海洋工学

海はエネルギーと産業の宝庫 ~人類の課題に海洋工学で挑む

村井基彦先生 研究インタビュー

横浜国立大学 理工学部 

建築都市・環境系学科 海洋空間のシステムデザイン

◆先生の専門である海洋工学とはどのような学問なのでしょうか。

村井基彦先生
村井基彦先生

海洋工学とは、海という空間をどうやって利用するかを考え、実現するための学問です。海には魚などのいきものだけでなく、波、風、流れ、海底火山、海洋資源、海洋深層水など様々なものがあります。日本は周囲を深さのある海に囲まれ、排他的経済水域の広さは世界屈指の国です。2007(平成19)年より、海洋基本法が施行され、海洋の開発・利用そして海洋環境の保全との調和が日本の海洋政策の柱の一つに位置づけられました。今後ますます海の活用は注目されるようになり、海の可能性を引き出すために、海洋工学の出番も今まで以上に多くなるはずです。


★先生の研究を教えてください。

「海洋空間をいかに利用して、海のポテンシャルを引き出すか」が研究テーマの柱になっています。主に海洋開発には欠かすことが出来ない浮体に関して、波の中での運動や揺れについての研究が多いです。浮体の応用例としては、浮体式海上空港、浮体式洋上風車、波浪発電システムなどありますが、それぞれに関する研究も行っています。研究では単に工学的な視点だけでなく、持続可能性という観点から海洋環境に関する研究や、時には経済的な成立性など含めた研究課題になることもあります。


◆生み出された成果は、社会的にどのような意味を持ち、どのように社会に貢献できると思われますか。

例えば海洋再生可能エネルギーは近年脚光を浴びていますが、単に技術的な可能性を探るだけでなく、持続性という観点から経済的にもまた環境的にも成立するようなモノの実現に寄与できると思います。発電時の負荷は大きくなくても、作るときに大きなエネルギーを使ってしまっては本末転倒ですから。海に囲まれた日本が率先して海洋利用の技術開発をしていくことは、地球の表面の7割を占める海の利用を通して地球規模での人間活動に寄与できます。縁の下の力持ちのような学問ですが、この分野のがんばりで、堂々と22世紀に地球を引き渡せると思います。


◆研究テーマに至ったきっかけや、その研究の発想はどう考えて生まれてきたか、教えてください。

高校生の頃は横浜のみなとみらい地区やお台場の埋め立てが非常に盛んでした。人が便利になるために、海を埋め立ててばかりで良いのか、という漠然とした不満を高校生の時から少し持っていたと思います。きっと釣りが好きだったので、港のそばが埋め立てられると釣れるポイントや魚種が変わる感じがするというのも動機の一つだったと思います。


人がやっていること、特に流行っていることや当たり前とされていることになぜ?と疑問を持ったり、もっとこうしたら良いのにと思ったりする癖を持つことから始まると思います。


◆高校生が授業や課外活動等で、海洋工学に関する研究をするとして、高校生でも問えるような課題を挙げていただけますか。

・現在、人間の活動の中心は陸上ですが、海上の浮体上に持って行った方が案外うまくいきそうなことはありますか?
・オリンピックの競技を浮体式の施設で実施するとしたら、どんな競技は出来そうですか、また出来なさそうな競技はありますか?
・ある日、浮体式洋上風車から突然電気が来なくなってしまいました。その原因を議論しながら、その原因の原因を想像を膨らましながら掘り下げて、いくつもの破壊のシナリオを作ってみよう。
(例えば、ケーブルが切れた→何故?→大きな力で引っ張られた→何故?→大きな波で思ったよりも漂流した→何故?→設計時に考えていた波よりも大きな波が着た→何故?→設計時の波の情報ではこんなに大きな波がくるというデータが無かった→何故?→3年間ぐらいの周辺海域を通った船からの情報を使っていた→何故?・・・という感じで)


◆先生が指導されている学生の研究テーマ・卒論テーマ、大学院生の研究テーマを教えてください。

 

・浮体式洋上ファームに関する研究
・浮体式洋上風車の波の中での運動に関する研究
・係留に関する研究
・海洋開発でのFPSO(海洋上で石油や天然ガスを生産・貯蔵・積出する浮体式施設)やライザー(海底油田などで海底資源を洋上に送る管)のシステムに関する研究
・波浪発電に関する研究
・海上空港などの超大型浮体や大型船舶に関する研究
・海洋環境や海洋開発の社会的受容性(環境影響評価等)に関する研究


◆先生のゼミや研究室の卒業生は、どんな仕事をされていますか。 

 

・国の船舶海洋に関する研究機関(海上安全技術研究所)での研究員:共同研究から就職に繋がったが、海洋開発に関する様々な研究に携わっています。
・造船会社や海運会社での設計や運航の仕事:特に浮体の運動や海の力学の知識や研究を通しての経験が生きていると思います。
・船級協会(日本海事協会など)での船舶や海洋構造物の安全性認証に関する仕事や海洋再生可能エネルギーに関する国際基準作りに関する仕事:研究開発とは少し異なるが船舶や海洋構造物の海洋空間利用における安全性の追求としての研究者や検査官として専門を活かして活躍しています。
・プラント企業での設計開発:海洋開発の最前線に関する企業の中で広く設計・運用を技術者として手がけています。

 

◆高校時代は、どのように学んでいましたか、何に熱中していたでしょうか。

大学からは野球(軟式)をしています
大学からは野球(軟式)をしています

部活はブラスバンド部で、高校時代に好きな科目は、体育、数学、社会でした。

 

今にして思うと、数学に対してだけは、「高校生までの教科書で出てくる程度の公式は自分で気づきたい」「納得してない公式は使わない」というこだわりを持っていました。当時としては、それが出来ないと本当に新しい問題にチャレンジするときに困ると思っていました。多分、無類の別解好きだったと思います。ポイントは例題、解き方、考え方を絶対に見ない(教科書を読まない)ことです。もちろん解き方としては決してスマートではなく、勉強法としては効率的ではないと思いますが、前例にとらわれないようにしたり、今持っている技術・知識を駆使しようとしたり、まず自分やってみようとしたり・・・と考える習慣づけに繋がっていると思います。授業中に先生の話をちゃんと聞かずに自分勝手な別解の探査に没頭をしていた自分を温かい目で見守ってくれた先生に恵まれたことは確かです。

 


◆中高生に今後の生き方・学び・働き方へのヒントとなり、元気づけられるような本や映画などをお教えください。


・伝記全般
歴史的に偉人と言われる人が、どんなときにどう考えてどう行動をしたか、生き方のヒントが一杯詰まっていると思います。


・星新一の短編(ショートショート)
書かれたときにはSFと言われていたことが、徐々に現実になってきていると感じることがあります。そんな馬鹿な、とつっこみをしつつ、いや待てよ、という視点で読むと別の楽しさがあります。


・『アポロ13』 (トム・ハンクス主演、アメリカ映画)
酸素漏れを起こし生命の危機に面したアポロ13号。そこにあるもので、出来る限りのことで、解決策を見出そうと奮闘する地上スタッフの活躍に工学の究極の頑張りを見たようで感動しました。



村井先生の研究室HP(海洋空間利用工学研究室)

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