政治学/政治理論

18歳、選挙に行こう! みんなで社会を作ろう!

18歳選挙が実現!政治学を学び、政治行動へ、合意形成へ。

デモクラシー論のリーダー杉田敦先生と考える

杉田敦先生 法政大学 法学部 政治学科

第2回 政治学で何を学ぶ?

様々な意見を調整する能力も備わる政治学

 

1回目では、政治学の変化について杉田先生に解説いただきましたが、2回目は、先生の話を受け、今、政治学は何を注目しているのか、その学びはどのような意義があるのか、先生に協力いただきまとめました。

 

歴史から学ぶ「政治史」、データ分析する「政治過程論」

 

政治学には様々な専門分野がありますが、重視されているのが、「政治史」や「政治思想史」などの歴史的な視点から政治を考察する分野です。

 

過去の例を分析し、例えば、クーデターはこんな条件が揃うと起きやすい、といった分析を行います。政治の事実は後世になってから明らかになることが多いため、過去のデータを現代の政治の参考とするのです。

 

一方、今起きている政治現象をデータ化して研究しようという分野もあります。「政治過程論」です。例えば、ある属性の有権者がどの候補者や政党に投票するか(「投票行動」)などについては、選挙ごとに豊富なデータを得られるため、それを統計的な方法を使って分析することができます。 

 

各国の政治の仕組みや、福祉や財政などの特定のテーマを比較分析する「比較政治学」、特定の国や地域の政治について分析する「地域研究」という分野もあります。個々の地域の政治ではなく、国際的な関係に焦点を当てる「国際政治学」といった分野では、国家と国家の関係のあり方を追究したりするほか、国際連合などの国際組織のあり方についての考察なども行っています。

 

「行政学」は政治学の中では大きな分野です。財政予算制度や、中央政府と地方自治体の関係など、行政の仕組みに着目します。特に日本では、官僚の役割についてなど、盛んに研究されてきました。また、国や地方自治体が行う政策について具体的に提案や改善、評価を行う「公共政策学」も新たな分野として注目されています。

 

 

国家のあり方の見直しや憲法、地方分権などが近年のトピック

 

現在、政治学で注目されているトピックの1つに「主権国家の問い直し」があります。これまでは国が外交や福祉、教育などを行ってきましたが、近年こうした公共的なサービスの一部をNGOや企業が担うようになり、国家のありようが変化しつつあります。また、従来の主権国家とは違う広域的な組織であるEUといった存在や、環境問題など、国家単独では対応できない課題もあります。これらをテーマに研究がなされているのです。

 

また、「憲法」も注目されています。憲法に関する研究自体は憲法学者による憲法解釈が主ですが、憲法改正などが現実味を帯びてくると、改憲の是非や影響などが政治学者の扱う問題にもなります。

 

「地方の疲弊」も、大きな政治課題です。近年、地方分権のための取り組みが進められてきたものの、経済の不活性化や、少子高齢化など政治学の知見だけでは解決できない問題も多くあります。そこで経済学や人口学とも連携して、こうした課題に向き合おうとする動きが生まれてきているのです。また、廃案になりましたが大阪都構想や、道州制といった地方の統治の仕組みも近年話題のテーマです。

 

 

大学で何を学ぶか

 

政治学のカリキュラムは、大学によってかなり異なっています。多くの大学では、まず政治学の概念などについて学ぶ入門科目を学んだ後、「政治史」や「政治思想史」「政治理論」などの科目で、大まかな政治の流れを理解します。その後は、日本の政党政治について学ぶ「日本政治研究」や、「国際政治学」などを履修しつつ、各自の興味・関心のある科目を履修することが多いようです。例えば各国・地域の政治の仕組みや、日米・日中・日露などの特定の国家間の外交など、テーマを絞ってより深く学ぶこともできますし、平和構築論や安全保障論、環境論など各分野の政治を考える上で持っておくべき知識や関連の政策について幅広く学ぶこともできます。

 

 

政治を学ぶ意義は

 

政治学を学ぶ意義は、投票などの政治行動に際して、正しい知識を持って臨めるようになるということが、まずは大きいでしょう。さらに、政治学では、多様な人々が関わりあう中で起こる対立・紛争を前提とし、そこでどのように合意形成をするかを検討しようとします。そのため、政治学をきちんと学んだ人には、意見の違う人がいるのは当たり前という考え方が身につき、様々な意見を調整する必要な場面、また、そういう場面が多い仕事・職場や活動において、活躍するための力が備わると言えるのではないでしょうか。それが、法学部出身者が公務員やマスコミの道に進む人が多い理由の1つですし、地域やボランティアでの活動などでも活躍していく素養にもなっていくようです。 

 

※『ガイドライン』2015年9月号に基づき、高校生に対する記事として再構成して、ご紹介しています。

 

政治学の分野

 

分野名 概要
政治思想・政治理論

「政治」の中で論じられる、自由と平等、権力と正義、秩序と抵抗といった問題。そしてそもそも「政治」とは何か。こうした諸問題をいかに考えるか、そして歴史上どのように議論されてきたのかを扱う。

西洋政治思想史(政治学史)においては古典古代からほぼ19世紀までに至る思想の系譜を、現代政治理論・政治哲学は現代における諸理論を考察する。また西洋とは異なる思想伝統を有する日本やアジア諸国についても、日本政治思想史・アジア政治思想史が担当する。

政治史 主として近代以降の各国・各地域の歴史を政治学的観点から考察し、再構成する。場合によっては、内政と外交との連関に留意し、それ以前の時代の政治についても通史的検討を行う。日本はもとより、ヨーロッパ、南北アメリカ、中国・アジア、アフリカ、オセアニアなどを対象とする。
政治過程論

現代政治における民主主義に関する様々な問題について考察すると共に、それらを学問的な方法によって分析し、政治が向かう方向を見定めるための方法を探究する。

具体的には政治参加、投票行動、政治意識とイデオロギー、政党、利益集団、官僚、マスメディアと政治、といったテーマの研究を通して民主主義が機能しているかどうかを取り扱う。

 国際政治 主権国家体制の特質と、グローバル化に伴うその変容を理解するために、安全保障、軍縮・核不拡散、国際機関、国際政治経済、国際市民社会、平和構築、人権や環境などの地球的規模の諸問題に焦点を合わせ、主権国家や国際機関をはじめ、NGOや多国籍企業を含めて、諸主体の役割と行動とを考察する。あわせて、外交史(国際政治史)の側面から歴史上の変遷についても理解を深める。
比較政治・地域研究 民主化の進展、行財政改革、政府と市場との関係など、各国の政治・外交の諸問題をめぐって、その歴史的背景を解明すると共に、理論的・実証的に比較・検討を進める。歴史学と連携しつつ、各国の体制比較を行ったり、制度論などと連携しつつ、行財政改革や福祉国家の比較研究などを行ったりする。地域研究においては、ヨーロッパ、南北アメリカ、中国・アジア、アフリカ、オセアニアなどの各地域における政治のあり方を、歴史・文化・社会的背景にも注意しながら解明する。
行政学 主として現代日本における行政をめぐる諸問題について、歴史的背景の検討や他国との比較も含めながら分析する。行政の理念、行政の組織と人事、財政予算制度、行政における情報などに注目しつつ、政官関係、政策評価、市民参加、地方自治、中央・地方関係、行政改革、国際行政などのテーマを焦点とする。
公共政策 国際、国内を問わず、理論と実践を含めて、広く公共問題、公共政策、政策(科)学を扱う。主として民主主義の政府の活動を政策という観点から研究を行い、政策立案と決定、政策実施、政策評価など、政策の構造と過程に焦点を当てる。政策決定の科学としての体系性や、統治の範囲の広がりや自己統治に着目したガバナンス論、専門職としての政策分析にも関心を広げている。

(日本学術会議・政治学委員会「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 政治学分野」(2014)より抜粋)

 

興味がわいたら

『デモクラシーの論じ方』

杉田敦(ちくま新書)

民主政治についての様々な考え方について、対話形式で明らかにしている。

[出版社のサイトへ]

 

『多数決を疑う』

坂井豊貴(岩波新書)

当然とされがちな多数決について、その限界を説明し、政治的な決め方には他の選択肢もあることを積極的に示す。

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『代表制という思想』

早川誠(風行社)

政治において、代表というものがなぜ必要なのかを、わかりやすく説明。

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