植物バイオテクノロジー/植物分子細胞育種学
この分野は、比較的新しく(約30年前)に作られた分野であり、必ずしも、農学部だけで研究されているわけではなく、関係する分野が理学部や一部は工学部、薬学部にもあります。すなわち、いろいろな分野を横断する極めて学際的な研究教育分野といえます。
下記にない大学にも関連する分野は多くあります。ここでは、比較的複数の研究室が関与している大学を主に記載しましたので、リストにないから希望する大学にはないと思わずに調べてください。
植物バイオテクノロジー/植物分子細胞育種学の主な研究者

小泉望
大阪府立大学 生命環境科学域 応用生命科学類 植物バイオサイエンス課程/生命環境科学研究科 応用生命科学専攻
【分子生物学的手法を用いた研究】小胞体ストレス応答から、DNAメチル化、miRNA研究、ナスの分子育種まで、幅広く研究。同学類には、ゲノム科学、メタボロミックスの研究者もおり、植物機能の開発を連携して行っている

江面浩
筑波大学 生命環境学群 生物資源学類 農林生物学コース/生命環境科学研究科 生物資源科学専攻/遺伝子実験センター
【遺伝子組換え植物の開発】トマトやメロンを主に対象とし、遺伝子組換え技術を活用して、味覚改変タンパク質ミラクリンを産生させるなど、活発に育種利用を研究。生物資源学類内、ならびに、生物学類にもこの分野に関連する教員が多く、遺伝子組換え圃場を利用して活発に研究している。

小関良宏
東京農工大学 工学部 生命工学科/工学府 生命工学専攻
【細胞培養、分子生物学を基礎とし、植物細胞の有用性を研究】アントシアニンやベタシアニンといった花色の生合成研究とともに、マングローブを用いた耐塩性の研究を行う等、幅広い研究を展開している。

村中俊哉
大阪大学 工学部 応用自然科学科 応用生物工学科目/工学研究科 生命先端工学専攻
【ゲノム情報を駆使した有用遺伝子探索、植物ゲノム編集技術の開発等】テルペノイド生合成系について、甘草やジャガイモ等を対象に遺伝子を同定するとともに、有用物質の生産、毒アルカロイドの少ないジャガイモの作成など植物の遺伝子資源の有用活用による健康向上、食料増産等を研究している。

斉藤和季
千葉大学 薬学部/医学薬学府 総合薬品科学専攻
【統合オミックスを駆使した薬用植物のゲノム機能解析】薬用植物のゲノム機能科学と遺伝子資源応用に関する研究を推進している。メタボロミックスとトランスクリプトミックスを統合した遺伝子機能解析、並びに遺伝子ネットワーク解析の第一人者である。硫黄を含む有用物質の生合成系を主に研究している。

藤原徹
東京大学 農学部 応用生命科学課程 生命化学・工学専修/農学生命科学研究科 応用生命化学専攻
【植物の必須栄養の輸送の機構の解明、植物の栄養特性や代謝改善を通じた植物の改良】植物の必須元素のうち輸送機構のわかっていなかったホウ素の輸送体を単離し、ホウ素欠乏でも生育する植物、あるいは、毒物であるカドミウムの蓄積を低下する植物を作製するなど、植物の機能を栄養特性の観点から研究している。
なお、生物機能化学大講座・植物分子生理学研究室の篠崎和子教授の研究室では、植物の水分ストレス(乾燥や低温耐性)が研究されている。

芦苅基行
名古屋大学 農学部 資源生物科学科/生命農学研究科 資源生物科学専攻/生物機能開発利用研究センター
【突然変異体、野生種をもちいた育種】イネを対象に成長性や収量、環境ストレス耐性を研究している。浮きイネの伸びる原因遺伝子の単離を行うとともに、アジアやアフリカのイネを改良するWISHプロジェクトを推進している。

馬建鋒
岡山大学 環境生命科学研究科 生物資源科学専攻/資源植物科学研究所
【植物栄養学的観点から植物のストレス耐性、生産性向上を研究】植物のミネラルストレス耐性とミネラル輸送機構の解明による作物の安定生産を研究。これまでに、アルミニウム体制遺伝子やケイ素の輸送体、有害ミネラル元素の吸収集積に関わる遺伝子等を多数同定。

橋本隆
奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 先端科学技術専攻 バイオサイエンス領域
【シロイヌナズナやタバコの変異株や形質転換植物を用いて研究】植物細胞の伸長成長における細胞骨格分子の解析ならびに、タバコニコチン生合成系の研究をモデルにナス科有用アルカロイドの生産制御を研究。

松岡信
名古屋大学 農学部 資源生物科学科/生命農学研究科 植物生産科学専攻/生物機能開発利用研究センター
【ゲノム解析、分子遺伝学、遺伝子組組換え】イネの分子遺伝学、分子育種の第一人者。緑の革命に関わる半矮性遺伝子や種子数の増加に関わる遺伝子を単離し、スーパーイネの開発を進めている。

福田裕穂
東京大学 未来ビジョン研究センター
【細胞生物学を基本とし、分子生物学】植物の形づくりに欠かせない仮道管細胞分化の分子機構を解明し、さらにバイオマス生産への応用を先導している植物細胞分化研究の第一人者。

佐藤文彦
京都大学 名誉教授
【細胞培養、遺伝子組換え、合成生物学等】植物の作る有用二次代謝産物、特に、イソキノリンアルカロイド生合成系の解明から、その代謝工学、合成生物学による植物有用物質生産研究の第一人者。
植物バイオテクノロジー/植物分子細胞育種学が学べる主な大学

京都大学
農学部 応用生命科学科、資源生物科学科/生命科学研究科 統合生命科学専攻、農学研究科 農学専攻
総合大学であり、いくつかの学科において関連する研究教育がなされている。応用生命科学科では、生物・生命現象を化学のことばで理解するという観点が強く、資源生物科学科では、生物という観点より、基礎から応用までの研究が行われている。(主な研究室は、応用生命科学科では、分子細胞育種学研究室、植物分子生物学研究室、資源生物科学科では育種学研究室、植物生理学研究室など)
<主な研究室>
<主な研究室>

京都大学
理学部 理学科 生物科学系/理学研究科 生物科学専攻
理学部でも、植物の仕組みについて、外環境からのシグナルの受容と伝達、細胞小器官の分化や光合成機能などが分子レベルで研究されている。
<主な研究室>

東京大学
農学部 応用生命科学課程 生命化学・工学専修/農学生命科学研究科 応用生命化学専攻
総合大学であり、いくつかの学科において関連する研究教育がなされている。農学部生命化学・工学専修では、特に、植物の栄養特性や環境ストレス耐性に関して分子レベルから応用まで研究されている。
■応用生命化学専攻/応用生命工学専攻 生命化学・工学専修 HP
<主な研究室>

東京大学
理学部 生物学科/理学系研究科 生物科学専攻
植物の発生や分化の機構をより基礎的に研究しているが、バイオの世界では、基礎と応用は、かなり密着しているので、より基礎研究に興味のある方はこちらがお勧め。
<主な研究室>

筑波大学
生命環境学群 生物学類、生物資源学類 農林生物学コース/生命環境科学研究科 生物科学専攻、生物資源科学専攻/遺伝子実験センター
遺伝子実験センターとして形質転換植物デザイン研究拠点、遺伝子組換え圃場を持ち、実験室から、圃場まで連続して研究できる数少ない機関であり、植物バイオテクノロジーの分野の研究者が多く活躍している。
<主な研究室>

名古屋大学
農学部 資源生物科学科/生命農学研究科 植物生産科学専攻
我が国有数の植物科学の研究拠点であり多数の研究室がある。イネの分子遺伝学、育種のみならず、幅広く基礎から応用にかけて、研究を展開している。理学部にも、基礎分野において幾つもの有力な研究室が存在している。
<主な研究室>

大阪府立大学
生命環境科学域 応用生命科学類 植物バイオサイエンス課程/生命環境科学研究科 応用生命科学専攻
分子生物学を基盤としつつ、ゲノム科学、オミックスの分野を専門とする教育研究がなされている。また、2年次から「食生産科学プログラム」を開講し、「食料」の生産から加工、流通、消費に至る複雑なフード・システムの現状やリスク・マネジメントの実例を、体験的に学ぶことができる。
<主な研究室>

東京農工大学
農学部 応用生物科学科/農学府 農学専攻
植物工学分野では、樹木の細胞壁、あるいは、その成分であるリグニンの生合成と分解を研究し、新植物の育成を行っている。遺伝子工学分野では、植物-病原体の相互作用を研究し、病害抵抗性植物の作出等を行っている。また、細胞分子生物学分野では、植物のRNA干渉や環境ストレス耐性を研究している。
<主な研究室>

東京農工大学
工学部 生命工学科/工学府 生命工学専攻
花色であるアントシアニン、ベタシアニンの生合成やトランスポゾン、植物の耐塩性等を研究している。
<主な研究室>

千葉大学
園芸学部 園芸学科、応用生命化学科/園芸学研究科 環境園芸学専攻
国立大学唯一の園芸学部として、園芸学科の栽培・育種プログラム(栽培学分野、育種学分野)や応用生命化学科の応用生命化学プログラム(生命分子化学分野)等で、園芸植物の生産に関わる先端的栽培技術やそれらを支えるバイオテクノロジー等を幅広く教育研究している。生物生産環境学プログラムでは、植物工場の研究も行われている。
<主な研究室>

千葉大学
薬学部/医学薬学府 総合薬品科学専攻
薬用植物を中心にメタボロミックスとトランスクリプトミックスを統合した植物遺伝子機能解析、並びに有用植物作成に関する研究教育を推進している。
<主な研究室>

大阪大学
工学部 応用自然科学科 応用生物工学科目/工学研究科 生命先端工学専攻
基礎生物科学、生物化学、生物化学工学、生物情報物理、工学専門英語を5本の柱とした教育が行われている。植物を対象とする研究室は少ないが、工学的視点での物質生産を教育研究している。
<主な研究室>

東京農業大学
生命科学部 バイオサイエンス学科/農学研究科 バイオサイエンス専攻
植物の生理機能を遺伝子機能で解明し、育種改良することを目的に、植物細胞壁の改変や水分ストレスに関係するホルモンのシグナル伝達等を研究している。
<主な研究室>

日本大学
生物資源科学部 応用生物科学科、生命化学科、生命農学科/生物資源科学研究科 応用生命科学専攻、生物環境科学専攻、生物資源生産科学専攻
応用生物科学科 生体分子学研究室では、ミヤコグサをモデルにしたマメ科植物の分子遺伝学的研究やフラボノイド生合成系の研究が、また、生命化学科 植物栄養生理学研究室では、ファイトレメディエーションのための新機能植物の開発等が行われている。他に、応用生物科学科 植物細胞学研究室、生命農学科 園芸科学研究室などでも研究がなされている。
<主な研究室>
<主な研究室>
<主な研究室>

奈良先端科学技術大学院大学
先端科学技術研究科 先端科学技術専攻 バイオサイエンス領域
学部をおかない大学院だけの大学。持続的発展が可能な社会の実現を目指した先端的な研究と教育が特徴です。植物細胞・個体が有する様々な生命機能の解明を目指す基礎研究から、植物生産性増強や環境耐性増強等の環境・資源・エネルギー・食糧問題等の解決に向けた応用研究まで行っている。
<主な研究室>