筑波大学 学問本オーサービジット2017

※こちらは筑波大学の先生の本の詳細ページ、および、筑波大学の実施要領のページです。

◆実施要領◆

◆どんな先生が来るの?・どんな本が読めるの?◆

※[ ]内の数字は、提供可能な冊数を示します。

人文系

●青木三郎先生

『ことばのエクササイズ』

青木三郎(ひつじ書房)[5冊]

この本は大学で言語やコミュニケーションについて学ぼうとする高校生のみなさんに向けて書かれたものです。誰でも自分のことばとは一生つきあっていかなければなりません。一生使い続け、ともに生きることばが何を表現できるのか。反対に言い表すことのできないものは何か。ことばにはどんな力があるのか。どんな性質や仕組みを持ち、どのように機能するのか。ことばについての認識を深めるために、16のエクササイズを通じて、ことばの性質を感じ取れるようにしました。人間らしく生きるための心の力、ことばの力を発見するためのきっかけになることを願っています。

●五十嵐沙千子先生

『他者性の時代~モダニズムの彼方へ』

河上正秀編(世界思想社)[5冊]

※五十嵐先生が執筆した「「生命倫理」入門」をオーサービジットの対象とします。

 

生きるって何だろう? 死ぬって何だろう? 幸せって何だろう? …これは、みんなが悩む人生の問題や生命倫理の問題を、ふつうの言葉で、読む人と一緒に考えていく、そういう本です。哲学の本って本当はそういうもの。ふん、ふん、なるほど…と、読んで著者と一緒に対話していくうちに、生命倫理の問題も、それから現代思想の中心問題も、いつのまにかあなたの頭に入っているはず。でも、それだけじゃない。これを読んだあなたはきっと、現代を生きている、まだ会ったことのない人たちの問題や思いを、他人事でなく一緒に考えていけるはず。ただわかりやすいだけじゃなくて、これは、ここからあなたが出発していける本なのです。

●五十嵐沙千子先生

「コーチングにおける教師と生徒の関係本当に楽しい授業を共に生きていくために」

五十嵐沙千子(慶応大学出版会、『教育と医学』2015年7月号)[10冊]

授業なんか楽しくない。小さい頃からずっとそう思ってきました。毎日、教室に座って退屈な授業を受けるのは本当に苦痛でした。そんな私が「先生」になっちゃった!…この本は、授業と教室が嫌いな「先生」が、「先生」から脱出していく本です。そして、どうすれば授業や教室が本当に楽しい場所になるかを考えた本です。面白い授業・楽しい教室って、きっとあなたの学校でも実現できるはず。それを著者と、それからいろんな生徒たちと、もしかするとあなたの学校の先生たちとも一緒に探していければいいなと思います。…さて、あなたは、教室って好きですか?

●木田剛先生

『安定を模索するアフリカ』

木田剛・竹内幸雄編(ミネルヴァ書房)[2冊]

アフリカはどんな場所だろう? 世界にある地域の中でも日本ではあまり馴染みがないアフリカ。このような疑問に様々な領域の専門家が答えてくれるのがこの本です。どのような社会があり、人びとはどのような暮らしをしているのだろう。人権は? 経済は? 治安は? 紛争は? 貨幣は? 言語は? 農業は? 貧困は? 医療は? 国際関係は? 日本の関わりは? この本ではアフリカが歩んできた歴史を踏まえて、いくつかのキーワードと国を選んで、グローバル化の時代にある現代のアフリカについて説明しています。あなたも未知の世界をのぞいてみませんか。

●佐藤吉幸(佐藤嘉幸)先生

『脱原発の哲学』

佐藤嘉幸(人文書院)[3冊]

本書は福島第一原発事故の衝撃をきっかけとして書かれたもので、原発をめぐる社会的考察、脱原発の必要性を、哲学的観点から考察しています。哲学的観点とはこの場合、社会的に共有されている「常識」を前提とせず、より根本的なレヴェルで考える、という意味です。そうした観点から明らかになるのは、1)原発という技術の持つ危険性がその技術の基礎になった核兵器の危険性と重なっている、2)原発の持つ危険性のため、原発の運転は様々な差別と切り離しがたい、3)原発事故のもたらす社会的帰結は、近代に起きてきた公害の帰結ととても近い、ということです。こうした問題に関心を持つ皆さんと議論できることを、楽しみにしています。

●佐藤吉幸(佐藤嘉幸)先生

『新自由主義と権力』

佐藤嘉幸(人文書院)[4冊]

本書は、現代社会を広く覆っている「新自由主義(ネオリベラリズム)」という社会・経済的な原理について、その具体的なメカニズムは何か、それが私たちの生活にどのような影響を及ぼしているか、その圧力から逃れるためにどのような生き方を試みればいいのか、といった観点から考えた本です。新自由主義とは、人々を強制的に競争させ、それによって社会を活性化させる、という考え方ですが、そうした圧力を与える存在を本書では「新自由主義権力」と呼んで批判的に論じています。内容が難解に感じられる場合は、第一部だけを読んで下さい。現代社会について、社会のオルタナティヴなあり方について、皆さんと議論できればうれしいです。

●津崎良典先生

『唯物論』

オリヴィエ・ブロック(津崎良典ほか訳)(白水社文庫クセジュ)[5冊]

人間の身体を含めた物体のほうが精神よりも重要だと主張する哲学的な立場が唯物論です。その歴史は非常に古く、古代ギリシアに「哲学」が誕生した時点にまで遡ることができます。しかし、高校の倫理の教科書や解説書では、ほとんど無視されています。なぜでしょうか。精神ほうがこの世界では重要だと主張する観念論につねに抑圧されてきたからです。そして、この観念論の立場にたって哲学史の多くがこれまで書かれてきたのです。世界的に著名なフランス人研究者・ブロック先生は、この不均衡に果敢に挑みます。2500年のあいだ連綿と続いてきた哲学的思索に多大な影響を与えた唯物論者たちの知的奮闘を鮮やかな筆致で描き出します。

●津崎良典先生

『ライプニッツ著作集 第II期第2巻』

ライプニッツ(津崎良典ほか訳)(工作舎)[1冊]

※津崎先生が翻訳、解説した第1部法学の「3王子の教育についての書簡」をオーサービジットの対象とします。

 

カントは百年に一人の天才、ライプニッツは千年に一人の天才。これは日本を代表する或る哲学史家が残した言葉です。事実、ドイツ出身の哲学者・ライプニッツは博覧強記で知られています。文理横断的な好奇心を各方面で発揮し、複数の言語を駆使して膨大な量の手稿を残しました。その全貌は未だ解明されておらず、世界中の研究者が日夜その解読に邁進しています。皆さんと一緒に読んでみたいのは、その彼が、イングランド王チャールズ二世の逝去(1685年2月)に際して、将来の王位継承者をいかに教育すべきか、という問いに応えるべく書いた一通の手紙です。なんだ手紙か、と侮るなかれ。そこには、驚くべき帝王学が書き記されているのです。

 

社会系

●近藤康史先生

『分解するイギリス~民主主義モデルの漂流』

近藤康史(ちくま新書)[10冊]

かつて世界で「民主主義のモデル」として賞讃されたイギリス政治。だがそれはいまや機能不全に陥り、ブレグジット(Brexit)=EU離脱という事態へと立ち至っています。イギリスがこのように「分解」への道をひた走っている真の原因はいったいどこにあるのでしょうか。安定→合意→対立→分解へと進んできた現代イギリス政治の流れを俯瞰し、混迷をきわめる現代政治のシステムと民主主義モデルの、今後あるべき姿を問いなおします。

●近藤康史先生

『社会民主主義は生き残れるか:政党組織の条件』

近藤康史(勁草書房)[3冊]

最近の選挙結果を見ると、民意の受け皿として日本から社会民主主義政党は消失したように見えます。しかしヨーロッパでは、社民主義政党は今も一定の支持を受けています。この「差」はなぜ生じたのでしょうか? 本書はイギリス労働党、ドイツ社会民主党、そして日本社会党を、制度としての政党組織に焦点を当てて比較し、分岐の要因を明らかにします。

●関根久雄先生

『地域的近代を生きるソロモン諸島紛争・開発・「自律的依存」』

関根久雄(筑波大学出版会)[3冊]

世界地図を広げて太平洋を眺めると、そこに小さな島々が点在し、ところどころに国名が記されていることに気づくと思います。何もないように見えるその海に、14の独立国が存在しています。独立後それらの国々は、経済開発によって国家を強化し、経済的・社会的に自立した状態を自明の目標として求められてきました。しかし、いずれの国家も自然的・地理的・社会的諸条件による制約を受け、貿易収支の慢性的赤字とそれを埋めるための資金を外国からの援助等に大幅に依存しています。いわば近代化や自立とは程遠い状態にあります。本書は南太平洋の島国ソロモン諸島を取りあげ、資本主義を拒否するわけでもなく、西洋的な価値観や暮らしのあり方を嫌悪するわけでもない、反近代でも前近代でも脱近代でもない「ソロモンの近代」の姿を文化の視野から描き出し、現代社会のあり方について問いかけます。

●竹中佳彦先生

『徹底検証 日本の右傾化』

塚田穂高編(筑摩選書)[5冊]

※竹中先生が執筆した「第6章 有権者の「右傾化」を検証する」をオーサービジットの対象とします。

 

2012年12月の第2次安倍内閣登場以来、国内外に「日本は“右傾化”している」と論じる人がいます。この本の多くの筆者は、憲法、民族、教育、宗教、家族、言論など、日本の様々な局面で“右傾化”が進んでいると論じています。たしかに指摘されるような現象はありますし、そのなかには憂慮すべき動きもあります。ただ、そのうえであえて日本の国民は本当に“右傾化”しているのかを問いたいと思います。いったい安倍内閣はなぜ支持されているのでしょうか? 一緒に考えてみませんか。

●竹中佳彦先生

『イデオロギー』蒲島郁夫、竹中佳彦

(東京大学出版会)[4冊] 

 1990年代以降、「イデオロギー対立の時代は終わった」と言われてきたのに、近年、「日本は“右傾化”している」とも言われています。いったい、どう考えたらよいのでしょうか? イデオロギーとはいったい何なのでしょうか? 本書は、くまモンの上司と一緒に、政治学の基本概念のひとつであるイデオロギーについて概説し、現代日本人のイデオロギーの様相を、多角的かつ長期的に、国際比較を交え、計量分析したものです。本の内容はちょっと難しいと思いますが、この本を読んで考えてみませんか。

●辻雄一郎先生

『現代社会と憲法学』佐々木弘通、宍戸常寿編著

(弘文堂)[4冊]

※辻先生が執筆した「インターネット」をオーサービジットの対象とします。

 

「ヘイトスピーチ」「復興問題」「財政赤字」「立憲主義」「ネットいじめ」、そして「安保法制」等々、現代の社会問題を解決するには、さまざまなアプローチがあります。憲法的アプローチから研究者が考察を論じていきます。社会生活で、人の行動を特定の方向に向けるにはどのようにすればよいでしょうか。ルールを守らない人に刑罰を科せばよいでしょうか。ルールを守っている人に報酬を与えるべきでしょうか。または公開するすべきでしょうか。社会の中にある様々なツールのひとつが法律です。

●土井隆義先生

『つながりを煽られる子どもたちネット依存といじめ問題を考える』

土井隆義(岩波ブックレット)[10冊] 

現在の日本人のコミュニケーションは、インターネットの発達によって希薄になっているのではなく、むしろ濃密になっています。子どもたちのネット依存も、LINEのようなアプリの浸透によって人間関係の常時接続が可能になった結果ですし、そのつながり依存の一形態として今日のいじめ問題を捉えることもできます。しかし、所詮ネットは道具にすぎません。では、こうした「つながり過剰症候群」に至る社会背景には何があるのでしょうか。その心理的メカニズムとはどのようなものでしょうか。学校の先生や親など大人たちのありかたも視野に入れて、今日の人間関係の変容を考えます。

●土井隆義先生

『人間失格?「罪」を犯した少年と社会をつなぐ』

土井隆義(日本図書センター)[5冊]

犯罪は「社会を映す鏡」であるといわれます。社会の病理的な部分が表われたものだからでしょう。しかし、病気と犯罪のあいだには決定的な違いがあります。一般に病気は私たちの見方や考え方とは無関係に発症します。しかし犯罪は、私たちがそれを犯罪と認定しなければ犯罪になりません。「社会を映す鏡」であるという言葉には、ときどきの社会がどんな行為を嫌悪し、自分たちの世界から排除したがっているかが、犯罪の定義を通して見えてくるという意味もあるのです。そんな観点から現在の少年犯罪を眺めると、日本社会の何が見えてくるのでしょうか? 皆さんと一緒に考えてみましょう。