みらいぶ春休み特別企画トークライブ

笑い飯・哲夫が語る テツガクとの出会い

~高校時代の読書がもたらしてくれたもの~

vol.1 哲学科は「名は体を表す」人ばかりだった?! 

今日は、「テツガクとの出会い」という堅いタイトルで、今から50分ばかりおしゃべりをさしてもらいます。

 

この前、こんな本を出版しました。『ブッダも笑う仏教の話』(サンマーク出版)という仏教の話ですが、実は前にも仏教の本を出版さしてもらったことがあって、それは般若心経という、お経の現代語訳の本、『えてこでもわかる 笑い飯哲夫訳 般若心経』(ヨシモトブックス)です。今回は2冊目の出版ということになります。

 

僕は大学の時に哲学科に行っていました。仏教も哲学っぽいところがあるんですね。ちなみに、僕は河合塾に行っていたんです。浪人して、河合塾の上本町校に行って関西学院大学に入ったわけです。

 

そもそも、「何でおまえは漫才師をやっている芸人やのに、仏教の本とか出版してんのや」という話になると思うので、ちょっとその辺から説明をした方がいいですかね。

 

うちは奈良のけっこう田舎の方なんで、近所のお寺さんが月に一回ご先祖様の命日にお経をあげに来はって、仏壇の前でゴニャゴニャゴニャと言うてはるんです。こういうのがお経なんやろうな、と子どもの時から聞いていたんですけれど、その中で、ちょいちょい格好いい響きの言葉があるんですよね。「なんか言うてんな、ここの響きが格好ええなぁ」とか思っていて、それがずっと気になっていましてね。それで大学に行ったときにちょうど哲学科やったし、調べたら、「なかなかお経って、格好いいこと言っているんだ。内容が面白いな」と。それで、般若心経とかお経をバーッと書けるようになったんですよ。書けるようになった時は、もう芸人をやっていたんですが。

 

芸人はネタを作らにゃダメなんですけど、ネタ作っていると、行き詰まる時があるんですよ。で、行き詰まった時に何かいい知恵はないかなと思って、「手を動かしていたら何か思いつくかもわからんな」と思って、般若心経が書けるからネタ帳とかにバーッて書いていたんですよ。だから、僕のネタ帳にはちょいちょい般若心経があるんですね。

 

でも芸人をやっていながら般若心経を書いているというのがばれたら恥ずかしいから、誰にも言っていなかったんですよ。それが、ある番組で抜き打ちの荷物チェックみたいなコーナーがあって、僕の荷物を勝手に先輩が探ったことがあったんですよ。そしたらネタ帳から般若心経が出てきたというので「おまえ、気持ち悪いなあ」という話になりましてね。その頃吉本興業に出版の部署ができまして、そこから「おまえ、般若心経が好きやったら、今の日本人にわかりやすい般若心経の現代語訳の解説本を出してみいへんか」ということで、最初の本を出させていただきました。

 

お坊さんのタマゴの子どもたちに合掌して迎えられたことも…

そうしたら、いろんなとこから仏教講座をやってくれという話がありまして、ある時、京都の妙心寺というお寺から、小学生・中学生・高校生くらいの子たちに何か仏教の話をしてくれ、という仕事をいただきました。ゆくゆくはお寺の住職さんになっていくような子たちが100人くらい集まって合宿してはったんですかね。

 

その時ほんまにびっくりしたんですが、出ていく前に通路のところで僕が待機していたら、お寺の住職さんがすごく堅苦しい感じで僕の紹介をしてくれているんですよ。「今から笑い飯哲夫さんが、仏教のありがたいお話をしてくださいますから、みなさん心して聞くように」ってね。「心して聞くように」なんて言うたら、お笑いの舞台の前振りじゃないわけですよ。「やばいな。今日、ぜんぜん笑うてくれへんのとちゃうかな」みたいな感じで、ちょっと不安な思いもあって、とりあえず、自分だけはテンションを上げて、「どうも~」みたいな感じで出ていったのですよ。拍手してくれるかなと思うたら、拍手どころじゃなくて、全員がきっちり正座して合掌している…(会場 爆笑)。ほんまに仏さんを迎える感じで迎えてくれて。えらいとこに来てしもたな、と思ったわけですね。

 

こんなことをずっとやりながら、ある時、仏教好きで有名な、みうらじゅんさんという方と一緒に仏教講座をするという仕事が入りまして、そこにサンマーク出版の編集者の方が聞きに来てくれていて、話がおもしろいから本にせえへんかということで、今回の本の出版に至った、ということなのです。

 

 

ふだんお笑いの番組などで、「おまえ大学行っていたんやろ、まじめやな」と言われると「いえいえ、僕が行っていたのはラーメン大学ですよ、ラーメン大学のチャーシュー学部シナチク学科に行ってました」といつも言うているんですが、ほんまは関西学院大学文学部哲学科に行っていたのですよ。

 

何で哲学科に行っていたか、と言えば、僕の名前が「哲夫」で、哲学の「哲」の字が入っている。よく『名は体を表す』という言葉があるじゃないですか。だから自分から名は体を表しに行ったろ、せっかく「哲」の字が入ってるんだから、哲学やったらええんちゃうか、と思ってね。で、行ってみたのですが、これがなかなか難しい学問でした。

 

哲学科に入って最初の時、30人くらいのゼミだったんですが、そこでなぜこの学科に来たのかというのを一人ずつプレゼンしていくというのがあったんです。みんな「生きるとは…ということを見つめていて」とか言わはるんですよ。哲学やるくらいだからお堅い子が多いんです。「僕はカントをずっと愛読していてカントの純粋理性批判は…」とか。「わしゃ知らんわ。まじめな奴いっぱいおるわ~」なんて中で、ちょっと笑かしに行ったろと思って「何で哲学科に来たのかと言いますと、僕は哲夫という名前なので、名は体を表しに来たんですぅ」という感じで言うたら、何も受けなかったんですよ。「ああ、あかんなぁ、やっぱり堅い人には受けんのんか」と思って、最後にその30人の名簿をもろうたんですよ。したら、名前に「哲」の字が入る奴が10人くらいおったんですよ。「そりゃ受けんわ。同じことを思っている奴がこんなにおるわ!」(会場爆笑)

 

 

笑い飯 哲夫さんの本

『ブッダも笑う仏教のはなし』

(サンマーク出版)

こんなにおもしろかったら、ブッダも笑って許してくれる!?

人気お笑い芸人がおくる、笑って学べる「脱線しまくり」な仏の教えとは?

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『えてこでもわかる 笑い飯哲夫訳 般若心経』

(ヨシモトブックス)

大学の哲学科で、古今東西のあらゆる哲学を学んだ哲夫が書いた「般若心経」の本。真面目なようでボケ倒す!ボケているようで真理を突く!新たな般若心経の形を浮き彫りにします!

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