロコの話も多い。

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気候変動+2℃

山本良一責任編集/Think the Earth Project編 (ダイヤモンド社)

「2℃」は「人類が超えてはならない一線」。平均気温が2℃上昇すると、社会や生態系が壊滅的な影響を受ける。温暖化の様子をコンピューターグラフィックスで示し、パラパラめくると、1950~2100年まで地球全体の気温が上昇していく様子がわかる。左ページには、温暖化によって想定される被害、新しい温暖化対策の取り組みなどをまとめる。ユニークな切り口の著者は、東京都市大学環境学部教授、元東京大生産技術研究所教授。

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脱「ひとり勝ち」文明論

清水浩(ミシマ社)

超低燃費、CO2を排出せずに時速370キロを出したEVカー「エリーカ」。開発者の元慶応大学教授の著者は、世界全体が豊かになる+地球環境が良くなると、脱「ひとり勝ち」文明論を展開する。EVカーはいまや持続可能社会を切り拓く次世代型自動車に。パイオニアが語る「太陽電池と電気自動車」が作る新文明論だ。

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