政治学/政治理論

18歳、選挙に行こう! みんなで社会を作ろう!

18歳選挙が実現!政治学を学び、政治行動へ、合意形成へ。

デモクラシー論のリーダー杉田敦先生と考える

杉田敦先生 法政大学 法学部 政治学科

政治学と聞くと、「政治・経済」や「現代社会」の授業で扱う、三権分立などの理念や、行政の仕組みなどを思い浮かべるのではないでしょうか。これらも政治学の一部ですが、実は政治学はもっと広いものです。今まさに起こっている政治について分析し、解決策を提示することをめざしているのです。

 

私たちは、国や地方自治体という集団に属していますね。また、日本は国際社会という集団の一員です。考え方や感じ方が異なる多様な人々で構成される集団では、対立や紛争がしばし起こるものです。だから、それを乗り越えて共存するにはどうしたらいいか、どんなルールが必要なのか、また、異なる価値観の人と合意を形成するにはどうしたらよいか。そうしたことを考えるのが「政治」というものであり、そのために調査や分析をしたり、提言したりするのが政治学と言えます。

 

7月10日の参議院選挙からは18歳以上で投票に参加できるようになり、今後は、若者も政治についての知識・関心をより求められるようになります。そこで、みらいぶプラス編集部では、神奈川県の桐光学園高校の中高生と、憲法や原発のあり方など、現代日本の政治や政治学について、話し合っていただいた杉田敦先生(法政大)に、続いて、政治学とはなにか、そのトレンドや学ぶ意義について、協力いただいて解説してみました。

 

上は杉田先生の著書『デモクラシーの論じ方』(ちくま新書)

民主政治についての様々な考え方がわかります。

[出版社のサイトへ]

 

第1回 政治学って何だ?

政治学の役割が変化。権力の暴走を予防・批判する学問から、政策提言する政治学へ

 

――政治学の出発点は、国家が人々を統治する仕組みが整えられていた、古代ギリシャ時代までさかのぼるそうですね。

 

杉田先生:理系の学問では2,000年以上も前の人たちの業績が直接研究に関わることはありませんが、政治学ではプラトンやアリストテレスの思想が、今でも研究対象にされています。例えば、プラトンは何事にも絶対的な真理があると考え、政治にもそれがあるはずだから、正しい答えが分かった人が政治を主導すればうまくいくという政治論を展開しました。一方、彼の弟子のアリストテレスは、経験主義的な立場から、実現可能で、かつよりよい政治の体制を作るにはどうしたらよいかについて論じています。この2人の政治観の違いは、現代でも意識されています。政治学は人の営みを扱う学問ですから、古代の思想も、現代に通じる普遍性を持っているのです。

 

――現在の政治学につながる起点の一つが、1762年にフランスで発表されたジャン=ジャック・ルソーの「社会契約論」ということです。人間は本来、一人ひとり平等で自由だが、そうした自然状態だと利害をめぐる争いが絶えない。そこで自分の権利の一部分を国家に委ねる契約をすることで、安全や財産が保障されるのが、理想的な国家体制であると論じたものです。その後、国家内の統治や、国家間の関係のあり方などが議論されるようになり、それが現在の政治学へとつながっていったのですね。

 

杉田先生:従来の政治学は「過去の政治をどのように行うべきだったか」「今の政治のどのような点が問題か」といった、批判的な視点からの研究が中心でした。ですから現状を良くするための具体的な提案というよりは、現政府が過去と同じ過ちを犯さないように見張ったり、批判したりすることを大きな目的としていました。特に日本の政治学は、第二次世界大戦後に、戦前・戦中の政府が戦争への道を突き進んだことへの反省から出発しているので、その傾向が強かったのです。

 

――しかし、政治の現状を批判するだけではなく、問題を解決するために、どんなルールや仕組みを作ればよいかまで考えるのも、そもそもの政治学の目的だったと思われます。

 

杉田先生:本来の政治学は、どんな法律や政策を作るべきかという、立法論的・政策論的なスタンスもとるべきなのですが、前述の歴史的な経緯もあって、これまでの日本の政治学では、こうしたアプローチはあまり見られませんでした。しかし、最近では日本でも公共政策の分野が台頭してきています。経済学や法学、場合によっては都市工学などとも連携して、地域の活性化につながるような議論を行ったり、政策提言も積極的に行うようになってきました。

 

※『ガイドライン』2015年9月号に基づき、高校生に対する記事として再構成して、ご紹介しています。

興味がわいたら

『デモクラシーの論じ方』

杉田敦(ちくま新書)

民主政治についての様々な考え方について、対話形式で明らかにしている。

[出版社のサイトへ]

 

『多数決を疑う』

坂井豊貴(岩波新書)

当然とされがちな多数決について、その限界を説明し、政治的な決め方には他の選択肢もあることを積極的に示す。

[出版社のサイトへ]

 

『代表制という思想』

早川誠(風行社)

政治において、代表というものがなぜ必要なのかを、わかりやすく説明。

[出版社のサイトへ]

 

関連記事