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学問ことば解説

昆虫分類学:未発見種は1000万以上、キミの名前を学名にしよう!

 

地球上の生物は160万種、昆虫はそのうち80万~100万種といわれ、実に全体の50%以上も占める。もし、生物の宝庫といわれる熱帯雨林に人知れず生息する昆虫たちがすべて発見されれば、その数は少なくて500万種、アメリカの学者の中には5000万種という途方もない数をあげる者もいるほど。昆虫の大多数は、まだその存在すら知られていないのだ。昆虫分類学では新しく発見された昆虫を「種」を単位に整理し、命名して系統樹の上に位置づける。つまり昆虫分類学は、生物の進化の過程を解き明かす研究であるとともに、生態学や生理学の基礎でもあり、すべての研究はここから始まるといってもよい。基礎の昆虫学が盛んでない日本では、応用昆虫学がこの領域の研究も行っており、九州大・北海道大が二大拠点。一見地味だが昆虫の種の多さを考えれば実に奥が深く、昆虫の学名に自分の名前をつけるチャンスもあるという魅力的な学問だ。

 


昆虫生態学:昆虫の生存戦略の秘話を解き明かす!
 
昆虫の魅力は、その姿の多様さとともに、思いもよらない生態の面白さにある。その意味で生態の観察は、昆虫研究のコアをなしている。昆虫生態学では、昆虫同士の関係や、環境との関わりを観察によって解明する。アブラバチやカブリダニが生物農薬として使われるようになったのも、その生態観察の克明なデータがあってこそ。また、昆虫は生物多様性の基礎を支える存在だから、その生態の解明は、環境保護の上からも重要性を増している。最近は、その個体数の多さに着目して、数学を使って個体数や行動の回数を数理モデル化する研究も行われるようになった。しかし日本に生息する昆虫3万種のうち、多少なりとも生態が研究されているのは約2500種にすぎず、まだまだ研究の余地は大きい。昆虫生態学研究の武器は、何よりも観察力と洞察力。ファーブルが100年前に行ったように、「見る目」さえもっていれば、いろいろなものが見えてくる。

 


昆虫生理学、生化学、遺伝子工学:驚異の能力に化学のメスを入れる
 
生理学は、昆虫の行動や習性を、その化学的なメカニズムまで含めて探る学問だ。数十種類の昆虫の脱皮や休眠の起こり方、驚異的な運動能力などが、ホルモンなど生体内の化学物質を通して、生理活性物質化学ともいえる生化学の手法で研究されている。その成果は、害虫駆除剤(「ゴキブリホイホイ」などの商品で誘因フェロモンが使われているのは有名)や、クモの糸を利用した高分子繊維の開発など、工学分野への応用にも向けられる。さらに遺伝子工学も用いられ、最近では有用物質を発現させる他の生物の遺伝子を昆虫に導入し、微生物などと同じように有用物質を生産させる(「発酵学・有用微生物学」参照)研究も始まっている。中でも注目されているのが、インフルエンザのワクチンをカイコに作らせる研究で、ネコ用の風邪薬はすでに実用化されている。

 

応用昆虫学

応用昆虫学の研究者

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