環境・バイオの最前線
発酵学・有用微生物学が学べる大学
食品や農産物加工として発展してきた学問ゆえに、今もその知恵、技術は農学部が優れている。ただ、昔からの醸造を究めようとする東京農業大を除けば、バイオ産業に貢献するアイデアを持つ大学が優勢だ。また東京大農学部は発酵学部誕生の学部。これに京都大、北海道大、九州大などが続く。地方からも山口大や富山県立大が加わった。後発工学組は、発酵工学をいち早く取り込んだ広島大、大阪大が農学部に対抗。広がる生物工学、バイオテクノロジーはここから育った。
とくにおススメ

1.京都大学
農学部 応用生命科学科
農学研究科 応用生命科学専攻
化学研究所
【応用】もともとは単に微生物の働きを利用する製造業でしかなかった発酵分野に、酵素を中心とした有用微生物学という新しい領域を切り拓いたのが、1960年代に教授だった故緒方浩一先生。以降その流れを受け継いで、様々な酵素から有用物質を作るという、応用性の高い研究で常に世界をリードしてきた。現在その伝統はいくつかの研究室に広がり、企業との共同研究も多いので、研究テーマが非常に多彩。いろんなことを知りたい人、発酵関連の企業に就職したい人にとってこれ以上のところはない。
<研究者>
・阪井康能
・小川順
・栗原達夫
<関係サイト>

2.東京大学
農学部 応用生命科学課程 生命化学・工学専修
農学生命科学研究科 応用生命工学専攻
生物生産工学研究センター
【基礎、応用】発酵学誕生の学部。遺伝子組み換えを利用した有用微生物の開発をいち早くスタートさせるなど、研究の目新しさ・先取りにかけては随一。現在は、そんな先取の気風から生まれたもののはじめのうちは理解もされなかった環境微生物学が脚光を浴びていて、本家であるはずの発酵学は少々押され気味の様子。しかし伝統的な発酵、組み換えを利用した抗生物質の生産性改良など研究テーマは幅広く、拠点の1つとして外せない。
<研究者>
・大西康夫
・石井正治
・古園さおり
<関係サイト>
■(古園先生所属の)細胞機能工学研究室のページ

3.北海道大学
農学部 生物機能化学科/農学院 農学専攻
【応用】わらで包んで自然発酵させて作っていた納豆を、純粋培養で衛生的に作る技術を考案するなど、創設以来、実際の産業に貢献するような研究が多い。現在も企業出身の教官を中心に、遺伝子組み換えを利用して発酵の生産性を上げる研究など、産業に近い先端的な研究に力を入れている。
<研究者>
・横田篤
<関係サイト>

4.大阪大学
工学部 応用自然科学科 応用生物工学科目
工学研究科 生命先端工学専攻
生物工学国際交流センター
【応用】本来の応用指向性の強い実学の伝統を生かし、酵母を用いて医薬製品製造のための細胞工場、バイオテクノロジーを活用したリン資源のリサイクル、土壌微生物の有用物質の生合成研究、酵母のリソース開発研究等々、産業との連携のみならず、地球規模の応用を行っている。
<関係サイト>

5.広島大学
工学部 第三類(応用化学・生物工学・化学工学系) 生物工学プログラム
統合生命科学研究科 統合生命科学専攻
【基礎】基礎の分野である微生物生理学が特筆。より先端的な研究をするべく1998年に創設された独立研究科(先端物質科学研究科)に研究の拠点が築き上げられ実績を出している。
<研究者>
・黒田章夫
<関係サイト>

6.九州大学
農学部 生物資源環境学科 応用生物科学コース
生物資源環境科学府 生命機能科学専攻
【応用】乳酸菌が作る抗菌剤バクテリオシンの研究で知られる。これは耐熱性もあり風味も変えないので食品保存料として期待され、現在はその生産システム(バイオリアクター)の開発も試みている。
<関連サイト>

7.山口大学
(1)農学部 生物機能科学科
(2)工学部 応用化学科
創成科学研究科 農学系専攻/化学系専攻
【基礎、応用】酢酸菌の研究に伝統があり、そこから生まれたキノプロテインの研究では世界的に評価が高い。基礎を重視した研究で派手さはないが、地方にありながら世界の最先端研究に触れられる。アジアでの人材育成もめざして設立された「中高温微生物研究センター」でもこの分野の研究ができる。タイとの共同研究をベースに耐熱性発酵微生物(酵母・酢酸菌)の利用をすすめる研究が盛んだ。
<研究者>
・(1)山田守
・(2)赤田倫治
<関係サイト>

8.富山県立大学
工学部 生物工学科
工学研究科 生物工学専攻
生物・医薬品工学研究センター
【応用】これまで化学工業で作っていた化学物質を、酵素反応を利用して生産しようとしている。分解できないために環境破壊を招く化学物質に代わる、環境にやさしい化学工業につながる研究だ。
<研究者>
・浅野泰久
<関係サイト>

9.東北大学
農学部 応用生物化学科 生物化学コース
農学研究科 生物産業創成科学専攻
【応用】細菌の毒素タンパク質やプロテアーゼなどのタンパク質の研究で有名。発酵産業のナンバー1、ナンバー2から研究者を教官として招き、発酵学にも力を入れてきた。何か役に立つものを作りたいという人に向くだろう。
<研究者>
・阿部敬悦
・五味勝也
<関係サイト>

10.島根大学
生物資源科学部 生命科学科 食生命科学コース
自然科学研究科 農生命科学専攻
【基礎、応用】地方大には珍しく、研究の基礎と応用のバランスがいい。カニの甲羅(キチン・キトサン)を利用した微生物の基礎的な研究を進めると同時に、心臓病の薬となるユビキノンというビタミンのバクテリアを使った合成法は特許、応用面も充実。
<研究者>
・川向誠
<関係サイト>
おススメ

11.名古屋大学
農学部 応用生命科学科
生命農学研究科 応用生命科学専攻
【基礎】有用微生物の産業応用(食品・酵素・薬品・化学製品)を目的に、基礎、応用の両面から研究する。ゲノム情報や生化学・分子生物学的解析技術などを駆使した基礎研究を行う。さらに微生物酵素の構造や分子進化についての研究も進めている。
<関係サイト>

12.京都大学
工学部 工業化学科 工業基礎化学コース
工学研究科 合成・生物化学専攻
【応用】地下50m以深から100℃でも生育する超好熱菌などを探し出し、その耐熱性など特殊能力を生かして、汚水処理や石油汚染除去など環境改善や、酵素などの物質生産をめざして研究。
<研究者>
・跡見晴幸

13.東京農工大学
工学部 生命工学科
工学府 生命工学専攻
【応用】もともと発酵系ではないが、微生物酵素の研究を通じて、臨床診断に用いられているバイオセンサーの開発といった応用分野でユニークな研究を展開。研究を企業化しようという努力もしている。
<関係サイト>

14.早稲田大学
先進理工学部 応用化学科
先進理工学研究科 応用化学専攻
【応用】協和発酵工業(現・協和発酵キリン)の研究所出身の教官を中心に、アミノ酸、抗生物質、ビタミンなどの生理活性物質の生産プロセスの開発や工業化を行ってきた。最近は、微生物による環境浄化など環境関連の研究も展開。
<研究者>
・木野邦器
<関係サイト>

15.香川大学
農学部 応用生物科学科 食品科学コース
農学研究科 応用生物・希少糖科学専攻
国際希少糖研究教育機構
【応用】自然界にほとんど存在しないが、キシリトールのように利用価値の高い糖がある。そんな珍しい希少な糖類を、微生物酵素を使って作ろうと奮闘。希少糖による「新しいライフサイエンスの創出」と「香川を糖質バイオ産業の拠点」を目指して、地域の産学官連携体制を組みつつ、研究開発プロジェクトが進行。希少糖研究センターも中心拠点の1つとして、関連学部150人以上の研究者のほか、地元の研究機関や企業などとも連携して研究開発が進められている。
<研究者>
・高田悟郎
<関係サイト>

16.日本大学
生物資源科学部 応用生物科学科
生物資源科学研究科 応用生命科学専攻
【応用】有用微生物研究のパイオニア、別府輝彦先生(東京大学名誉教授)のリーダーシップのもと、拠点化に成功し、21世紀COEにも採択。共生微生物を使った石油分解、食品劣化の原因となる菌の共生の解明など、実用化に期待のかかるものが多い。
<関係サイト>

17.奈良先端科学技術大学院大学
先端科学技術研究科 先端科学技術専攻 バイオサイエンス領域
【基礎、応用】微生物のバイオサイエンスを基盤に、食糧・エネルギー、環境、生命に新たなバイオインダストリーの技術開発をめざす。具体的に、酵母、細菌を用い、環境ストレスへの適応機構を研究し史、微生物の複雑かつ巧妙な機能に対する理解を深める。
<研究者>
・高木博史
<関係サイト>

18.三重大学
生物資源学部 生物圏生命化学科
生物資源学研究科 生物圏生命科学専攻
【基礎】微生物は様々な環境に適応して生息している。これら微生物の持つ多彩な機能に着目し、その機能について明らかにし、さらにその機能を人工的に改変・増幅することにより、我々の生活向上に役立たせることを目標としている。植物バイオマスの主要成分であるセルロースの有用物質への微生物変換の研究が大きなテーマだ。
<研究者>
・田丸浩
<関係サイト>
■(田丸先生所属の)水圏生物利用学研究室 HP

19.東京農業大学
応用生物科学部 醸造科学科、生命科学部 バイオサイエンス学科
農学研究科 醸造学専攻、バイオサイエンス専攻
【醸造、バイオサイエンス】マスコミでも大活躍だった名物教授、小泉武夫先生は退官したが、酒、味噌、醤油といった古典的な発酵・醸造学では随一。しかし今やバイオサイエンス学科という新しい研究分野が躍進中。生命現象を遺伝子レベルで研究・解明しながら、食料、健康、環境といった地球規模の問題解決をめざす。
<関係サイト>
発酵学・有用微生物学を知る
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