日本をユニバーサルデザイン社会に

~大学3年で起業。視線の高さ106センチの挑戦

株式会社ミライロ代表 垣内俊哉さん

幼少期より骨形成不全症のため車椅子の垣内俊哉さんは、大学3年時、クラスメートと株式会社「ミライロ」を起業。障害・能力のいかんを問わず利用できる施設・設計デザイン(ユニバーサルデザイン)のコンサルティングを事業としています。「障害は人にでなく、取り巻く環境にある」とユニバーサルデザインの必要性、そして生死をさまよった切実な体験から、生きるということについて熱く語っていただきました。

垣内さんのおススメ本 『道をひらく』

松下幸之助(PHP研究所)

あえてユニバーサルデザインの解説本ではなく、経営の神様と呼ばれる松下さんの本を選びました。「自信を失ったときに」「困難にぶつかったときに」「運命を切りひらくために」など、松下さんの人生観や経験から、自分が励まされるエピソードが多いです。


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第1回 障害はマイナスじゃない 

~バリアフリーではなくバリアバリューへ

1989年、愛知県安城市で生まれ、岐阜県中津川という片田舎で育ちました。今日まで骨折10回以上、入院も10回以上。人生の5分の1は病院で過ごしました。小学校時代、リレーに出られない。修学旅行にも参加できず、障害のあることはマイナスでしかなかった。でも野球部に入りキャッチャーをやりました。3年間でセカンドまでボールは届くようになっていました。僕が打席に入ると無敵だった。なぜって、車椅子だとめちゃめちゃストライクゾーンが狭いからです。フォアボール製造機と呼ばれ、確実に四球をもらいました。

 

でも歩けないことは苦痛でした。高校を中退し、大阪に出て手術やリハビリを受けました。しかし結局、僕は歩けるようにはなりませんでした。その時は辛くて、死のうと思ったことすらありました。しかしある日、歩けなくてもできることから、歩けないからこそできることを探そうと思い、前に進むことを決めました。

僕は今、「株式会社ミライロ」という会社を立ち上げています。その企業理念に「バリアバリュー」ということを掲げています。少し説明しましょう。バリアフリーという言葉があります。読んで字のごとく、障害を取り除くという考え方があります。これだと、障害というマイナスをゼロにしていこうというアプローチに他ならないわけです。


でも障害はマイナスでしょうか。「垣内さんはハンディを持って大変ですね」と言われますし、確かに歩けないことで不自由はあるかもしれない。障害があることが不幸だとかかわいそうだと、そういう価値観がはびこっているのが今の日本です。でも今の僕は障害を背負った覚えもないし、ハンディを抱えたなんて考えません。車椅子の僕の視線の高さは108センチです。身長170~180センチある皆さんとそこが少し違います。その視線の高さで、障害をもっとプラスの価値で考えていきたい。バリアフリーからバリアバリューへ転換する挑戦をしていきたいと思います。

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『道をひらく』

松下幸之助(PHP研究所)

あえてユニバーサルデザインの解説本ではなく、経営の神様と呼ばれる松下さんの本を選びました。「自信を失ったときに」「困難にぶつかったときに」「運命を切りひらくために」など、松下さんの人生観や経験から、自分が励まされるエピソードが多いです。


松下さんは経営を行う上で「貧乏で、体が弱く、学歴がなかったことが幸いした」とおっしゃていました。何故かと聞かれて、「まわりの人がみんな賢くみえるし、皆の協力がないとやっていけないと自然に思えた」と答えたのです。これを読んだ時、自分の障害はマイナスだと思っていたけれど、見方を変えれば価値になるのかもしれないと想いを強くしたことを覚えています。バリアバリューにも繋がる考え方です。

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『トコトンやさしいユニバーサルデザインの本』

宮入賢一郎(日刊工業新聞社)

私たちもユニバーサルデザインに関連する事業を行う始めに見たのはこの本でした。これから勉強する方には最適な本だと思います。

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