19歳でアジアに飛び出し、映像授業で起業

「五大陸ドラゴン桜e-Education」代表 税所篤快(さいしょあつよし)さん


バングラデシュの貧しい農村で、映像授業によるe-ラーニングを実践し、「バングラの東大」といわれるダッカ大学に合格者を輩出させた税所さんが、「失恋をバネにアジアで一人前の男になろう」と、19歳でアジアに飛び出した起業家魂を語りました。

 

左は、税所さんの著書。

『突破力と無力 ― 挑戦し続ければ世界はきっと変わる!』(日経BP社)

vol.1 きっかけは失恋。グラミン銀行に着目し、バングラデシュで映像授業をスタート


税所篤快さん
税所篤快さん

「ドラゴン桜」をご存知ですか。落ちこぼれが東大を目指すマンガです。僕たちの「五大陸ドラゴン桜e-Education」はアジアのいろんな国で、同じようなことにチャレンジしています。


なぜこんなことをしたかというと、失恋がきっかけです。早稲田大学1年のとき、彼女にふられ頭の中が真っ白な灰になりました。こうなったら中途半端な男は卒業して、アジアで修業して一人前になるぞと思ったのです。そんな時知ったのが、バングラデシュのグラミン銀行でした。この銀行はすごく特殊な銀行で、主に貧しい女性を対象に無担保で少額の資金を貸し出します。ここに興味を持った私、グラミン銀行に詳しい秋田大の坪井ひろみ先生に電話しました。その日の夜行バスで坪井先生に会いにいったのです。


一か月後、僕はバングラデシュに行きました。ある貧しい農村の学校で、村人に聞き取りのインタビューをしました。バングラデシュでは、学校で教える先生の数がなんと4万人足らないことを知りました。そのときひらめいたのが、高校時代に通っていた塾の東進ハイスクール。ここの授業はすべてDVD授業でした。このやり方ならバングラデシュの先生不足を解消できるぞと考え、「ドラゴン桜e-Education」をプロジェクトしたのです。


すぐにグラミン銀行の創設者、ムハマド・ユヌスさんを訪ねました。ノーベル平和賞を受賞されたユヌスさんに話すと「DO IT DO IT GO AHED!」です。「前へ!前へ!前へ!」と。もううれしかった。すぐに大学に戻り休学届を出しました。そして再びバングラデシュの首都ダッカに行きました。


ここでびっくりしたのは、アジアでも一番貧しい国の一つといわれるバングラデシュの中心街が、予備校街として発展していることでした。予備校の1つを訪ねると、「今でしょ」ですっかり有名になった東進ハイスクールの林修先生のようなカリスマ教師が、ここにもいるんですよ。でも彼らの授業を受けるには、だいたいバングラデシュの村人の半年分くらいの給料が要る。それで僕は彼らの授業の映像を撮らせてもらい、バングラデシュのなかでも貧しいエリアの村でDVD授業を行うことにしたのです。その結果、農村の高校生30人中、1人がバングラデシュの東大といわれるダッカ大学に合格。そのほかの生徒も続々と国立トップ大学に合格したのです。

税所さんの活動を知るbookguide

『突破力と無力 ― 挑戦し続ければ世界はきっと変わる!』
税所篤快(日経BP社)
アフリカ東部のソマリランドという国に大学院を創るというプロジェクトに乗り出した税所篤快さん。戦略のなさにより計画が暗礁に乗り上げるなど、様々な困難に直面。そこで感じた「無力感」をいかに持ち前の「突破力」で切り抜けていくのか――。挑戦しつづけることの意義、人間としての成長、そしてメンターの大切さを考えさせる1冊。

 

★税所さんよりメッセージ★

高校生のみなさんには「ボーダーを超える勇気」を感じ取ってほしいと思います。未承認国家ソマリランドでの僕たちの挑戦は前代未聞のことばかりでした。ソマリ人の仲間が失踪したり、副大統領と急に記者会見しなければいけなくなったり、過激派に命を狙われたりと、様々なトラブルの中でしっかりと自分の身を守りながら活動していかなければなりませんでした。その分、未知なる領域での挑戦はエキサイティングで楽しいものでした。ぜひみなさんには、境界線を一歩踏み越えて挑戦する勇気ときっかけをつかみとってほしいと思います。(ソマリランドは外務省の退避勧告が出ていますので行かないでくださいね。)

特に読んでほしいのは、暗殺予告を受けてから、大学院の開校セレモニーを行うか否か決断を迫られる瞬間が書かれた最終章です。スリリングな駆け引きの中で進行していくプロジェクトのリアルを、みなさんにも感じていただけると思います。そして全章にわたって繰り広げられる師匠の米倉誠一郎先生との対話(説教)は非常に鋭く、みなさんも「うんうん」とうなずきながら読めること間違いなしです。おたのしみに。

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『「最高の授業」を、世界の果てまで届けよう』
税所篤快(飛鳥新社) 
ネットやDVDを駆使してバングラデシュの貧しい農村で大学合格者を輩出した24歳の早大生、税所篤快さんが、その後、「最高の授業を世界に届けよう」と、ルワンダ、ヨルダン、ガザ地区など展開した「五大陸ドラゴン桜」プロジェクト全体について書かれている。
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税所さんからのおススメbookguide

『「社会を変える」を仕事にする ─社会起業家という生き方』
駒崎弘樹(ちくま文庫)
元ITベンチャー経営者であり、東京の下町で「病児保育サービス」を始めた駒崎さんの本。僕が社会起業という言葉を知ったはじめての本です。読みやすくお腹を抱えて笑ってしまうところもあれば、ほろりと涙がこぼれる箇所もあります。この本を読み終わったあなたはきっと新しいことに挑戦したくなると思います。
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『グラミン銀行を知っていますか ―貧困女性の開発と自立支援』
坪井ひろみ(東洋経済新報社)
貧しい女性たちに無担保で融資し、彼女たちの自立を支援するバングラデシュの伝説の銀行・グラミン。秋田大学の坪井先生が、バングラデシュの女性たちの活躍を非常にわかりやすく描いています。バングラデシュに行きたくなること間違いなし!

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『ムハマド・ユヌス自伝』(上・下)
ムハマド・ユヌス&アラン・ジョリ

(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
バングラデシュが誇るグラミン銀行の創始者であり、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスの自伝です。上記の本『グラミン銀行を知っていますか』と合わせて読みとさらに楽しめます。社会に対して挑戦しながら生きる大変さと素晴らしさが詰まった本です。解説は僕が担当していますので、そちらもぜひ(下巻)。【発行日:2015年9月8日】

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