
情報科学系の大学生同士で、使われるコンサイって? 根菜のこと!?
Eテレ「サイエンスゼロ」でおなじみの猫好きサイエンスライター竹内薫さんのエッセー。今や、「コンピューテーショナル=計算の時代」であることが、徐々に解き明かされる、待望の新連載!
第4回 経済学にもラグランジアン

ファミレスで仕事をしていたら、隣の席の大学生たちが試験勉強に勤しんでいた。やけにうるさい。仕事にならないので、なんとはなしに彼らの話に耳を傾けていたら、どうやら、数学が得意な学生が講師役となり、経済学の試験に向けて特訓をしているらしい。
実をいえば、私の仕事は、まさにこの原稿を書くことであり、ちょうど、金融・経済と「計算」がお題だったりする(なんたる偶然)。そこで、冷え切ったコーヒーを飲みながら、彼らの話を詳しく聞くことにした。
「いいか、おまえら、これはもはや経済学などとは思うな。これは数学なんだ。経済学の試験じゃなくて、数学なんだぞ、そこが肝心だ」
「でもさ、ラグなんとかって全然わからないんだけど〜」
「ラグランジアンだよ、ラグランジアン。フランスの物理学者で、マリー・アントワネットの家庭教師だった人物だ」
「だから、なんで物理学者の名前が経済学の教科書に出てくるのかがわかんないの〜」
「最初に言っただろ。現代経済学は、もう数学なんだってば。だから、物理学を学ぶのと同じ方法になってんだよ。いい加減、頭を切り換えろよ」
<理化学研究所 計算科学研究機構のウェブサイトに飛びます>
第3回 量子コンピュータとスーパーコンピュータの関係

量子コンピュータと聞いてピンと来る人は少ないはずだ。そもそも、「量子」ってェ奴がかなりの食わせ物で、下手をすると理系でも「イマイチわからない」という人が多い。
量子の「量」は「エネルギーやスピンの量」であり、「子」は「最小単位」という意味だ(スピンは素粒子がもっている回転の性質)。つまり、量子とは、エネルギーやスピンといった物理量に最小単位がある、いいかえると「デジタルになっている」という意味なのだ。
おまけに、単にデジタルになっているだけでなく、量子は「粒子」であると同時に「波」でもあるという、変な性格をしている。さらに、量子の波は、われわれが棲んでいる3次元空間ではなく、無限次元のヒルベルト空間という抽象空間の住人だったりする!
あ、なんだか量子の説明に深入りしすぎましたね(汗)。
第2回 たかが計算、されど計算 ――― 縁の下のシミュレーション

「シミュレーション」という言葉を耳にしたら、どのようなイメージが頭に思い浮かぶだろうか。なにやら難しげな、コンピュータを使った「予測」といった感じだろうか。
日本語だと発音しにくいから「シュミレーション」と言ってしまった経験がおありの方も多いだろう(笑)。実は、シミュレーションの語源をたどると、ラテン語の「simul」で「同時の」という意味だとわかる。たしかに、同時に動くと「真似」になるし、その真似を事前におこなえば「予測」になる。
実は、現代社会の背後では、無数のシミュレーションがおこなわれていて、われわれは、その膨大な計算にほとんど気づくことなく、日常生活を送っている。
第1回 待ったなし。人工知能社会をどう生きるべきか?

最近、毎週のように日本各地を駆けずり回って「第四次産業革命」と「人工知能社会」の到来について講演をしている。
18世紀後半にイギリスに端を発した産業革命は「人の労働を機械が肩代わりする」ものだった。その後、人類は、エレクトロニクスやコンピュータの発展により、第二次、第三次の産業革命を経験し、いまや、人工知能やロボットに代表される「超計算・異次元情報化」の第四次産業革命が進行中だ。
竹内薫プロフィール

猫好きサイエンス作家。NHK Eテレ「サイエンスZERO」ナビゲーター。他に、「ひるおび!」「あさチャン!」でもコメンテーターを務める。週刊新潮「もう一度ゼロからサイエンス」、日本経済新聞「目利きが選ぶ今週の3冊」での連載や、『素数はなぜ人を惹きつけるのか』『思考のレッスン』など書籍も多数執筆。
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