農業機械学、フィールドロボティクス

進化しつづける農業ロボット。作業面積が飛躍的に増大

飯田訓久先生 京都大学 農学部 地域環境工学科

フィールドロボティクスに触れる一冊

『農業ビジネスマガジン vol.12』

(イカロス出版)

農業の規模拡大が進む一方、地方では人手不足。そんな中規模以上の農場で存在感を増すロボット、ドローン、ICTなど、最新テクノロジーを使った農業がわかる。

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第1回 農業は動物、植物から、微生物までを扱う実学 ~意外に就職がいい地域環境工学

私の所属するのは、農学部地域環境工学科です。そこのフィールドロボティクス分野で農業ロボットの研究をしています。専門分野の話の前に、まず農学というのはどんなことを学ぶのかということを話したいと思います。

 

農学とは、農・林・水産業のすべてが含まれます。基本的には人間以外の生物を扱う分野になります。人を扱う、人を診断したいのであれば医学を志望するのがいいでしょう。農学は、それ以外の動物、植物、昆虫、魚、土壌微生物などの細菌などを研究対象にした、非常に実用的な学問ということになります。

 

その中でも主要な位置を占めるのが農業です。農業は土地があれば、そこに種を撒き肥料をし、作物を育てます。収穫をし、そこから利益を得ます。一見シンプルに見えますが、実はこれを無駄なくやるために農家の人はいろいろ考えます。栽培法、施肥の仕方、自分ひとりで農作業をするのは大変なので機械を使い、無駄のない土地の有効利用に取り組みます。

 

それらの問題を実用的に解決していくために、専門は作物学、育種学、植物栄養学、栽培管理学、農業土木学から農業経営学まで多岐にわたります。農学のベースになる学問は、生物、化学、物理です。そしてそれらすべてに共通するのは数学。私のフィールドロボティクス分野でも、機械制御の計算のために数学の知識は必要になります。 

京都大学農学部には6つの学科があります。資源生物学科、応用生命科学科、地域環境工学科、食料・環境経済学科、森林科学科、食品生物科学科です。私の所属する地域環境工学科は、研究対象として水、大気、機械を扱うことが多いので、どうしても物理系の色が強い学科になります。志望者は少ないんですが、実は意外に就職は非常によろしいところであります。大学院進学後の学生も含めた卒業生の進路には、農林水産省をはじめ、農業機器メーカー、家電メーカー、IT機器会社などがあります。みなさんもそのあたりを考えながら、農学部を選んでみてください。

 

興味がわいたら

『農業ビジネスマガジン vol.12』

(イカロス出版)

“強い農業"を実現するためのビジュアル情報誌。今回の特集は、「ロボット、ドローン、ICT…。農業の「困った」に応える最新テクノロジー」。農業の規模拡大が進む一方、地方では人手不足。そのため、農業ロボットの実用化が進んでいるといいます。中規模以上の農場で存在感を増すロボット、ドローン、ICTなど、最新テクノロジーを使った農業がわかる。

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『農業がわかると、社会のしくみが見えてくる ―高校生からの食と農の経済学入門』

生源寺眞一(家の光協会)

世界の食料、日本の農業、毎日の食生活。3つの複雑な関係をていねいに読み解き、食と農への理解を深めるユニークな高校生のための「授業」。世界の穀物貿易、日本の食料自給率、農村コミュニティの役割など、現代の食と農の全体像をつかめる。著者は農業経済学を教える大学の先生。

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『いまこそ農業』

(イカロス出版)

農家の出身ではないけれど、農地もコネもないけれど、農業をちゃんと仕事にしたい人のための総合ガイド。農作物は「作ることより売ることの方が難しい」とのこと。先輩たちはここをどう切り抜け、3~5年で利益を出していったか。多くの事例から紹介する。

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『生物生産工学概論―これからの農業を支える工学技術』

飯田訓久、小川雄一、近藤直、中嶋洋、清水浩(朝倉書店)

飯田先生の本。農業機械、畜産機械、精密農業と情報化、自動化・ロボット化、バイオセンサー等、これからの農業を支える工学技術について書かれた大学の教科書。

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