環境・バイオの最前線
植物病理学が学べる大学
明治20年代、イネいもち病など植物の病気の研究のために東京大学に世界で最初の、その後北海道大学に植物病理学研究室が開設された。この2校から育った研究者が京都大、東北大、九州大といった旧帝大農学部、および岐阜、宇都宮、三重などの高等農林学校に研究室を作った。旧高等農林の大学からは現在も、優れた研究者を輩出し続けている。その後京都大はいち早く分子生物学を導入し、植物病理学をバイオサイエンスに変えるとともに、西日本の大学に多くの研究者を送り出した。この分野はチームで研究することが多いため、岡山大や鳥取大のように独自の研究を発展させているところも多い。
とくにおススメ

1.北海道大学
農学部 生物資源科学科
農学院 農学専攻
【発生生態、病原学】かつて日本の研究室の半分がその弟子といわれた故宮部金吾先生が育てた伝統ある研究室で、植物病理学では日本最大規模。研究の内容も多彩で、農業の現場に密着した分野では微生物による土壌病の防除あり、分子生物学に近いところでは、ウイルスに有用な遺伝子を乗せて植物に感染させる遺伝子導入(ウイルスベクター)の研究あり、といずれも最先端の研究に挑める。スタッフの層が厚く、指導の体制も充実しているので思う存分研究に打ち込める。
<研究者>
・増田税
・近藤則夫
・志村華子
<関係サイト>

2.東京大学
農学部 応用生命科学課程
農学生命科学研究科 生産・環境生物学専攻
【感染生理学】この分野では世界で最も歴史の古い研究室。植物病理学から発展した植物バイテクの拠点となっており、病害だけでなく、気候や土壌条件等の環境ストレスにも強い植物を作出する研究を行っている。農林水産省関連の研究所との交流が盛んなので、常に国家プロジェクトに関わる研究に立ち合えるのも強み。農学生命科学研究科にできた日本初の試みの東大植物病院が市民の話題を呼んでいる。
<関係サイト>

3.名古屋大学
農学部 資源生物科学科
生命農学研究科 植物生産科学専攻
【感染生理学】めざましい成果を上げ、注目を集めている名古屋大。植物体や細菌の分子レベルの研究の最先端を走る。発酵学、生物有機化学、イネゲノムなどのグループとともに農学系生化学の中核を担うアクティブな研究を行っており、植物バイオを幅広く学ぶことができる。
<研究者>
・吉岡博文
<関係サイト>

4.京都大学
農学部 資源生物科学科
農学研究科 応用生物科学専攻
【感染生理学】植物が病原体に感染して発病するしくみを、遺伝子の解析から突き止めようとする感染生理学の方法を作り上げた古澤巌先生の流れをくむ。特にウイルスによる発病のメカニズム研究は世界のトップレベル。ウイルスの遺伝子を組み換えて植物に感染させ、どのような条件で発病するかを調べることで、ウイルスに感染しない植物を作り出そうという試みが行われている。研究室には自由放任の伝統があり、様々な研究テーマを学生自身が選び取り、発展させられる。研究者をめざすならオススメ。
<関係サイト>

5.岡山大学
農学部 総合農業科学科
環境生命科学研究科 生物生産科学専攻
【感染生理学】植物体内で生産されて、病気の感染に抵抗しようとする注目の物質ファイトアレキシンを通して植物の抵抗性に関する独創的な研究を行っている。先生方は指導に熱心で面倒見がよく、学生もそれに応えて質の高い研究をしている。学会にも学生が大挙してやってくるので、「岡山軍団」の異名をとる。
<研究者>
・一瀬勇規
<関係サイト>
■総合農業科学科 応用植物科学コース 遺伝子細胞工学 サイト

6.大阪府立大学
生命環境科学域 応用生命科学類
生命環境科学研究科 応用生命科学専攻
【病原学、感染生理学、発生生態】植物ウイルスの分類を通して、生命活動のしくみ、生命の起源に迫る。ウイルスの観察に、実際に電子顕微鏡を使う研究室は珍しく、観察の好きな人にはたまらない。最近は植物ウイルスの発病機構の分子メカニズムについても、次々と新発見を続けている。カビの一種ピシウムの発生や生態を通して、有明海の環境問題や北極での地球温暖化の影響を研究するチームもある。
<関係サイト>

7.鳥取大学
農学部 生命環境農学科
農学研究科 フィールド生産科学専攻
【感染生理学】鳥取特産のナシの病気、ナシ黒斑病。その病原菌は、なぜか二十世紀ナシにだけ害を及ぼし、他の種類にはまったく影響がない。このような「宿主特異的毒素」の研究で日本をリードした甲元啓介先生、尾谷浩先生の業績を受け継ぎ、今も圧倒的な強さだ。地元の農業に直接貢献する、貴重な研究だ。
<関係サイト>

8.九州大学
農学部 生物資源環境学科
生物資源環境科学府 資源生物科学専攻
【防除】農薬に頼らない、環境に配慮した「生物農薬」の開発を推進する。生物農薬とは、自然界に存在する微生物の拮抗作用を利用し、病原微生物の活性を抑え病害をなくす期待の次世代防除法だ。そのための有用細菌の探索を行う。また、弱毒ウイルス(ワクチンウイルス)の効果についても分子レベル、植物組織レベルで研究している。
<関係サイト>

9.東北大学
農学部 生物生産科学科
農学研究科 応用生命科学専攻
【感染生理学】ウイルスによる植物病の発病のメカニズムをウイルスの側から研究する大学は多いが、植物の遺伝子の側から研究し、抵抗性の本体に迫ろうとするのが東北大の特徴だ。
<研究者>
・高橋英樹
<関係サイト>

10.静岡大学
農学部 応用生命科学科
総合科学技術研究科 農学専攻
【感染生理学、病原学】植物病の病原体のうち、細菌を専門に扱っている大学は日本ではここだけ。設備も、細菌研究に特化して充実。細菌を植物に接種して症状をみる、医学の手法と同様の研究ができる。現在バイオ産業の中心は細菌を使った物質生産だから、細菌をきちんと扱える研究者は貴重。しっかり技術を身につけたい。
<研究者>
・瀧川雄一
<関係サイト>
おススメ

11.神戸大学
農学部 生命機能科学科 環境生物学コース
農学研究科 生命機能科学専攻
【感染生理学】日本の植物病理学の原点のいもち病の研究ができる。糸状菌(カビ)の病原性に関係する遺伝子を取り出して、構造や機能を解明する研究では拠点の1つ。院生も多く、研究室に活気がある。
<研究者>
・土佐幸雄
<関係サイト>

12.岐阜大学
応用生物科学部 生産環境科学課程
応用生物科学研究科 生産環境科学専攻 流域圏科学研究センター
【発生生態】土壌伝染病研究では北海道大とともに日本をリード。北大に比べて、こちらは実際の防除技術の開発の比重が高い。土壌病の特効薬臭化メチルの2005年使用禁止を受け、新たな防除法開発に期待。
<研究者>
・景山幸二
<関係サイト>

13.宇都宮大学
農学部 生物資源科学科
農学研究科 生物生産科学専攻
【病原学】ヒトのワクチンのように、毒性を弱めたウイルスを予め植物体内に入れ、病害を防ぐ方法を開発し、ジュース用トマトなどで実績を上げている。企業が注目する最前線の研究に参加できる。
<関係サイト>

14.岩手大学
農学部 植物生命科学科
総合科学研究科 農学専攻
【病原学、分類学】ウイルスを遺伝子配列の特徴から分類し、生命の進化の謎に迫る研究ができる。着実に研究成果が上がってきているとの声がある。
<関係サイト>

15.奈良先端科学技術大学院大学
先端科学技術研究科 先端科学技術専攻 バイオサイエンス領域
【抵抗性育種】植物が病気から身を守るしくみを分子レベルで解明し、バイオインフォマティクスにつながる研究を推進。育種分野のためこの位置だが、研究は植物バイオの最先端だ。
<関係サイト>

17.佐賀大学
農学部 生物資源科学科 生物科学コース
農学研究科 生物資源科学専攻
【進化学】カブモザイクウイルスの遺伝子の研究で世界的に注目を集めている大島一里先生が在籍。ゲノム配列の違いを連続的に追跡することで、まさに生命体の「種」の進化の本質に迫る。
<研究者>
・大島一里
<関係サイト>

18.東京農工大学
農学部 応用生物科学科
農学府 農学専攻
【感染生理学、土壌病害】植物の感染生理学にも、土壌病害研究の両方に強い。身近な植物の見直し、生物制御の仕組みを学生にやさしく説き、バイオコントロールによる生物農薬の開発を推進。病害の防除が難しい代表格である土壌伝染病の不完全子のう菌を用い、分子生物学的に解析する。
<研究者>
・有江力
<関係サイト>

19.弘前大学
農学生命科学部 食料資源学科
農学生命科学研究科 農学生命科学専攻
【病原学】特定の植物に寄生したときに限って壊滅的な被害をもたらすやっかいな病原体、ウイロイドの研究を行う世界でも数少ない研究室。地方にあっても世界の注目が集まる最前線の研究ができる。
<関係サイト>

20.明治大学
農学部 農学科
農学研究科 農学専攻
【抵抗性育種】理化学研究所や企業から優秀な研究者を集め、遺伝子組み換えによる病害に強い植物の作出や、微生物を使った病害防除など、時代の先端を行くホットな研究に力を入れ、注目。
<関係サイト>

21.東京農業大学
農学部 農学科、国際食料情報学部 国際農業開発学科
農学研究科 農学専攻、国際農業開発学専攻
【病原学】国際食料情報学部では、数少ない女性研究者の第一人者夏秋啓子先生と熱帯地方のウイルスを研究し、東南アジアの農業に貢献したい。
<関係サイト>
■国際食料情報学部 国際農業開発学科 熱帯作物保護学研究室 サイト

22.高知大学
農林海洋科学部 農芸化学科
総合人間自然科学研究科 農学専攻
【病原学、感染生理学】特産のピーマンの持つ抵抗性遺伝子とウイルスの関係についての研究に優れる。カビや細菌の研究にも強く、小規模ながら植物病理学の基本的な分野がひととおり学べる。国際共同研究も盛んでとてもアクティブ。
<研究者>
・曳地康史
<関係サイト>
ユニークな大学

23.法政大学
生命科学部 応用植物科学科
理工学研究科 生命機能学専攻
【植物病予防学】非常にユニークなのは、生命科学部の中に植物の病気を診断するプラントドクターの人材を養成する「植物医科学専修」のコースを設けていること。日本初の試みだ。
<関係サイト>