無線通信、ソフトウエア無線

携帯電話の基礎知識 ~決して誤らない通信の実現へ

村口正弘先生 東京理科大学 工学部 電気工学科

第2回 意外と知られていない携帯電話の話 

~軽く感じる工夫、通信を切ったりつないだり 

重い・軽いは何で決まる?


NTT時代、携帯を小型化するプロジェクトの中で、よく議論されたのが、「携帯は軽くしないといけない。しかし、そもそも人間の「軽い・重い」の感覚はどこからくるのか?」という疑問です。


実は、人間の重さの感覚は、比重1が基準となっています。人間の体は、成人では約3分の2程度、幼児や赤ちゃんは8割以上が水で、ほぼ比重1です。比重1だと見た目通りと感じ、比重1以下では軽く、逆に1以上では重く感じます。現在の携帯は、小さいものだとだいたい100ccくらいの容積なので、80gなら軽い携帯、120gならちょっと重い携帯ということになります。


通話時間・待ち受け時間を延ばす工夫


携帯の通話時間・待ち受け時間の長さは、電池の容量で決まります。私は高周波回路についてずっと研究してきました。小型で軽量の携帯を作ろうとすると、電池を小さくするために回路の効率を上げないといけない。いろんな部門の担当者が低消費電力化の努力をしましたが、回路で努力しても、うまくいってだいたいマイナス10%くらいで、効率を倍にするのは、まず不可能なのです。


しかし、今の携帯やスマホは、初期の頃に比べると、ずいぶん、長持ちします。重さを変えずに一日以上使えるようになった要因は、なんでしょう。その答えは、「間欠動作」です。間欠動作とは、通話中に回路の一部を寝かせたり、必要になったら起こしたりという省電力動作をさせることです。


携帯を使っている間、ずうっと回線を独占していると思いがちですが、実は電話会社は、ある時間はこの人、次の時間はこの人というふうに、切ったりつないだりして、通信をブツブツに切っています。携帯の中の回路も必要のない回路はオフにし、必要なときだけオンにします。使う人が気付かずに携帯はずうっとオン状態で、回線もずうっと接続状態と思いこむ範囲内であれば許される訳です。この間欠動作を有効にするためにはシステム自体がそれに対応している必要がありますし、回路が高速で高機能である必要がありますが、今はそんなことが十分に可能になっています。

電池も進化する


携帯電話は、朝自宅を出て夜帰る時まで、ずっと充電無しで使うことができるのが基本です。電池はそのくらいの容量が必要です。


ところが、昔はなかなかそうはいきませんでした。「アナログ」第1世代は、ニッケル・カドニウム電池(ニッカド電池)を使っていました。これだと、100gの電池に対して4Whくらいの容量でした。「デジタル」第2世代になって、ニッケル水素電池が使われるようになり、約1.5倍、100gあたり6Whくらいになりました。


その後、もっと容量がほしいということで出てきたのが、リチウム・イオン電池です。これは100gで20Wh、ニッカド電池に比べたら5倍になります。当初は、より高効率なリチウム電池を使おうとしましたが、非常に不安定で、火災事故を起こしました。そこで、安定性の良いリチウム・イオン電池が使われるようになったのです。

 

多機能化が携帯の形を変える


一生懸命小さくする努力をしていた携帯電話ですが、今は、インターネットを見たり、ゲームをしたり、いろいろな用途で使われます。そうなると「画面が小さいのは駄目だ」という話になって、ディスプレイは大きい方が良いという時代になりました。


ただ、重いと感じると売れなくなるので、わざわざ中をスカスカにして、比重を1以下にして軽く見せるということもしています。同じ重さなら、ある程度持ちやすくて、軽く「感じる」方がいい、詰めこんで小さくする必要はないという時代に入っているということですね。


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