環境・バイオの最前線

発酵学・有用微生物学

学問ことば解説

有用物質:発酵が生み出す人間に役立つモノ

 

この分野での有用物質とは、微生物が作る人間にとって役立つ物質の総称。微生物が作る有用なものは、必ずしも発酵食品関連とは限らない。むしろそれ以外の可能性が広まり、生体内で働く酵素や薬となる抗生物質などを生産する可能性のほうが注目され出して、使われ始めた言葉。微生物が生来の機能で作り出すビタミンなど微量物質が有用物質であるほか、微生物が本来は作り得ないが人間にとって役に立つ物質(例えばホルモン)などが、人間の遺伝子を導入して作られたりする場合も有用物質である。

 

 

酵素化学:まさにバイテク産業の生みの親

 

生体は、人間が操作して行う化学反応とは異なる、非常に複雑な化学反応を行うことができるが、それは酵素という触媒が作用しているからにほかならない(酵素とは、遺伝子にスイッチが入って発現した結果できてくる、1万から100万にも及ぶ大きな分子量をもつタンパク質)。この化学反応は、単細胞生物である微生物でも起きており、しかもそれは多細胞生物と違ってとらえやすい。そんな微生物における酵素や、酵素による化学反応をとらえることが、酵素化学。この成果もあり、今では、微生物から我々にとって役立つ酵素を取り出したり、さらに微生物を生かす場所の条件を操作したりして、人間に役立つ物質を意図的に作らせることができるようになった。したがって、酵素化学こそ発酵学・有用微生物学の中核となる分野であり、発酵学・有用微生物学が遺伝子工学と関係しながらも、化学をもとにすることを象徴している。

 

 

代謝工学:微生物工場のシステム化が、工学部にバイオを育てる

 

代謝とは、ホルモンなどが作られる生合成や光合成を代表とする、物質が次々に新しいものに変わっていく反応過程のこと(酵素が触媒になる場合が多い)。代謝工学は、その代謝の過程を制御し、いかに効率よく目的物質を生産するかを研究する。工学部に最初に生物工学系学科を作った大阪大や岡山大などが、すでに化学プラントを育てていた工学の発想で、農学系学部が行っていた分野を取り入れ、代謝を「システム」としてとらえたことで発展。工学部のバイオエンジニアリングのもととなった学問分野である。

 

 

補酵素:反応の陰の主役が、今病気診断で活躍

 

酵素は高分子タンパク質だが、補酵素は、その酵素にくっついて酵素の行う化学反応を手助けする低分子の有機化合物。分子量は大きくても1000程度。ポストゲノムとしてタンパク質の立体構造が解明される中、補酵素の反応における役割もよりわかってきて、例えば、PQQ(ピロロキノリンキノン)やFADを補酵素として持つ酵素を用いて血糖値を簡単に測る、糖尿病診断のためのセンサーも生み出されている。

 

発酵学・有用微生物学

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