都市交通計画

持続可能な都市交通とまちづくり

中村文彦先生 横浜国立大学 理工学部 建築都市・環境系学科

第2回 アジアの道路事情 ~あきれた道づくり

大気汚染がとまらない

この写真はインドネシアの首都・ジャカルタ、すごい数の車です。人口が1千万人くらいなのに、今でも市の予算の約9割を道路建設に使っています。道路建設が進むと、「道が空いたな」と思って、さらに車やオートバイが増えて、こんな状態になってしまうのです。


渋滞に巻き込まれている人たちも気の毒ですが、深刻なのは大気汚染です。発展途上国には排気ガス規制がゆるい国がまだ多い。暑いからエアコンをつけているので、渋滞している間もエンジンをかけ、排気ガスは出し放題。こんな場所が世界中にいくつもあります。

とんでもない歩道

道路の作り方自体がおかしい例もあります。下の写真は歩道ですが、これでは、歩行者は歩けません。

現地には日本のエンジニアも大勢が行って道路を作っているのですが、その現場を見ていると「車を流さなきゃ」ということばかりに視点が行って、「歩行者のために」という考え方が希薄です。歩道が歩きづらいから、ちょっとお金を稼いだらオートバイや車を買い、その結果ますます歩かなくなる……という現象が起きているのです。


この写真は歩道を広く作った例です。広く作ったために違法駐車場になってしまい、オートバイまでが走る始末で、歩道の意味がありません(左下)。

写真の右は広い道路を渡ろうする危険なシーンですが、この対策のために歩道橋を架けると、左上のように露天商が並ぶということも起きています。右の写真のような行為を防止するため、この地上50cmくらいの中央分離帯を1m50cmにした例があるのですが、翌朝見ると、そこにはしごが架かっていました(笑)。

さて、ここで考えなければならないことは、車道を渡ることの是非は別として、渡る人の用事を生み出しているのは、実は街の形状です。道路の向こうに何かの用事があるから渡るのです。道のこちら側に家があって、反対側においしい屋台があれば渡るでしょう。でも、おいしい屋台が全部家側にあれば、渡らないかもしれない。つまり、道路の両側に何があるのか踏まえて、なぜ彼らがはしごまで架けて渡るのかということを考えなければならないのです。


多くの人が多様な動き方をする街の真ん中に、こんな広い道路があっていいのか。あるいは、こんな広い道路の両側に雑多なことがあっていいのかという問題から、街の形を考える必要があるのです。


興味がわいたら Bookguide

『バスでまちづくり 都市交通の再生をめざして』

中村文彦(学芸出版社)

当たり前すぎて人気がないバス。しかしその能力は意外と高く、これを新しい交通まちづくりに活かさない手はない。基幹的な大量輸送から個別対応のディマンドバスまで、環境、福祉、都市開発などにおける役割、経営問題など、あらゆる角度からバスとは何かを見直し、その可能性を提示する。中村先生の著書で、実際に本書を読んで、横浜国大を受験してくれた人が何人かいるとのこと。

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『都市と交通』

岡並木(岩波新書)

35年以上前の新書だが、都市と交通を新聞社論説委員の目線から多角的に述べていて、現在読んでも共感できるところの多い入門書。私たちが毎日利用する駅や歩道、地下街、あるいは電車やバスは、利用者の立場に立って設計・運行されているか。車があふれる大都市の姿は変えられないのか。こうした不合理や危険性に光をあて、諸外国と比較しながら、都市交通の現実的な改革への道を考える。ここから未来の都市の在り方、それを支える交通とは、を考えてほしい。

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『富山から拡がる交通革命―ライトレールから北陸新幹線開業にむけて』

森口将之(交通新聞社新書)

今、富山では、人と環境に配慮した、公共交通を軸にしたまちづくりが着々と進められている。地方都市で、世界的な潮流となっている先進的公共交通政策がなぜ、どのように可能になっているのかがわかる。

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『LRT-次世代型路面電車とまちづくり』

宇都宮浄人、服部重敬(交通ブックス)

まちづくりと一体化した整備が世界各地で進む次世代型路面電車、LRT(ライトレール・トランジット)。開業はこの30年間に120都市余にものぼる。欧米はどうやってLRT導入を進め豊かなまちづくりを実現したのか。事例も豊富に紹介し、LRTの本質に迫る。

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『地域交通政策づくり入門─生活・福祉・教育をささえる』

土居靖範、可児紀夫(自治体研究社)

地域の交通は、住民生活をささえる基礎的な条件。市民参加で質の高い公共交通をつくりあげた岐阜市の例ほか、福祉と交通問題を解決したある町の例、スクールバス運行による生徒の安全確保と学校の魅力化を実現した例など、各地に広がる地域交通システムづくりの実際を紹介。地域交通総合政策・基本条例案を提案する。

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『コミュニティ交通のつくりかた: 現場が教える成功のしくみ』

森栗茂一、猪井博登、野木秀康(学芸出版社)

地域づくり・まちづくりの基礎に交通がある。議論の場づくりから工程表と評価まで、大都市郊外・地方都市・過疎化地域の事例を紹介。あわせて交通NPOのネットワーク活動も語った。住民、事業者、行政が、どんな取り組みをし、活性化できたのか、当事者が語る。

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『トラムとにぎわいの地方都市 ストラスブールのまちづくり』

ヴァンソン藤井由実(学芸出版社)

フランスを代表する環境都市、欧州の元気な地方都市としてドイツ・フライブルクと並び称せられ、世界中から視察が絶えないストラスブール。優れたデザインのトラムに代表される総合的な都市交通政策によってまちの活性化を実現。「人が住みたくなるまちづくり」の全貌を紹介。

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