海洋工学

海はエネルギーと産業の宝庫 ~人類の課題に海洋工学で挑む 

村井基彦先生 横浜国立大学 理工学部 

建築都市・環境系学科 海洋空間のシステムデザイン

『大規模浮体構造物―新たな海上経済空間の創出』

マリンフロート推進機構(鹿島出版会)

広大な海上空間を活かす浮体構造物。海の上に道をつくる。空港をつくる。発電所をつくる。森をつくる。レジャー施設をつくる…。海上は人が暮らす第二の空間です。浮体構造物の技術は着々と進化し、海に浮かぶ新しい施設の創造が始まっています。本書は浮体構造物に関する研究成果を主に技術的な観点から紹介。浮体構造物の可能性が感じられます。⇒さらに詳しく

第1回 21世紀は海洋の時代

~海のエネルギー利用で日本も資源大国に

 

村井基彦先生
村井基彦先生

人類の誕生から現在まで“陸の時代”が続いてきました。いろいろな文明が進化していく間、人類は陸上をどんどん開発してきました。しかし、現在、人口増加の問題、それに伴う食糧問題、水の問題、エネルギー問題、環境問題など解決しなければならない問題が山積みになっています。これらの解決は、陸上だけではまかないきれず、海を上手に使わないと難しいと言われています。「21世紀は海洋の時代」と言う人もいるくらいです。

海には、波や海流などに、多くのエネルギー源があります。地球上の表面積の7割は海ですし、日本で言えば、陸地の10倍もの面積があります。日本は陸の面積は世界で60番目ですが、海の面積(排他的経済水域)では6番目です。広さプラス深さを考慮した海の体積で考えると、世界で第4位。日本の海は非常に深いのです。海が深いと、陸上の技術が簡単には通用しなくなってきます。そこで、海を「使える」状態にするのが海洋工学の役割なのです。

省エネに力を入れている間に出遅れた日本

日本は省エネが相当進んでいる国です。1970年代に石油ショックが起きた際に、「日本はエネルギーがないから、少ない石油でいろいろなことができるように」と、一生懸命考えてきたからです。しかし、一方で、その間、他の国は「他にエネルギー源はないか」と考え、海洋エネルギーの利用に乗り出していたのです。


実海域実験を伴う発電システムの開発状況
実海域実験を伴う発電システムの開発状況

この図は、1990年から2010年くらいまでの(横軸)、海洋での発電システムの開発状況を表しています。1990年の時点では、日本の温度差発電(黒い■)の実験機「伊万里」の発電容量は80kwレベルで、日本は海洋エネルギーについて、世界的に見ても技術的にトップレベルでした。しかし、2000年前後から状況が変わり、温室効果ガス排出量の削減のために自然エネルギーを活用することよりも原子力を優先させる方向に舵を切ってしまい、この10年間ほとんど何もしてきませんでした。ちょうど同時期、ヨーロッパ各国は、自然エネルギーに着目し、海流・潮流発電を中心に(赤い)、実験をスタートさせ経験を積み、2005年には、波力発電や風力発電で大きな発電量を実現しています。


しかし、遅れたにせよ日本には過去の蓄積があるので、頑張ってヨーロッパ各国に追いつきたいと思います。


国も海洋エネルギー利用促進を後押し

こうした状況をうけて、国も、平成19年に「海洋基本法」を制定、平成25年には新たな「海洋基本計画」を策定し、「海洋資源の開発および利用の推進をしましょう」という姿勢を打ち出してきました。内閣では、総合海洋政策本部も立ち上げています。洋上風力発電の実証研究を銚子沖、北九州沖、長崎県沖、福島県沖で行う、波力、潮流、海流、海洋温度差発電などの実機の開発を行うなど、施策が具体的になっています。

 

村井先生の研究室HP(海洋空間利用工学研究室)

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※出版元に在庫なし
※出版元に在庫なし

『大規模浮体構造物―新たな海上経済空間の創出』

マリンフロート推進機構(鹿島出版会)

広大な海上空間を活かす浮体構造物。海の上に道をつくる。空港をつくる。発電所をつくる。森をつくる。レジャー施設をつくる…。海上は人が暮らす第二の空間です。浮体構造物の技術は着々と進化し、海に浮かぶ新しい施設の創造が始まっています。本書は浮体構造物に関する研究成果を主に技術的な観点から紹介。浮体構造物の可能性が感じられます。

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『日本の海洋資源 -なぜ、世界が目をつけるのか』

佐々木剛(祥伝社新書)

日本は、実は、水産資源や海洋エネルギー・鉱物資源など、豊富な資源を備えた「海洋資源大国」。本書は、日本が持っていると考えられる資産としての海について紹介しています。海洋エネルギーに関しては、ここ4~5年の最新の動向にも触れています。技術的な話や工学的な視点は多くはありませんが、社会とのつながりなどもデータから見えてきて、誰にでも読みやすい視点だと思います。⇒さらに詳しく

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『日本は世界一の環境エネルギー大国』

平沼光(講談社+α新書)

変化に富んだ日本の自然環境がもたらす様々な再生可能エネルギー、世界に先駆けて開発が進む日本近海に眠る非在来型天然ガスのメタンハイドレート、日本の英知を駆使して今まさに足を踏み出さんとしている宇宙エネルギー開発。「資源に乏しい……」といわれてきた日本ですが、実は自国の中に豊富な資源を抱えているのです。⇒さらに詳しく

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『坂の上の雲』

司馬遼太郎(文春文庫)

第7巻での日露開戦のくだりで、造船や浮体工学での基本のイロハになる専門用語が出てきます。大学1年生の授業を通してその専門用語をきっちり学べば、より理解が進むでしょう。

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『海図 面白くてためになる海の地理本』

ロム・インターナショナル(KAWADE夢文庫)

海と社会についての「へぇ」がいっぱい紹介されています。海に囲まれた国の住人として、海を利用する為には、文も理も関係なく、当たり前に海について知っているとよいなと思います。

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『船舶一問一答』

日本船舶海洋工学会(編集)(海事プレス社)

一般の人に船の魅力を知ってもらうために、海洋工学の基本となっている船舶海洋工学に関して、代表的な原理から少しマニアックな言葉の定義など、一問一答形式にまとめてみました。技術的な話だけでなく、船舶海洋工学を学べる大学も紹介しています。船舶海洋工学を学べる大学が意外と少ない、だからこそ、そこで学べば貴重な存在になれるのです。⇒さらに詳しく

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『海洋エネルギー利用技術(第2版) 発電のしくみとその事例』

近藤俶郎、経塚雄策、永田修一、池上康之ほか(森北出版)

海洋エネルギーの第一線の研究者である著者陣が、多くの図表を用いて平易に解説した技術的な入門書。潮汐、波浪をはじめとする各種エネルギーについて、体系的に網羅しています。海洋深層水利用、スマートグリッド/マイクログリッドといった注目の技術も。また、アジアを中心に建設が進む大型潮汐発電所、先駆的な欧州の実証フィールド、沖縄県の海洋温度差発電実証プロジェクトなど、国内外の最新の動向も紹介しています。技術者向けであり、値段は高いですが、最新動向がわかる数少ない本です。

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