車両工学・自動車工学

高校数学で解く“未来のぶつからないクルマ”

林隆三先生 東京理科大学 工学部第一部 機械工学科

第2回 なるべく小さなハンドル操作で障害物を避けるには
~ハンドル操作と車両の動きの関係を知ろう

このクルマのポイントは、目一杯ハンドルを切ってできるだけ安全に避けるという方法ではなく、障害物をギリギリで避けるにはどうしたらよいか、ということになります。これは実は、なるべく小さなハンドル操作で障害物を避けるにはどうしたらよいか、ということと同じになります。

これを考えるには、まず「クルマはどういうふうに動くのか」ということがある程度わかっていないといけないので、ここからは車両の動き方について説明をします。

 

クルマのハンドルを一定の角度傾けて走り続けると、車両が描く軌跡はどんな図形になるでしょうか。免許を持っていない人でも「どんどん曲がっていくだろうな」というのは想像できますよね。ハンドルを切って、ずっと切りっぱなしでそのまま走り続けると、車両は円を描いて旋回します。「ハンドルを切ったら、クルマは円を描いて旋回する」ということを覚えておいてください。

じゃあハンドルをどういうふうに切ればいいかというと、ハンドルを右に切ると右に旋回します。ただ、そのまま切っていると、壁にぶつかってしまうので、どこかでクルマをまっすぐに戻さないといけません。


ということで、どこかで左向きにハンドルを戻すのですが、左にハンドルを切ったままだと、また円軌道を描くことになるので、こんなふうに円弧、あるいは二つの円を組み合わせて、軌道を考えていけばいい、ということが想像できると思います。二つ円を描いてそれをくっつければ、理想的な軌道となります。

図4:障害物を避けるには、障害物に接しない2つの円弧を考えればよい
図4:障害物を避けるには、障害物に接しない2つの円弧を考えればよい

もう一つ大事なのは、ハンドルを切る量です。ハンドルを大きく切る場合と小さく切る場合では、どういう違いが出てくるでしょうか。


これも想像するのはそれほど難しくないと思いますが、ハンドルを大きく切ると旋回する円の半径が小さくなります。逆に、あまり切らないと、あまり曲がらずにほとんどまっすぐに走っていきます。ですので、先ほど述べた「できるだけ少ないハンドル操作」というのは、言い換えると、できるだけ大きな旋回半径、できるだけ大きな軌道を描いて旋回する、ということになります。

図5:ハンドル操作と車両の動き方の関係
図5:ハンドル操作と車両の動き方の関係

興味がわいたら

『ダイナミック図解 自動車のしくみパーフェクト事典』

古川修(ナツメ社)

走る、止まる、曲がるのクルマの基本がわかる。ハイブリッドカーや電気自動車、次世代に期待される燃料電池車などの基本メカニズムも図解。写真とイラストがふんだんに使われていて、理解が進みます。『図解入門 よくわかる最新自動車の基本と仕組み』(玉田雅士、藤原敬明/秀和システム)などもおススメです。

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『グランツーリスモ』(ゲーム)

(ポリフォニー・デジタル、ソニー・コンピュータエンタテインメント)

PlayStation用のドライビングシミュレーションゲーム。駆動方式やサスペンション設定の違い、車両制御の有無などによる車の動き方の違いを体験できます。他のゲームよりも車両の動きが実際に忠実だと思います。(他のゲームでは、楽しさやゲーム性を重視しているので、クルマの動きは現実離れしていることが多いです。)危険な限界走行をするほど車両特性の違いはわかりやすいのですが、普通の公道ではできませんので、このようなゲームでバーチャルに体験するのがよいでしょう。

 

『「自動運転」が拓く巨大市場 2020年に本格化するスマートモビリティビジネスの行方』

井熊 均(日刊工業新聞社)

スマートモビリティとは、ITS(高度道路交通システム)とGPS、各種センターをネットワークで繋ぎ、渋滞緩和などに活用する、交通システムのこと。こうしたシステムがあって全自動運転は実現します。技術革新とモビリティサービスが生み出す新ビジネスの可能性がわかります。

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